あらすじ
空前のホラーブーム、その源流がここにある。
ネット怪談はどのように発生し、伝播するのか。きさらぎ駅、くねくね、リミナルスペース……ネット民たちを震え上がらせた怪異の数々を「共同構築」「異界」「オステンション(やってみた)」など民俗学の概念から精緻に分析、「恐怖」の最新形を明らかにする
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ブログや2ちゃんねる発のホラーを民俗学視点で考察。ネット怪談は類書があまりなく本書が1つの指針となる事は間違いありません。新書ですが巻末に出典が詳しく記述されている点も嬉しい。2ちゃんねるホラーや都市伝説に興味がある方はぜひとも読んで欲しい好著です。
民俗学の研究者である筆者は「コトリバコ」を卒論の題材にするくらいネット怪談に強い関心があり、周縁のホラーもかなり読み込んでいる事が分かります。私も一時期洒落怖の代表作はほぼ読み、2ちゃんの怖い話も大体を網羅していたつもりですが、その端緒は知らなかったため非常に楽しく読めました。
Posted by ブクログ
怖いもの見たさで読んだ!怖かった!中身は基本『これは創作ですが』的な前置きは基本あったけど
私も2ちゃんねるとか、掲示板から始まったネット怪談はまとめサイトとかでしか見たことがなかったので、知ってはいたけどその話が生まれたバックグラウンドとかは知らなかったから面白かった
怖がりなのでしばらく1人で暗いところ行くの怖い
back roomsが最近のミームなのは知らなかった
Posted by ブクログ
1990年代から2020年代の現在にかけてのインターネット上に流布する怪談=ネット怪談を民俗学的な立場から俯瞰的に総括した本。
民俗学に限った話ではないけれど、「怪談」を扱う場合、基本的に日本ローカルであったり、語りにしろ文書にしろ言葉に記されたもの偏重(精々取り上げられても漫画や映画ぐらい)という印象であったが、本書ではクリーピーパスタをはじめとした英語圏におけるネット怪談の現状や、「The Backrooms」やInstagramやTikTokで流布されているような奇妙で不気味な画像や動画といった伝統的な「怪談」とは異なる共有される「恐怖」イメージや、フィクションに出自を持ちながらネット上に拡散される過程でフィクションとそうでないものとの境界があやふやになってしまっているようなものまで取り上げられている話題は幅広く、出典を辿りにくいネットの情報にも関わらず調査は丁寧。現時点で「ネット怪談」を知る上でもっとも適した本であることは間違いない。
一つ気になったのはインターネット上の事象を民俗学が扱う場合の「語り手」の存在についてで、この本はとても良く調べてあるけれどあくまでそれはネット上に現れた情報の履歴や伝播についてであって、その情報をネットに上げた人物についてはほとんど触れられることがない。まぁ、匿名掲示板への投稿者など実際には特定不能だから仕方がないのだろうけど、従来の民俗学における「民話」や「伝承」の採集においてそれを誰が語ったのか、語り手の存在は大きい。しかし、従来の民俗学が相手にしてきたローカルな社会ではない、インターネットのような広大で不特定多数の匿名の誰かによって構成される世界において語られる話、作られる文化における「語り手」の存在とはどのような意味を持つのだろうか?
Posted by ブクログ
面白い。30代前後のいわゆるインターネット老人界隈にはぶっ刺さる本。かつて見てきたネット怪談やホラーコンテンツを民俗学における文脈で読み解いていく本であり、以下にここ最近のネットやSNSの発達が人類社会において劇的な変化だったかと認識する同時に、ホラーを追い求める人々の姿勢は変わらないことをしれた。ある種 20年代までのネットホラー大全本的な趣もあり、手元においておきたい一冊。
Posted by ブクログ
ネット怪談について、民俗学的視点から研究・解説している本。
くねくね、きさらぎ駅、リアルなど、まとめサイトでネット怪談に親しんでいた世代で、懐かしい話題も多く、またそういった怪談が生まれた経緯や起源をしることができてとても興味深かった。洒落怖のような文化が廃れていって寂しく感じてもいたが、形を変え現代のネット文化にも脈々と受け継がれているというのも目から鱗。
Posted by ブクログ
くねくね、きさらぎ駅、コトリバコといった題材が、どのように育まれて語り手不詳の"怪談"となったかを民俗学の用語で分析する。キーワードは「共同構築」と「オステンション(やってみた)」、そして「再媒介化」。これらが論じられる1章・4章・6章が特に面白かった。
まとめサイトや切り抜き動画による再媒介化で出自に関する文脈が消去されかえってフィクション性が失われる(本当にあったことかもしれないと思ってしまう)という指摘はなるほどと思ったし、そうやってネット怪談がデータベース化していくことで不安が閾値に到達した人たちの存在も、今のネットホラーブーム(明確な語り手があるナラティブなもの)が支持されている要因なのかなと思った。
Posted by ブクログ
YouTubeやTikTok発の怪談(あるいはホラー)は知らないものも多く興味深かった。
古くはBBSや個人サイト、2ちゃんねるのオカルト板から最近ではTwitter(現X)や動画サイトまで、海外(特にアメリカ)の流行も踏まえながら変遷が説明されていて読み物としても面白い。実際いくつか、知らない怪談については読んだり動画を見たりした。
元々は怪談的なものが多かったインターネット上の「こわい話」がだんだんとホラーにシフトしていっているという点や、因習村的な(ある種の田舎を何が起こってもおかしくない空間としてシステム化している物語)ものが飽きられているような指摘も、インターネットを長年眺めている感覚と合致するものがある。
とはいえ過去も現代も要素や流行は変われども、不特定多数の人々が参加してインターネット上のこわい話、奇妙な話は作られていく。ネット怪談は、インターネットという広大な空間に住む人々の「民俗」のひとつなのかも。
Posted by ブクログ
『もはや恐怖にナラティブは必要ない』という一文が印象的だった。なんとなく感じていた事ではあるけど、ネットにおける怪談の移り変わりの後に読むと確かな実感がある。
曖昧さによってリアリティが強化される一方、創作らしさ(「くねくね」のオチみたいな)はカットされていってるというか、恐怖の‘’手触り”だけを具現化していくというか。
私はどっちも好きだけど、より怖いのは今どきのやつ。恐怖って鮮度があるからそりゃそうか。