あらすじ
人間は、どのようにしてモラルを持つようになったのだろう? 助け合うよう生まれついているはずなのに、今や普遍的なモラルなど失われたかのようだ。だが、人類が共有するモラルは存在する。モラルの起源が理解できれば、モラルの未来も見えてくる。
生物学的、文化的に社会が進化していく過程でモラルはどのように形成されたのか――哲学の専門知識とさまざまな研究データをもとに解明。現在の私たちのあり方を決定づけた進化の歴史が明らかになる。
狩猟時代から現代に至るまで、人間のモラルの基本は「個人の利益<共同体の利益」である。脆弱なホモサピエンスが生き延びるには、それは最良の手段だったからだ。5万年の歴史を通して、社会的構造の変化とその後の経済発展により、モラルはさまざまな変容を遂げてきたが、基本は今なお変わらない。
人間の善と悪はどのようにつくられてきたか? 歴史の流れを軸に、哲学、経済、生物学的な分析をもとに「モラルの変遷」を説明。
かつてない不平等と分断の時代、他者に限りなく不寛容で、モラルに反するものを厳しく罰し、個人主義が浸透しすぎた時代、どのように新たなモラルをつくるべきか?
著者の結論は人間のモラルの基本に立ち戻ること。国・民族・宗教などを問わずに人類に共通する「個人の利益<共同体の利益」を新たなモラルにすべきだというものである
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Posted by ブクログ
むずかしかった
人は自分のために行動しても、それが他人のためになることがあり、「自分と他人の幸せはつながっている」という考えがモラルを取り戻す鍵になるっていうのは、確かにその通りだなって思った。
もし、自分の幸せを、他人の幸せの一部だと思えたなら、モラルは押し付けられるものから自然に生まれるものになる。
後の話は難しくて理解できなかったです!!
Posted by ブクログ
表現や、もしかしたら翻訳を含めて読みやすい本ではなかったです。
まとめてしまえば新書一冊分に出来なくもなさそうな感じでしたが、そうはせずに様々な文献から例を挙げてしっかり説明してくれているので、読み終わるのに時間はかかりましたが、内容を深く考えることが出来ました。
人間は利己的か?利他的か?と言う反対語となる態度を考えた時に、人間はいつの時代も首尾一貫して協力的な生き物でしたが(利他的)、それはあくまでも自らの利益になるから(利己的)協力的な態度を取れると言う点は、改めて言われるとなるほどなと思いました。
「自己の利益のために他人と協力する」とか「利己的であるがゆえに利他的に振舞える」と言う事だと理解しました。
我々の生きている現代は懲罰や宗教で協力を強いられてきた過去の人類に比べてはるかにマシですが、自由と平等をうたわれているのにも拘らず、それぞれのイデオロギーで雁字搦めになった人々が、自己を声高に正当化し他者を攻撃すると言った態度は、利他的な部分がない利己的なふるまいと言う点に関して、確かにモラルは崩壊してしまっているのかもしれません。
筆者はそれに対する救いの可能性を肯定しながら具体的な方法は明言していませんが、私が思ったのは仏教の我利とその反対語にあたる自利利他と言う言葉です。
我利はまさに今の世の中の人々が陥っている状態、自利利他も、「利己的であるがゆえに利他的に振舞える」と同じように思えますが、「利他的な振る舞いが自分の幸せに繋がる」と言う考えと理解した時に、スタート地点が利己ではなく利他であり、今の分断を乗り越えるためにはこのような利己的ではない利他的な態度が必要なのかもしれないと思いました。
Posted by ブクログ
読み応えがあった。濃い。
人類の歩いてきた道は変化の連続で、今日正しかった事が明日には間違っているとされる。
「現代」というものが変化し続ける限り「モラル」というものは変化を続けている。
SNSがこういった変化においてどんな役割を果たしたのかも取り上げられていてよかった。情報量が物凄いので何度か読み返したい。
Posted by ブクログ
人間ってしょうもないな、というのが第1感。人は皆それぞれ道徳的な観念を持っている…しかしその正体は所属先のアイデンティティや社会的立場や政治にたくさん影響を受けている…本質は自分の周りには甘く、外側と判断した先に厳しいというのは実感もあるし認めなければいけないところだろう。
「奇妙な人々」の話が面白く、大学の心理学の実験で人のパターンを科学的に検証しているつもりが、それって全人類を対象にしておらず文化的に似たり寄ったりな人しか対象にしてないよね、という部分が笑ってしまった。西洋文明ではないどこかの部族は、私たちが錯視する絵に引っかからないらしい。そんなレベルで文化や環境は人に影響を与えるのか、というのが驚きだった。
全体的に面白かったが、難しいというか話が色んなところに行って捉え所がなかった点がマイナス。
Posted by ブクログ
ヒトの進化、人類史、社会構造の変化、文化と遺伝子の共進化などに興味がある人におすすめ。
ピンカーの『暴力の人類史』や『21世紀の啓蒙』と重なる議論もあり、そのあたりのノンフィクションが好きな人は読み進められそう。
第1章 五〇〇万年、第2章 五〇万年、というように
、大まかな年代区分ごとに章立てされている。気になる章だけ読むことも可能。
「カトリック教会の婚姻・家族計画が個人主義の成立につながった」など蘊蓄も豊富。
※以下、ざっくりと内容紹介。
人類のモラル・道徳の進化を500万年前から現代まで追いかけていく。
モラルの歴史は人類の進化の歴史である、と著者は述べる。
ヒトが自然界で生き延びてこれたのは、集団で協力することができたから。社会が大きくなると、それを維持するために懲罰の仕組みが導入された。遺伝子と文化が共に進化して、人類はより協調的になり、それに伴い社会はより大きく、複雑化した。
文化進化に続き、社会と政治が進化すると、新たな道徳的問題が生じる。
現代社会は、かつてないほど豊かになったが、同時により分断しやすくなった。右派と左派、リベラルと保守、グローバリズムと保護主義等々。だがモラルの歴史をひもとけば、普遍的な道徳的価値観を見つけられて、それをもとに相互理解できるはずだ。