【感想・ネタバレ】呼人は旅をするのレビュー

あらすじ

呼人は、なにかを寄せてしまう
動物や、虫や、植物、自然現象
だから、ひとつの場所にとどまらず、
旅をする

人とちがうこと、それでも隣りあって生きること
痛みと希望の連作短編集。


「呼人」とは、なにかを引き寄せる特殊体質。原因は不明でごく少数だが一定の割合で発現する。政府機関によって認定され、生活に制限がある。5人の呼人と、呼人に関わる人たちの姿から、社会の中で少数であること、そうした状況で生きるというのはどういうことか、を描く。


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「……真帆ってすごいね」
「なにが?」
「あたしの目の前で、自分は恵まれてるって、はっきりいうなんて」
真帆は首をかしげた。
「だってそうじゃない? くいなは自分で選んでないのに旅をしなくちゃいけなくて、わたしは旅をするかしないか、好きに選べる。それってわたしが恵まれてるってことだよね?」
(本文より)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

第7回 ほんま大賞 受賞作品の1冊です。
児童書 あなどるなかれ。
あなどるなんて、そんな・・・
コレは、子ども達へオススメせねば!
大人の方もご一読を! 

ファンタジーです。 呼人(よびと)と呼ばられる人→その人その人で引きつけるものは違う。影響が大きいため引きつけるものでその場所に滞在できる期間も違う。
呼人になったら、ずっと旅をし続けなければならない。

ファンタジーではあるものの、自分だったら?とか自分の身近にいたら?どうするだろかとか考えることができた。
呼人を受け入れる周りの環境が、現実の世界と重なる部分があるなと思った。
 受け入れてくれる ただそれだけで、どれだけ嬉しいか、生きやすいか 実感中。

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2025年04月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ


長谷川まりる作品3冊目

『杉森くんを殺すには』『お絵かき禁止の国』と読んできたけれど、本作は初のファンタジー(非現実)要素がある。あと、三人称叙述(かなり主人公に焦点化はしているが)。

特定の生き物などを物理的に引き寄せる体質の「呼人」が制度的にも一応包摂されている現代社会を舞台にした、呼人やその周りの人々の物語が6つ収められた短編集。

明らかに、呼人は現実に存在する、偏見と抑圧と差別に晒されるいろんなマイノリティのファンタジックな比喩として読める。他の作品でも一貫して、周縁的な立場の人々、特に子どもたちに寄り添った物語を紡いできた作者だからなおさらだ。

その上で、第5話「男を寄せる」はなかなかに凄かった。人間の「男」を引き寄せてしまう呼人であり、かつ、トランス(ヘテロ)男性でもある慧正と、おそらく被虐待児である三つ葉の邂逅を描く。
マイノリティ属性全部盛りみたいな設定の短編で、流石に図式的な設定ありきで作りすぎだろうとも少し思えど、しかしながら、こうした「設定てんこ盛り」だからこそ描ける境地にしっかりと至っている。
凄いと思ったのは、二重のマイノリティである成人の慧正が、三つ葉を「タイプ」だと感じて、ホテルに一緒に暮らすことをなんだかんだで受け入れて都合よく利用していることの加害性・危うさにまで光を当てていたところだ。「可哀想」な慧正にも、他の人々と同じように当たり前の欲望があり、それは他者を都合よく利用して抑圧する危うさをはらんでいるということ。そこまで描いてようやく、マイノリティを単なる記号に押し込めず、しかし安易に「みんな同じ人間」などという、構造的な被抑圧性を等閑視する態度にも堕ちずに、きちんと寄り添ったフィクションとして成立するのだろう。本当にこの作者はうまい。

しかも、第4話の密着取材回で呼人支援局の優しい働き者としてポジティブに描いていた小林さんを、慧正視点から見ればかなりいい加減で問題点が多々ある人間だと明らかにするところもエグい。
また、第3話でとびっきり瑞々しいシスヘテロ関係を紡いでからの、第5話でまた違った形の、危うさがある「ヘテロ」恋愛を扱っているのも素晴らしい。

第6話の真帆さん、あまりにも(呼人などに)理解がありすぎる超人的なキャラで笑ってしまった。2人の関係めちゃくちゃ好きだけど。
最後に「旅をする」というタイトルの主題を人類史・人類学のマクロな視座から分析して再解釈していくのとても良い。けっきょく自らの手でものを調べて学んでゆくことが、子どもの健全な発達には大切だという児童文学の芯をきちんと提示しているところも最高。

本作における呼人は、わたしが大好きな国シリーズにおける「天狗」であり、『ヒラヒラヒヒル』における「ひひる」のようなものだろう。
被差別民のファンタジックな表象を扱う現代ローファンタジーが好みなのだと気付いた。




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2026年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

おもしろかった!
呼人と呼ばれる“何かを引き寄せてしまう人“たちの短編集。どの話も読後感が良いので、私の好きなタイプの本。
雨を引き寄せてしまう紫雨と、かつて絵で紫雨に負けて悔しいと思っているあかり。でも、負けたと言う思いはあかりが一方的に思っていただけで‥。こういう負けず嫌いな気持ちわかる。
表紙はたんぽぽを引き寄せるつづみ。つづみは母親との関係に悩む。
鹿を引き寄せるツトムは、自分が呼人になった事を知りショックを受ける気持ちが丁寧に描かれて共感できる。
小林さんは、呼人支援局の職員。何気にこの後の話にも登場する。
男を寄せる彗正の話。実はこれが一番好きかも。
最後は鳥を寄せるくいなと真帆の友情の話。これも好き。

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2025年07月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

YAの作家もいろいろだけど、かなり独特の作風の長谷川まりる(ちなみに綴りはMarie Lou)。
自分の意思とは無関係に、何かを呼び寄せてしまう人、「呼人(よびと)」を巡る連作短編集。
この作品の世界では五万人に一人の呼人がいて、呼人と国に認められると、何を呼ぶかによって支援があったり、制限を受けたりする。
呼人は同じところに留まれない。だから旅をする。旅をしたいからするのではなく、旅をせざるを得ないのである。
学校に行けなかったり、友達と遊べなかったり、親とギクシャクしたり、自分を疎ましく思ったり。そしてそもそも自分の意思とは関係なく、何かを呼んでしまうというのが、かなり辛い。
5番目の物語はトランスジェンダーの主人公で、呼び寄せるのは、何と人間の男。
それまでは雨とかたんぽぽ、鹿だったので、大変だなとは思ったが(この三つの中では雨が一番イヤ。一生晴れの日がないなんて絶望すると思う。)
しかし、男を呼ぶとは。これは一番辛い。人間の男を避けることはほぼ不可能。女子校に入れと言われるが、主人公は生まれた性は女性だが、性自認は男性なのだ。この主人公はどうやって生きていけばいいのか途方に暮れる。当然だ。
主人公は呼人という当事者だけでなく、友人であったり、呼人支援局の職員だったりするので、それぞれの視点にもハッとさせられる。
マイノリティに対して、最初の主人公あかりのように、勝手な振る舞いでみんなに迷惑をかけている、と考えている人は多いだろう。マイノリティが主張することに不満を持つ人も。
LGBTや女性、障害を持つ人、被差別地域に生まれた人、少数民族…様々なマイノリティのことを想起させるが、それを限定しないで「呼人」という存在に落とし込んだのが素晴らしい。
読み終わった感想を中学生くらいの子に聞いてみたい気がする。

今後も注目したい書き手である。

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2025年04月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【収録作品】
1 スケッチブックと雨女
2 たんぽぽは悪
3 鹿の解体
4 小林さんの一日
5 男を寄せる
6 渡り鳥

「呼人」とは、なにかを引き寄せる特殊体質をもつ人のこと。原因不明だが、差別の目で見られることも多い。定住できず、旅をして暮らさざるをえない。
これが特殊設定ミステリとかSFだったら、異能力戦隊ものみたいになるのだろうけれど、彼らの送る日常生活が描かれている。
望んだわけでもない特殊能力が突然発現し、しかもコントロール不可能というのはとんでもなく不自由だし、孤独だろう。
当事者と支援者、家族との間にですら大きな溝がある。
それでも、人との出会いを通して、前を向いて進んでいく姿がまぶしい。

1 雨を呼び寄せる小学生とその級友。
2 セイヨウタンポポを呼び寄せる中学生と彼女を一時受け入れる宿泊先の家族。
3 鹿を呼び寄せる中学生と蝶を呼び寄せる成人。
4 呼人支援局の職員。
5 男性を呼び寄せる成人と、DV被害者の少女。
6 鳥を呼び寄せる中学生と不登校の女子中学生。

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2025年04月10日

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