【感想・ネタバレ】永遠平和のためにのレビュー

あらすじ

世界の恒久的平和はいかにしてもたらされるべきか。カントは、常備軍の全廃・諸国家の民主化・国際連合の創設など具体的提起を行ない、さらに人類の最高善=永遠平和の実現が決して空論にとどまらぬ根拠を明らかにして、人間ひとりひとりに平和への努力を厳粛に義務づける。あらためて熟読されるべき平和論の古典。

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Posted by ブクログ

カントの晩年の代表作である「永遠平和のために」、やっと読むことができました。本書は訳注や解説を含めても150ページ程度なのであっさり読めるかと期待していましたが甘かったです。一行一行噛み砕きながら読み進めたものの、カント特有の婉曲的な表現なども多数散りばめられていて苦戦しました。そして本論よりも付録を読み解くことにさらに苦戦し、これは全体の3割くらいしか理解できていないのでは?と怖れを抱いていましたが、最後の訳者による解説によって理解度が一気に8割くらいに上がった気がします。おかげさまで腹落ちしてきた感じがするのですが、少し時間を空けてまた最初から一読しようと思っています。単なる理想像としての永遠平和ではなく、リアリズムの視点からも永遠平和がなしうることを説いた本として、とても興味深く読みました。
以下、備忘録としてカントの述べている永遠平和のための条項です。

<国家間の永遠平和のための予備条項>
第1条項:将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、決して平和条約とみなされてはならない。
第2条項:独立しているいかなる国家(小国であろうと、大国であろうと、この場合問題ではない)も、継承、交換、買収、または贈与によって、ほかの国家がこれを取得できることがあってはならない。
第3条項:常備軍は、時とともに全廃されなければならない。
第4条項:国家の対外紛争にかんしては、いかなる国債も発行されてはならない。
第5条項:いかなる国家も、ほかの国家の体制や統治に、暴力を持って干渉してはならない。
第6条項:いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和時における相互間の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない。

<国家間の永遠平和のための確定条項>
第1確定条項:各国家における市民的体制は、共和的でなければならない。
第2確定条項:国際法は、自由な諸国家の連合制度に基礎を置くべきである。
第3確定条項:世界市民法は、普遍的な友好をもたらす諸条件に制限されなければならない。

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2023年04月30日

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・カントの永遠平和論。国家間の連合による世界平和構想。
・カントは、社交的だったという人物評があるが、カントの平和論もさもありなんという感を覚えた。
・自分は、人と仲良くするのが苦手なので、カントの議論のようにうまくいくのかと思った。

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2022年12月03日

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カントの実践哲学を現実の政治に当てはめて考えるとどのようなことを論じうるかを、カント自身が示した名著。

カント自身が本書のタイトルを「風刺的」と呼んでいることに象徴されるように、永遠平和など実現不可能な絵空事と見なされがちである。
カントはただ理想を語っているのではなく、人間の本性を「利己的」とし、法的状態が構築される以前の自然状態を「戦争状態」とした上で、地に足の着いた議論を展開している。

人間が利己的で、各国家が言語と宗教によって互いに隔離されているということは一見戦争の種であるように思われるが、カントはむしろ、そのような現実があってこそ、平和は構築可能だとする。人間の利己性は社会契約による共和的国家の樹立を促し、言語と宗教による隔離は、国家の規模を大きくなりすぎないように役立ったと。目からウロコであった。

「付録」では、政治と道徳の対立、すなわち利益と正義の対立について語られており、「前者が後者に従属すべし」というカントのリベラルな立場が簡潔に表明される。

薄いけど中身の濃い、素晴らしい本だった。

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2016年10月04日

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第二章がかなり衝撃的。「自然状態は、むしろ戦争状態」「平和状態は、創設されなければならない」。おそらく「永遠平和」の理念、思想が、これらの言葉に凝縮されている。まるで第一次世界大戦と国際連盟創設を予言していたかのように。

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2016年01月28日

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永遠平和のためには無味乾燥な法律だけでなく、道徳的な哲学者の意見も政治に取り入れられるべきというカントの願いが込められている内容。哲学や道徳に対する重要性を改めて認識、確認することができました。

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2015年03月19日

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1795年に公刊されたカントの小著。おそらくカントの政治論では最もよく知られている著作であり、国家連合体制の提案など今日の国際関係構想の源泉ともなる提案が多々含まれている。バーゼル講和条約を諷刺するかのように、予備条項、確定条項、秘密条項、補説という構成をとる。各々の小論のなかで、これまでカントが展開してきた道徳論に基づく義務としての平和達成を、目的論に基づく平和達成の予言によって客観的実在性を補完するという全体構成をとっている。一国での共和制実現、国家間での国際法の遵守、交際権としての世界市民法など、18世紀末に書かれたとはいえいまだに政治的に課題とされうるような提案を余すところ無く展開している。このカントの構想をいかにして達成するかということに頭を悩ませている間は、政治が道徳に屈服せねばならないことを否定することはできないだろう。

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2013年01月24日

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カントの平和論が「ひとりひとりの心を変えれば世界は変わる」にとどまらない単なる理想論、単なる理念的なものではないことが分かる。

「一緒に生活する人間の間の平和状態は、なんら自然状態ではない。自然状態はむしろ戦争状態である。」
と現実を受け入れ認めつつ
「それゆえ、平和状態は創設されなければならない
と、その現実を国家間において、具体的に様々な条項を提案することで永遠平和を実現しようとしているのである。

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2012年10月24日

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カントの政治哲学(?)、国際法のありかた、政治と道徳(倫理)のあり方などが書かれている。

難しいけど、完全にわからないわけではない。

現在にも十分通じる部分が多くあるように感じた。

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2022年04月18日

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イマヌエルカント 永遠平和のために

永遠平和のための9条項(予備条項6と確定条項3)を論じた本。一つの世界共和国を作るというより、それぞれの国家の独立を維持しながら、平和連合体制を作るイメージ

ソンタグの「世界平和を信じる人間などいない」という諦めの論調より、カントの「世界平和のために9条項に着手せよ」というメッセージの方が 読む価値がある。 

永遠平和は人間の利己的傾向から自然に導かれるとする第一補説を入れたあたりが、永遠平和が空想でなく実現可能であることを証明したいカントの哲学者としてのプライドを感じる

9条項の中で最もハードルが高そうなのは「常備軍の全廃〜自衛軍は認めるが、段階的に常備軍はなくせ」という条項。カントは「平和とは、一切の敵意が終わることであり、軍事力による均衡は 平和につながらない」と考えていることがわかる


6つの予備条項
1.平和条約は将来戦争の種を残さない
2.国家は 他の国家に取得されない
3.常備軍の全廃
4.戦時国債は発行しない
5.暴力により他の国家に干渉しない
6.戦争の最中においても卑劣な行為はしない

3つの確定条項
1.共和的な市民体制
2.諸国家の連合制度に基礎を置いた国際法
3.友好をもたらす世界市民法〜外国人が入っても敵意を持たれない

共和的体制
*自由と平等の権利が確保された国民が、共同の立法に従っている
*代表制を採用し、国家の立法権と執行権が分離している
*共和制の下では戦争をするには国民の賛同が必要〜戦争という割に合わない賭け事を国民は求めない






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2022年03月15日

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永遠平和のための6つ条件:(第1章)予備条項
殲滅戦に突入するのを防ぎ、永遠平和の展望を開くための条項

1. 将来戦争の種が保留された平和条約は平和条約とみなされない
2. 独立国家の相互不可侵性
3. 常備軍の撤廃
4. 戦争国債の禁止
5. 他国への不干渉
6. 国家間における信頼を損ないうる行為の禁止

3の常備軍の撤廃は最も有名な条文。常備軍の存在が先制攻撃の原因となり、かつ国家が人を殺したり、殺されたりするために人を雇うのは、人間性の権利に反する。後者はカントの定言命法からも帰結する条項。ただし現在のスイスの国民皆兵のような自衛措置は認められる。

予備条項を実現するための3つの条件:(第2章)確定条項
永遠平和を実現するための具体的な条件

1. 人間の法に完全に適合している唯一の体制は共和的体制
2. 国際法の理念は諸国家は分離を前提とし、連合体制を基礎とする
3. 世界市民権では普遍的な友好権が確立する

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2021年10月02日

Posted by ブクログ

 先日防衛政策に関する本を読んだ際に引用されていたため購入した。NHKの「100分de名著」でも2016年に紹介されていたそうで、副読本として同出版社のテキストも参考にした。岩波青を自分一人で噛砕く気力が無いのが情けないが、以下の感想は多分に同副読本の解釈に依るものが大きい(副読本に引っ張られてしまうなら、一度前知識なしで読んだ方が良かったかもしれないな)。

 平和主義と聞くと、どうしても理想主義的な印象を纏っているように見える。例えば核の廃絶を唱えれば、必ずと言ってよいほど核により世界大戦が起こっていないとする、パクス・アトミカ(核による平和)が反論として帰ってくる(妥当性は私には分からないが)。
 しかし、カントの説く「永遠平和」への道筋は、現実が性悪説を根底に置いた『リヴァイアサン』的な社会を前提に置いている。そして、そこから「善い人になりなさい」などと啓蒙的な主張をすることなく、人間の利己的な側面をうまく往なすことで「永遠平和」を樹立するという手段を採っている。

 今まで、例えば国防に関する言説について、現実主義⇔平和主義という二律背反的な考えを持っていた。しかし、本書を通じて現実的平和主義とでも言えるような、単なる折衷案ではない真の平和を希求するものの考え方があることを知ることができた。「あちらを立てればこちらが立たぬ」と悩むことは、平和に限らず非常に多い。そんなときに、本書のような考え方を応用できたならば、問題解決の糸口が見えてくるのかなと思った。

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2019年04月09日

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"イマヌエル・カントさんが1796年に出版した本。
第一章 国家間の永遠平和のための予備条項を含む
第一条 将来の戦争をひそかに保留して締結された平和条約
第二条 独立している国家も、継承、交換、買収または贈与によって、ほかの国家がこれを取得できるということがあってはならない
第三条 常備軍は、時と共に全廃されなければならない
第四条 国家の対外紛争に関しては、いかなる国債も発行してはならない
第五条 いかなる国家も、ほかの国家の体制や統治に、暴力をもって干渉してはならない
第六条 いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和時における相互の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない

第二章 国家間の永遠平和のための確定条項を含む
第一確定条項 各国家における市民的体制は、共和制でなければならない
第二確定条項 国際法は、自由な諸国家の連合制度に基礎をおくべきである
第三確定条項 世界市民法は、普遍的な友好をもたらす諸条件に制限されなければならない"

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2018年10月17日

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集英社版で池内紀訳と比較してみた.原文を見ていないが,見ても上手く読めないが,宇都宮さんはある程度原文に忠実に訳しているのだろう.ただカントはユーモラスな人で難しいことをやさしく記述できる素養を持っていたはずだ.その点からすると,宇都宮訳はやや読みにくかった.

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2018年07月25日

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どうもカントはお堅いイメージがまとわりついて離れないが、一哲学者として、かなりこの平和というものに思うところがあったに違いない。自身の築き上げてきた学問を土台にして緻密に、そして熱情をもって書き上げていると感じた。
真の平和とは何か。平和のために争う、その皮肉に対して、彼は命ずる。そんなものは平和ではない、汝の普遍的な格率に従え。そのための法だ。
道徳とは、平和とは、法律が与えるものではない。よく巷では、憲法改正だとか、なんだとかでデモをしているが非常にばからしい。そんなものが平和を守っているのではない。戦争したくないからしないだけなのだ。それは憲法でも法律でもなんでもなく、ひとりの人間の気持ちなのである。カントはこれを格率と呼んでいる。法律とは、そのような格率から生まれたものであるから、義務なのである。誰かが与えるのではなく、したくないことを無理にするのは不正であるから、してはならない、そういうものなのだ。したがって、義務とはおのずから生じるものであって、外から与えられるものでは決してないのだ。
では、平和というものはどうすれば実現するのか。カントに言わせてみれば、みなが平和を自身の格率として価値あるものとみなせばいい。それだけの話である。でも、現状、そういうばかりではないから、互いに公表し、相互に監視し合う体制が必要なのだ。それが国際連合である。今の国際連合とはまったく違う。こうした連合体制は、国家としてまとまりをもったものを前提としている。それが共和制であると、カントは言う。この共和制は、民主制や僭主制とは異なる。どういうわけか、プラトンの哲人政治とも異なると言っている。この点、カントの弱いところだと思われる。代議制を是認しているようにもとらえられてしまうからだ。カントにとって共和制とは、すべての人間が、もうすでに、普遍的な格率をもってその義務に従っていることを前提にしているのである。だから、代表者が無理に哲人でなくても問題などないのだ。プラトンに異を唱えているというより、プラトンのような想定をする必要がない状態についての国家を述べているのだ。アプリオリに法的状態にある国家があるとするなら、連合形態や述べてきた条項が望ましい、そういう話なのだ。
では、そういう法的状態というのは、いったいなんなのか。カントは付録で自然状態と道徳・政治について述べている。確かに人間は争わずにはいられない。けれど、争いを嫌悪し、それを裁こうと法律というものを定めるのもまた、人間の自然状態でもある。では、なぜそんな自然状態が政治や道徳と結びつかないのか。それは、そもそもそういう結びつかない政治や道徳というのがおかしいからだ。人間に義務が生じているとするなら、おのずと道徳と政治は分かたれないはずである。法に従うということは、外部から与えられた決まりを守ることではない。おのずと自分の中から生じてきたものに従うまでのことだ。だから、自分のしたくないことをするということは、それこそ不自然であって、道徳的ではない。だから、公表しても問題ないはずなのである。隠すということは、それ自体に後ろめたいなにがしかがあるからだということになるのである。
哲学をする者にとって、平和とはかくも当たり前の話なのである。だからこそ、自由に哲学者がものを言えないといけない。哲学者のいうことが浮世離れしている、夢想の話をしているのではない。それを浮世離れしていると退けてしまう事の方が問題なのだ。彼らは現実をどうするかについて興味がない。現実というものが一体何なのか、そちらに興味がある。そもそものスタート地点が違うのだ。自分の従う現実というものに挑むからこそ、その現実を超えることができ、平和の意味が変わる。
平和だ戦争だ言う前に、そう言っている自分の胸に手を当てて同じことを問うべきだ。

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2016年08月10日

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「哲学者が政治について何かを語ってもそんなものは机上の空論であり何をも意味しない」と言う政治家がいるが、そう思うのであれば、私が述べることにとやっかく言わないで欲しいという序文に惚れた。確かに「永遠平和のために」が書かれた当時、その意見が採用され直接的な影響があったわけではない。しかし、第二次世界大戦後、理念的には永遠平和を目指してヨーロッパ連合が設立されたことを考えれば、この書物が少なからず影響したのであろう。思想、あるいは政治哲学の存在意義を実感させられる。

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2012年08月16日

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18世紀末、フランス革命を経た国際社会を背景に、「永遠平和の実現」についてのイマヌエル・カントが真面目に考察した国際平和理論と実践方法。以下、概略。
【予備条項】
1、将来の戦争の種がひそむ平和条約は単なる休戦
2、独立している国家は互いに侵すことはできない
3、常備軍は廃止。但し、防衛手段としてはOK
4、戦争遂行を気安くさせるので戦争国債は禁止
5、他国への不干渉
6、戦争時の卑劣な戦略は和平時の信頼性を損なわせる
【確定条項】
1、各国の政治体制は共和制がベスト
2、統一世界国家より諸国家の連合スタイルにすべき
3、世界市民法は各国市民が友好である権利を保障
【第1補説】
自然の摂理によって人間社会は次第に成熟すると、結局、利己的人間を抑制するとともに商業を発達させようとするので平和が望ましくなる。人間は永遠平和を道徳的義務とするはず。
【第2補説】
国家は哲学者のこうした意見を妨げてはならない。
【付録】
政治家はこうした道徳を手段に使うべきでなく、道徳の実現を目指すべき。政治は自ら取り決めた原則は、民衆に担保するため公表しなければならない。

21世紀初頭、2度の世界大戦、冷戦を経て、ここに書かれていることはシンプルな内容だけに不完全ながらも実現されているもの(国)も多い。そして、テロの時代。カントがある意味想定し、また想定を超えた国際社会と状況になっているが、当時も今も空想理論として斥けるのは容易いけれど、カントが実践論として真面目に考えた内容は時代を超えて不断な再構築の努力を惜しむべきではないだろう。
ちなみに、とある旅館の看板に付いていたという本書名はカントがやはりお茶目に名付けたのでしょうか、それとも真面目な義憤なんでしょうかねぇ?あれれ?っていう観点があるのは仕方がない。(笑)

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2012年04月25日

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講義の課題として読んだ。
哲学に関しては素人であるため、内容には触れないレビューとする。

たいしたページ数ではないとは言え、哲学書独特の言い回しは、やはり初学者の前に高く立ちはだかった。
しかし、巻末の訳者解説が非常に分かりやすく、理解の助けになった。
自分のような素人が読む順番としては、本文を分からないながらも一読し、解説を読み、納得した上で再度本文を読むことで、内容まで読み込めるのではないだろうか。

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2011年09月06日

Posted by ブクログ

カント本人が評している通り、哲学者の与太話なんだからいいだろ!的なスタンスで書かれたものではあるが、その内容が現代の国際法の根源をなす考えに与えている影響は大きい。

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2011年05月15日

Posted by ブクログ

宇宙には理性が貫かれている。人間は宇宙の一部なので、人間も理性に従って生きるのが自然だ。欲望や快楽に心を乱されてはいけない。あらゆる人間には等しく理性が宿っている。なので人類はみな等しい。全ての人間は1つのコミュニティに属するべきだ。特定のポリスに閉じこもるな。私はコスモ(世界)の市民だ。▼キュニコス派。制度や文化は人為的なもの。動物の生き方が理想。虚飾は捨てよ。自足せよ。ディオゲネス

実践的な政治家は、国家の問題を考察するには経験が必要だと言い、私のような理論家をアカデミズムの世界の住人だといって見下す。しかし私が実現できそうもない理想を述べても、世間のことに通じている政治家にはなんの影響もないのだから、言いたいことを言わせていただく(留保条項)。▼代議制による立憲国家であれば、国民は戦争経費を自分の資産から支払い、自分たちが兵士として戦わなければならないため、戦争には賛成しない。だから立憲国家は戦争を起こしにくい。一方、専制国家では少数者の利益が優先され、国民の犠牲お構いなしに戦争を始める。だから専制国家は戦争を起こしやすい。なので各国は専制をやめ、立憲制になるべき。▼国家を超えた平和連盟をつくろう。世界政府は専制になるかもしれないので、国家連合にする。国際法(inter-national)を超えた、世界市民法を作ろう。カント『永遠平和のために』1795

市民とは自ら責任を負える範囲で成り立つ概念であり、世界市民として世界中の問題に責任を負うとしたら、それは耐え難い重荷になる。ハンナ・アーレント『暗い時代の人々』1972

国籍・階級・民族・ジェンダーの違いによって、人間の間に壁を作るべきでない。理性と道徳に期待しよう。マーサ・ヌスバウム

グローバル化の時代、個人の法的権利・義務が国家を媒介としない形で問われることが増えた。国際機構(世銀・IMF・EUなど)が国家を拘束する意思決定をしているのに、デモクラシーは国内のレベルでしか実現していない。国の自律や安全は国単位のデモクラシーの基礎なのに、安全保障は他の軍事大国に依存・従属している。グローバル化により先進資本主義国が文化的に各国を支配しており、各国のアイデンティティが損なわれている。国際金融市場がグローバル化しており、各国の市場への管理能力が損なわれている。▼今や、個々人の生命・財産は重複するいくつかの共同体(国際組織や他国)に委ねられているのに、デモクラシーは未だに国単位のまま。デモクラシーは「国家とその国民の間」だけに限らない。デモクラシーをグローバルな形で再建しよう。デイヴィッド・ヘルドHeld『デモクラシーと世界秩序』1995

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2025年04月01日

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永遠平和のための3大要件:①常備軍をなくす、②各国における共和制採用、③国際社会における全ての人間の訪問権の確保

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2021年01月26日

Posted by ブクログ

●常備軍は廃止すべき。軍事費増大は平和の方が戦争より重荷になる。自衛組織は前段階として必要
●国家が独立した単位で世界共和国を形成することが平和維持に望ましい。難しければ国際連合が代替物にあたる
●政治と道徳(宗教)は合致すべき。×道徳を政治に合わせる ○政治を道徳に合わせる
●政治が経験技術的問題になると、目的達成のための不正が横行する

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2021年01月08日

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2019/01/21 読み終わった。
永遠平和のためには、今現在戦争状態でないことに加えてら今後も起こる可能性が無い状態も必要だと、書いてあった。なるほどと思った。

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2020年02月01日

Posted by ブクログ

読んでいて、夏目漱石の私の個人主義を思い出した。
根底にあるのは、自分がされて嫌なことは相手にしちゃいけないということだと思う。
200年も前から平和についてなすべきことは論じられているにもかかわらず、混迷と複雑さは増すばかりだ。現代に生きていたら、著者は何と言うだろうか。

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2021年08月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1795年の本です。カントのこの考え方が、国際連合の元になったと言われています。


難しい命題ではありますが、薄い本で手に取りやすく、よくまとまっていて読みやすいです。


人が一緒に平和に生活するというのは自然ではなく、自然状態=戦争であり、だからこそ平和とは創設しなければならない
という考えが元であり、甘い理想論ではありません。

争いが起きる方が当たり前であり、「だから平和など意味がない」とするのではなく
「永遠平和」を実現するために漸次努力し近づけていくものという思考は、
闇雲に平和を叫ぶ現実的ではない平和主義者の思考よりも共感できました。

軍があるということは、他国を戦争の脅威に晒しているということになります。ならば軍がなければ良いのかというと、自衛手段がなくては攻め込まれる隙を他国に与えることになり、戦争を呼び込んでしまいます。
国を維持するというのは理想論だけでは当然運営できず、コストを考えての商業的な運営意識も必要になってきます。

平和条約は実は休戦にすぎないというのはなるほどなと思わされました。
「将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、けっして平和条約とみなされてはならない。」。
平和とは、永遠平和のためにはどうしたら良いのか。自分なりに考えて求めていきたいと改めて思います。

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2018年01月22日

Posted by ブクログ

興味深い作品ではありますが、如何にもモダンな進歩主義で自分の肌に合わなかったのでこの評価。あくまで古典であって、現役の思想ではないと感じました。
なお、自分にとって初のカント作品なので、理解が足りていない可能性は大いにあります。

国際的共同体が成立する必然性についての論証は、論理展開としては納得できるもので、瞠目します。
しかし、前提となる民衆の理性に対する期待が過度であること、社会と法の善性に期待しすぎている(付属における公表性の原則とか)ことから、論理的ではあっても現実的ではないのかなと考えます。(もちろん今後成立する可能性もなくはないですが)
この辺りは、絶対王政全盛期が終わり、フランス革命その他自由主義の潮流が盛り上がってきた時代の著作だからなのでしょう。

あと、予備条項で、戦争抑止のための具体的手段と自由についての規範的主張(人間の手段化の禁止)が混在している点は、非常に気に入らないです。

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2014年11月01日

Posted by ブクログ

カント曰く「公法の先験的公式」から、公表性と一致しない政治的格率はすべて不正なのだそうですよ、安倍さん。

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2014年06月19日

Posted by ブクログ

その昔、哲学科卒の叔父が、小さかった私の枕元で読み聞かせをしていたものと聞いて読みましたが、叔父さん、これを2歳やそこらのガキによんでやってもわかんないよ。

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2013年07月01日

Posted by ブクログ

永遠平和について几帳面に語った書。

机上の空論と一蹴されないために、批判をひとつずつ虱潰しにしていき、かつその根拠をあげていっている。

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2012年08月31日

Posted by ブクログ

永遠平和は蜃気楼

もしカントが今生きていたとしても、きっとまだ同じ事を言ってるんだろうなぁ。
いつまでこれを言い続けるんだろうなぁ。
いつまでもこれを言い続けなければいけないんだろうなぁ。

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2011年09月09日

Posted by ブクログ

○6つの条項
1.将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条項は、決して平和条約とみなされてはならない。
2.独立しているいかなる国家(小国であろうと、大国であろうと、この場合問題ではない)も、継承、交換、買収、または贈与によって、ほかの国家がこれを取得できるということがあってはならない。
.常備軍は、時とともに全廃されなければならない。
4.国家の対外紛争に関しては、いかなる国債も発行されてはならない。
5.いかなる国家も、他の国家の体制や統治に、暴力をもって干渉してはならない。
6.いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和時における相互間の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない。たとえば、暗殺者や毒殺者を雇ったり、降伏条約を破ったり、敵国内での裏切りをそそのかしたりすることが、これに当たる。

○第1補説
・理想的な存在者は、全体としては自分たちを維持するために普遍的な法則を求めているが、しかしひとりびとりはひそかにそれから逃れようとする傾向がある。問題は、そうした理性的な存在者の集まりに秩序を与え、体制を組織することであるが、その秩序とは、たとえ彼らが個人的な心情においては互いに対抗しあっているにしても、そうした心情を互いに抑制し、公の行動の場では、そうした悪い真情をもたなかったのと同じ様な結果を生ずる、といった秩序である。

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2010年07月19日

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