あらすじ
『嘘つき姫』で鮮烈デビュー、2作目『海岸通り』で芥川賞候補。
ファンタジックな世界観と異国情緒ただよう文体で読者を魅了する、2024年最大の新人が、文芸界に風穴を開ける。
次世代の「本物」を探すみなさま、この「才能」を、見つけてください。
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手のひらのミクロコスモス。地獄の口に何度でも出くわす人生、でも私だけの天国に続く糸も確かに光り、ここにある。この物語の中に。
ーー 一穂ミチ
とびきり美しい物語群の中に暗さや裏切りがあって、人間の光と影を同時に見せてくる…才能って“これ”のことね!?
ーー佐伯ポインティ
孤立と連帯のあわいを揺れる不器用な人間の心。その迷宮の出口は、意外なところに開いている。
ーー千街晶之
注目作家の変幻自在っぷりが炸裂。一編一編異なる魂を持つ、驚異的な短編集。
ーー瀧井朝世
坂崎さんの紡ぐ、宝石箱がきらめくような言葉づかいに、もう、夢中です!!!
ーー三宅香帆
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★収録作品★
「ベルを鳴らして」(日本推理作家協会賞短編部門受賞作)
そこにひとつの戯画がある。家一軒ほどの大きさのタイプライターだ。
「イン・ザ・ヘブン」
地獄はどこにでもある。内とか外とか関係ない。
「名前をつけてやる」
これは「バッグ・クロージャ―」これは「ランチャーム」これは「ポイ」
「あしながおばさん」
拝啓 盛夏の候、時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
「あたたかくもやわらかくもないそれ」
ゾンビは治る。マツモトキヨシに薬が売ってる。
「渦とコリオリ」
水流は左に渦を巻いている。
邦文タイピストの少女がついた歴史を変える嘘や、禁書運動家の母親を持つ少女の始祖サンドで繋がれた絆、流行り病「ゾンビ」で親友を亡くした女性の不思議な一晩etc.
人生ベストの一編が、ここに。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
芥川賞候補作家の短編集。この本の冒頭作は日本推理作家協会賞短編部門受賞作というのだから、才能あふれる人なんだろうとは思ったが、それ以上に面白い小説を書く作家さんでとても気に入った。
6編の短編が収録されているが、全てテイストが違って、しかも捨て作なし。短編小説の醍醐味が存分に詰まっていて、1作読むごとに満足感が半端ない、それこそ下手な長編小説読むよりよほど密度が濃い。それなのに読みやすいのは文章が上手いんだろうな。
表紙のイラストも雰囲気が出てて良かった。いや、またしても気になる作家さんを見つけてしまった。
前2作も読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
先生に恋するも。実は友達が、先生の娘だったっ言うタイプライターの話が印象的だった。
あと、ゾンビに効く薬がマツキヨにあるって言うやつが、シュールだったを
Posted by ブクログ
短編が6作品載っている。
どの作品もとても面白かった。主人公の性格や年齢がバラバラなのが読んでいて全く飽きなかった。
表紙には、それぞれの物語に関係した物が描いてあって、読んだ後や途中にふと目に入ると微笑ましく思った。
【あらすじ】
6作品の中の最初のお話を紹介。
「ベルを鳴らして」
タイプライターを極める少女(シュウコ)のお話。女性がバリバリ働くのが良しとされない時代。シュウコはタイプライターの学校で「先生」と出会う。先生にライバル意識を持ち勝負を挑むも完敗。シュウコは先生に淡い思いを抱くが、先生が気にかけていたのはシュウコではなく、、、
【感想】
「ベルを鳴らして」
悲しみの優しさの物語だった。
動物が出てくる短編を差し込んでいて、道標のようだと思った。
先生は全て見えていた。文字盤は人生そのもの。字で物語を繋ぐ。花林村を救うために、シュウコに楸の活字を渡した。娘の未来の旦那の故郷を救うために。何かの活字を活かすということは、他の活字を捨てること。捨てられた運命は日本を恨むだろう。
シュウコがドイツ人と結婚することまで見えていたのか。そして街中のライオンに気がつくところまで。
全て見えてしまう先生に、最後は勝ったショウコ。ショウコもまた、ロボットになった。
裕福で我が道を行くショウコ
中国人ながら日本に馴染んでいる先生。
2人はその時代では特別だった。
2人とも私(自分)ではない、特別ではない、誰かになりたかったんだと感じた。
「名前をつけてやる」
作中に出てきたクイズゲーム、私がよく行くゲーセンに実際にあった。古いゲームらしく、端の方にあったので今まで気が付かなかった。2人はこれをやっていたんだと、新しい発見。
Posted by ブクログ
まず、不思議で、ちょっと不気味な表紙絵に惹かれた。
クラゲのような頭を持つおんなのこ。急須の頭に鳥の羽根と足を持つ生きもの。空を飛ぶ飛行機のような魚…。
ファンタジックな世界観に、ファンタジーだと思う方もいらっしゃると思うが、作者は芥川賞候補作家で、この短編集の中の冒頭の作品『ベルを鳴らして』は、日本推理作家協会賞短編部門受賞作品である。
6編の短編、いづれも年齢も出自も生きる環境も違う女性が語り手で、女性同士の関係性が重要なテーマとしてある。
友だちのようなもの、だったり、母と娘だったり、姉と妹だったり、店員と客だったり。
よく、こんなにカラフルでグラデーションのある関係を微細に書けるなと感動した。
ときおり現れるファンタスティックな比喩表現は、まるでピアノの超絶技巧を聴くようで、うっとりする。
とくに好きなのは、アメリカのティーンの女の子が語り手の『イン・ザ・ヘブン』。
禁書運動に熱心なママを持つ「地獄はどこにでもある」って思ってる子。
相棒のカミラが最高!
もひとつは『名前をつけてやる』。
ネパールのボードゲームの日本名を後輩のすみれと考えることとなった朝世。
語り口が「っぽく」て最高!
それぞれの囚われた「地獄」から一筋のひかりをみつけた主人公たちに幸あれ、と願う。
Posted by ブクログ
静かで目には見えないけど、確かにある感情が力強い。すごい。
「ベルを鳴らして」
タイプライターの先生と、彼が守りたかった秘密が静かに浮き上がってきて心が震えた。自分の存在を消そうとする先生と、彼の存在を追い続けるシュウコの勝負は、初めてタイプ勝負をしたときから決まっていたのかもしれないと感じた。次の行へ移るときに鳴るベルが象徴的に響く。
「イン・ザ・ヘブン」
テンポよくストーリーが展開していく。エリサたちが語る本からの引用セリフはどこか浮いていて、地獄の中で手を取り合うカミラとの絆だけが現実と結びついているような不思議な感覚。
「名前をつけてやる」
とても好き。朝世とすみれの関係性には名前がない。でも爽快な気分になった。
「あしながおばさん」
中盤かられいなの印象ががらりと変わった。娘を失った心の穴を埋めようとするわたしと夫、他人によりかかって生きるれいな。どこか寂しい読後感。
「あたたかくもやわらかくもないそれ」
ゾンビとは何だったのだろう。ゾンビはひとりで、人間は群れる。かつでゾンビで一度死んだくるみは、モモたちの紙飛行機で人間として生き返った。人間は得体の知れないものに恐れを感じて遠ざけようとしてしまうけど、赤い血の通った、温かみも感じる旅だった。
「渦とコリオリ」
実はそう見えているだけ、というものはたくさんあるなと感じた。この短編集も、現実も。