あらすじ
スポーツ選手のパフォーマンスを向上させるための食事摂取法とは? 運動と食事をどのように組み合わせれば、健康の維持増進につながるのか? 好評を博した『スポーツ栄養学』を、最新の知見を盛り込み、大幅改訂。減量やダイエット、腸内細菌と運動との関係、ビタミン・ミネラルの内容などを新たに追加し、より充実した内容とする。
▼▽ 本書「第2版 はじめに」抜粋、主要目次をご覧いただけます ▽▼
【本書「第2版 はじめに」より】
初版の「はじめに」でも述べているように、本書は、スポーツ栄養学的手法が「なぜ効果的なのか?」というメカニズムを細胞レベル・分子レベルで解説することを目指した本となっている。
――(中略)――
初版では主要栄養素(炭水化物・糖質、たんぱく質、脂質)の解説に重点を置いたため、ビタミンやミネラルといった微量栄養素に関する情報を載せることができなかった。第2 版では、主なビタミン・ミネラルの機能やそれらと競技パフォーマンスとの関係についても解説した。さらに、初版ではやや手薄となっていた健康と食事・栄養との関係についての情報・解説も大幅に増やした。競技選手のパフォーマンス向上のためだけではなく、一般の方の健康の保持・増進にも役立つ内容となっているはずである。
【主要目次】
目次
第2版 はじめに
はじめに
序章 スポーツ栄養学とは?
パフォーマンスの向上と健康の保持・増進における食事の重要性/スポーツ栄養学に対する間違ったイメージ/スポーツ栄養学に関する知識の必要性/スポーツ栄養学の学問としての魅力
コラム1 日本における「スポーツ栄養学」の現状と課題
第1章 身体組成と体脂肪・脂肪細胞の種類
1.1 肥満の指標と身体組成
肥満を客観的に判断する─―BMI/BMI の限界/身体組成/体脂肪量測定のゴールドスタンダード/体脂肪量の実践的な測定法─―生体電気インピーダンス法/各測定法の精度/競技選手における体重・身体組成の測定意義/競技選手が体重・身体組成を測定する際の注意点/身体障がい者およびパラアスリートにおける体重・身体組成測定の難しさ
1.2 体脂肪の種類
内臓脂肪と皮下脂肪/「貯める」脂肪と「使う」脂肪/第3 の脂肪細胞─―ベージュ脂肪細胞/運動・トレーニングと褐色脂肪細胞,ベージュ脂肪細胞
コラム2 海外遠征と身体組成の変化
第2章 エネルギー消費量と摂取量
2.1 エネルギー消費量
カロリーとは?/運動によるエネルギー消費/3つのエネルギー消費量/基礎代謝量 /食事誘発性熱産生/運動時のエネルギー消費量の測定法/1日全体での総エネルギー消費量・必要量の推定・計算方法
2.2 エネルギー摂取量
エネルギー摂取量・食欲の調節/「腹八分目」で得られる効果─―エネルギー摂取制限と長寿効果/体重や体脂肪量の増減はエネルギーバランスだけで決まるのか?
2.3 減量・ダイエットに対する身体の適応・変化
運動や食事制限を行っても次第に体重が減りにくくなるのはなぜか?/ダイエット後にリバウンドするのはなぜか?/エナジーアベイラビリティ─―正常な生理機能と骨密度を維持するために/REDs の予防および治療のための栄養学的対策/過酷な減量の先にあるもの
コラム3 Holloszy 教授とエネルギー摂取制限
第3章 炭水化物・糖質─―パフォーマンスと健康のための主要栄養素摂取法(その1)
3.1 エネルギー基質としての糖質
「糖類」「糖質」「炭水化物」の違いは?/運動時における糖質の重要性
3.2 パフォーマンス向上のための糖質摂取法
筋グリコーゲン量を高める─―グリコーゲンローディング/運動前の糖質補給に関する注意点/運動後のグリコーゲン回復/運動中の糖質の利用を減らすためには? /持久的トレーニングの効果を高める方法─―Train-Low, Compete-High 法/栄養学的ピリオダイゼーション/超高糖質食による効果/運動・トレーニングと肝・脳グリコーゲン
3.3 炭水化物・糖質と健康
糖尿病の原因は?/運動・栄養による糖尿病予防・改善効果/エクサカインによる効果 /糖質制限食の効果/非糖質系甘味料の影響
3.4 食物繊維と腸内細菌
食物繊維の効果/短鎖脂肪酸の効果/腸内細菌の働き/腸内細菌叢に対する食事の影響/腸内細菌と運動・パフォーマンス
コラム4 研究と現場の乖離を解消するために
第4章 たんぱく質─―パフォーマンスと健康のための主要栄養素摂取法(その2)
4.1 骨格筋とたんぱく質
「たんぱく質」「アミノ酸」「ペプチド」の違いは?/筋肥大のメカニズム/マッスルメモリー/筋力の生理的限界・心理的限界/骨格筋の膨張現象─―パンプアップとは? /たんぱく質の分解と合成─―動的平衡/運動による筋たんぱく質の分解と合成
4.2 たんぱく質の摂取法
たんぱく質の摂取量/良質なたんぱく質とは?/たんぱく質摂取のタイミング/プロテインサプリメントの効果/たんぱく質摂取の効果を高める方法/怪我,筋痛および減量に対するたんぱく質摂取の効果/たんぱく質はできるだけ多く摂取したほうがよいのか?
4.3 たんぱく質摂取に関する最近の話題
高齢者におけるたんぱく質摂取/女性選手におけるたんぱく質・糖質の摂取量/未精製・未加工食品(Whole Foods)の効果/グルテンによる影響/植物性食品と健康・パフォーマンス/時間栄養学・時間運動学と健康・パフォーマンス
コラム5 研究者が提供できる情報
第5 章 脂質─―パフォーマンスと健康のための主要栄養素摂取法(その3)
5.1 脂質に関する基礎知識
「脂肪」「油」「脂」「脂質」の違いは?/脂質のおいしさ/脂肪酸の種類
5.2 脂質摂取と健康
健康に対する飽和脂肪酸の影響/健康に対する一価不飽和脂肪酸の影響/健康に対する多価不飽和脂肪酸の影響/健康に対する中鎖脂肪酸の影響/アルツハイマー型認知症と食事との関係/健康に対するトランス脂肪酸の影響/脂質はどれくらい摂取すべきなのか?
5.3 運動と脂質代謝
運動時における脂質の使われ方/ファットバーニング
5.4 脂質摂取とパフォーマンス
国際的ガイドラインにおける脂質の推奨摂取量/ファットアダプテーションに対する骨格筋の適応/ケトン食によるポジティブな効果/ケトン食によるネガティブな効果 /ケトン食は有効な食事戦略なのか?/ケトン体サプリメントの効果/中程度脂質食=マイルドファットアダプテーションの効果/n-3系脂肪酸とパフォーマンス/中鎖脂肪酸とパフォーマンス
コラム6 トップアスリートの経験談
第6章 運動中の水分摂取法とスポーツドリンクの効果
6.1 発汗作用と体水分・体温調節
1日の水分出納/運動時の体温上昇と体温調節/運動時の発汗量とパフォーマンスへの影響/体水分量を調節するメカニズム/エリートマラソン選手における脱水率とパフォーマンスとの関係/冷却水およびアイススラリーによる効果
6.2 スポーツドリンクの効果
スポーツドリンクの組成/スポーツドリンクに含まれる糖質/新型スポーツドリンクの効果/食事やトレーニングに対する消化管の適応/運動誘発性胃腸症候群/糖質飲料で口をゆすぐ─―マウスリンス/スポーツドリンクの浸透圧─―ハイポトニックvs. アイソトニック
コラム7 牛乳の効果
第7章 パフォーマンス・健康とサプリメント
7.1 サプリメントに関する基礎知識
医薬品と食品・サプリメントの違い/サプリメントの分類
7.2 狭義のサプリメント──ビタミン・ミネラル
エネルギー代謝とビタミン/骨代謝とミネラル・ビタミン/活性酸素・フリーラジカルとビタミン/筋痙攣と電解質
7.3 貧血とミネラル・ビタミン
競技選手における貧血の原因/鉄の必要量および摂取法/鉄代謝に影響を及ぼすその他の要因
7.4 パフォーマンス向上を目的としたサプリメント──エルゴジェニックエイド
エルゴジェニックエイドを活用する際の注意点/サプリメントについてのエビデンス(科学的根拠)/サプリメントの情報源/競技選手がサプリメントを活用する際の心構え
7.5 代表的なエルゴジェニックエイドの効果とその作用機序
クレアチン/カフェイン/重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)
コラム8 食事に関する情報の伝え方・伝わり方
参考文献
索引
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Posted by ブクログ
白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞のほかに、ベージュ脂肪細胞がる。寒冷刺激によって、白色がベージュに変わる。しかし刺激がなくなると、マイトファジーによって白色に戻る。トレーニングによって増えるかは定かではない。
近年の肥満増加はエネルギー消費量の減少によるもの。
一日でエネルギーバランスがマイナスになる時間があるとコルチゾールの分泌によって体脂肪が増えやすい。
減量によって基礎代謝は減る=メタボリックアダプテーション。エネルギー摂取制限はしないで代わりに運動する。
マラソンの壁は、骨格筋のグリコーゲンが枯渇することで起きる。トレーニングを行っている人のほうが、筋グリコーゲンの回復は早い。
骨格筋や肝臓にグリコーゲンを貯蔵すると、2.6~7gの水分が貯蔵される。グリコーゲンローディングが必要なのは、1時間以上の長時間運動のとき。
糖質とタンパク質を2:1で摂取すると、糖質だけと同じくらい、グリコーゲンを回復できる。
持久的トレーニングによって、血糖取り込み能力、グリコーゲン貯蔵量が増える。ミトコンドリアが増加して運動時のグリコーゲン利用が減る。
一日に2回トレーニングを行う=筋グリコーゲンが低い状態で行うと、ミトコンドリアが増える。
糖質を使用するほうが脂肪よりも酸素の量が少ない=トップランナーは脂質ではなく糖質をエネルギー源にしている。
運動をしないで安静にしていると筋グリコーゲンは減らず、肝臓のグリコーゲンが減る。48時間で枯渇する。筋グリコーゲンはトレーニングで増加するが、肝臓の貯蔵量は増加しない。
糖質制限食は、満腹感から摂取カロリーが減りやすいが、体重減少効果はない。糖質は多すぎても少なすぎても危険。総エネルギーのうち50%程度が糖質が死亡率が少ない。
非糖質系甘味料は腸内細菌に影響、味覚食欲に影響する。
腸管は内なる外。腸内細菌は3000種に及ぶ。まだよくわかっていない。
アミノ酸がペプチド結合したものがタンパク質。ペプチド結合とは、アミノ基とカルボキシル基から水1分子が取れて結合したもの。
筋力トレーニングは、骨格筋細胞内のタンパク質合成を増加させる。
タンパク質は寿命があって分解される。合成を同化、分解を異化という。半減期は全体で80日、肝臓は12日、骨格筋は180日。中身を入れ替えながら良い方向へ持っていく。食事の効果はすぐには現れない。食事がないと分解のほうが多い=筋トレプラス食事が必要。一日1.2~2g/kg。
BCAA=分岐鎖アミノ酸=ロイシン、バイン、イソロイシン。ロイシンの血中濃度と筋タンパクの合成は正の相関関係にある。ロイシンが引き金になっている=ロイシントリガー仮説。
トレーニング後には、20g程度のタンパク質を取る。高齢者は筋タンパクの合成が弱い=同化抵抗性。
精製タンパク質と食品では、変わらない。
小麦アレルギーとセリアック病は違う。グルテンフリーだから小麦アレルギーでもOK、ではない。
赤肉も加工肉と同じように発がん性がある。一切食べないのではなく、取りすぎはよくない。
時間栄養学では、耐糖能は朝がもっとも良好。夜は血糖値が上昇しやすい。
脂肪は、グリセリンに脂肪酸が3つくっついたもの。脂肪酸の種類で特徴がでる。飽和脂肪酸は常温で個体。不飽和脂肪酸は二重結合が折れ曲がっているので液状になる。
オリーブオイルが体に良いというのは、代替えするから。付加ではない。オレイン酸によるものというより、エキストラバージンオイルのポリフェノールの効果かもしれない。
酸化したEPA、DHAが魚臭さの原因。
リノール酸とαリノレン酸は酵素を共有している。αリノレン酸は抗炎症作用がある。
中鎖脂肪酸は、椰子油などに含まれている。体脂肪がつきにくい油。ケトン体を効率よく作れる。認知症に効果がある可能性がある。
トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸に人工的に二重結合に水素を結合させて、半固形化したもの。
脂肪は低強度長時間の運動で使われると考えられてきた=ファットバーニング理論。高強度インターバルでも脂肪は減少する。高強度インターバルは食欲を抑制する。
ファットアダプテーション=高脂肪食を長期間摂取すると、ミトコンドリアの増加と糖質利用の減少が見られる。
ケトン食に対応する体になるには、1ヶ月以上かかる。その間は疲労を感じやすい。
水分補給
糖質よりも脂肪からエネルギーを得たほうが、代謝水が多い=ラクダのコブが脂肪なのは、使用によって代謝水がでるから。
発汗によって血漿量が減少する。心臓が活発に動く必要が出る。その結果運動パフォーマンスが減少する。
汗とともに塩分も出る。水分のほうが喪失量は大きい。体内の塩分濃度が高まる。水だけ摂取すると浸透圧が下がる。低ナトリウム血症。水を飲めなくなる。水分だけでなく塩分を一緒に補給する。
フルマラソンは体重減少率が2%程度だが、エリートランナーは8~11%。脱水状態になっていた。発汗より風力で体を冷やしている。
胃から小腸へ送り出す過程は、胃排出速度という。グルコース単体よりもフルクトースといっしょになっていたほうが早い。2:1程度。8%程度の濃さまでは、低下しない。濃度が高いと排出速度は低下する。
ハイポトニックとアイソトニック。スポーツドリンクは塩分と糖質を含んだアイソトニック型のものが多い。甘すぎると感じるが推奨通りのほうが効果は高い。
牛乳はインスリン分泌が高まり、筋グリコーゲンの回復が促進される。
牛乳は普通牛乳がいい。
特定保健用食品は国が認定する。機能性表示食品はメーカーが責任を持つ。
サプリメントは、狭義のサプリメントとエルゴジェニクエイド(ポパイのほうれんそう)に分けられる。
足がつるのは、脱水に伴う電解質バランスが崩れるから。ナトリウムとカリウムのバランス。ただしそれだけの原因ではない。
希釈性貧血は、ヘモグロビンの増加で次第に追いつく。