あらすじ
20世紀初頭、世界が熱狂した壮大な首都構想。その真実は平和の実現か、恐怖の支配か
科学、通信技術、芸術、スポーツなどあらゆる叡智をひとつの都市に集結させる――斬新な〈世界の首都〉構想が立てられた。目的は技術革新を通した世界平和。考案者は彫刻家のヘンドリックと義姉で名家出身のオリヴィア。政治家や芸術家をはじめ計画は世界中で熱狂的に支持されたが、構想から30年を経たのち夢と潰えた。だがその裏ではムッソリーニ、ヒトラーら独裁者たちが強い関心を示していた。ユートピア思想から始まったはずが、なぜファシズムに利用されることになったのか。計画に人生を捧げた考案者の姿を通して、幻の理想都市の謎に迫る歴史ノンフィクション。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
理想都市=都市計画の流れにこういう実現しないものがあったのか。当然ながら教科書には出てこなかったぞ。オリビアの扱われ方(その当時についても、記述についても)に時代を感じる。オリビアのほうが私にはヘンドリックより面白かった。お金があって頑張る、というのはありなんだな。理想主義を一世紀を超えて今のIT/AI進歩論にもってくるあたりはいかにもバティストマレらしい。テサロニキ、行ってみたい。墓所を訪れる最後のところがリリックでフランス的。
Posted by ブクログ
世界の中心都市としての世界コミュニケーションセンターを建造するという話は、今まで全く一度も聞いたことがないし、本書のタイトルから全く現在には存在しない・受け継がれてもいないのだと思った。
本書は19世紀末〜20世紀序盤(第一次世界大戦前後)に理想都市を追い求めた彫刻家(一応建築家ではないはず)とそれを支援するオリヴィアという二人の理想家のノンフィクション。
本書の見た目と話題からして若干読みづらいかな?とおもったのだけど、とても読みやすくて一気に読んでしまった。
本書の実質的な主人公であるヘンドリックとオリヴィアが構想していた理想都市は、元々の構想が壮大だっただけでなく、要求仕様が膨れ上がる典型的な破綻プロジェクトに狂信的な想いで活動し続ける痛々しさを感じながら読んでいたので、最終的にはこの都市は全く実現には至らないのだろうなと思いながら読んでいた。
タイトル通り、本書の結論としては、ヘンドリックとオリヴィアの夢は実現できなかったという扱いだったと理解している。
でも、理想都市としての一部の設計方針は後のイタリアのローマのEURという都市に引き継がれたという話もあり、失敗だけではないのだなという若干の驚きと安堵さも感じた。
それにしても、ヘンドリックとオリヴィアはどういう関係だったのだろうか?本書の本筋ではないが、ここまでヘンドリックの才能を頑なに信じ続けたオリヴィアという二人の関係性へとても美しそうないびつそうな、不思議な感覚があった。
本書を読んだきっかけ:積読チャンネル