【感想・ネタバレ】波うつ土地・芻狗のレビュー

あらすじ

さりげなく見える“日常”の底に、人間の“生と性”の深層を鋭く抉り、苛烈にして鮮烈な洞察の世界を描き出す、時代の尖端に立つ富岡多恵子の鮮やかな達成――。話題作『波うつ土地』『芻狗』の二著を収録。

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Posted by ブクログ

個人的には「坂の上の闇」が最も面白かった。主人公福間一紀の心理分析や心境変化を極力排し狂気性を持った異行動の描写により読者へそら寒さを感じさせることに成功している。一転して福間大夫との関係性は、おそらく男色による性の抑制による暴発と過去そして先々に渡る精神的軟禁を思わせ、それらの事実を語ることなく読者へ訴えかける手法は見事だ。この作品があまり話題に上ることがないのが不思議なくらい出来がよい。

次点で「芻狗(すうく)」。「芻狗」とは神前に供える藁細工の犬のことであるが、顔のない「わたし」が人身御供として淡々と男性と性行為を重ねる姿は性を軽んじることで生を虚無化しているように映る。ラストの遊園地は日常と非日常そして「わたし」の異常性が顕著に表現されておりとてもシュールなシーンだ。

・・・と称賛コメントを書いたが、「波うつ土地」ほか作品は、文学作品としての質の高さはわかるものの個人的にはあまり面白くなかった。小説には個々人の好みがあるが、富岡氏の作品はこれ限りになりそうだ。

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2018年08月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「波うつ土地」★★★★
「坂の上の闇」★★★
「芻狗」★★★
「結婚」★★★
「箱根」★★★★
「環の世界」★★★

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2024年04月12日

Posted by ブクログ

木下古栗が薦める「芻狗」という短編が収録されているので読む。この文庫には『波打つ土地』と短編集『芻狗』の二作を収録。

『波うつ土地』は共子が退屈な男を買うところからはじまり、周囲の人間模様を描く。女性を中心に話を進み、男性の影は非常に薄い。さばさばとした小説。

「芻狗」は、性交の相手を物色して、関係を持つさまを描く。木下古栗は「とても尖っている」と評している。

個人的に面白かったのは、遊郭での殺人事件を扱った「坂の上の闇」、恋人の親族の理由が読めない言動が不気味な「環の世界」の二編。

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2022年12月13日

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