あらすじ
バブル崩壊後、未曾有の就職難が社会問題となった。本書は1993~2004年に高校、大学などを卒業した人々を「就職氷河期世代」と定義し、雇用形態や所得などをデータから明らかにする。不況がこの世代の人生に与えた衝撃は大きい。結婚・出産など家族形成への影響や、男女差、世代内の格差、地域間の移動、高齢化に伴う困窮について検討し、セーフティネットの拡充を提言する。統計から見えるこの世代の実態とは。
■目 次■
まえがき
序 章 就職氷河期世代とは
「就職氷河期世代」とは/マクロ指標で見る就職氷河期/前期世代と後期世代の違い/ポスト氷河期世代・リーマン震災世代/就職氷河期世代観の変遷/指摘されてきた問題点
第1章 労働市場における立ち位置
初職――正規雇用か、非正規雇用か/就職先の規模・業種・離職率/就業状態の推移――世代間の差は徐々に縮まる/年収の推移――世代間の差は縮まらない/就職活動時の景気は影響するか/若年期の不況の瑕疵効果/就職氷河期を境に瑕疵効果は弱まった/第1章まとめ
第2章 氷河期世代の家族形成
未婚化・少子化の原因は若年雇用の悪化か?/1人の女性が産む子供の数は下げ止まっていた/既婚率と子供の数の複雑な関係/初職による格差/世代内格差を世代間に拡張する誤謬/景気と出生率の短期的な関係/若年期の景気の長期的影響はさらに複雑/少子化・高齢化対策の方向を見誤る危険性/第2章まとめ
第3章 女性の働き方はどう変わったか
就職氷河期のインパクトの男女差/就業率・正規雇用比率の世代差は数年で解消/フルタイム雇用者の男女間年収格差/就業率・正規雇用比率の男女間格差/晩婚化・晩産化の影響/出産退職の減少と就職氷河期世代/第3章まとめ
第4章 世代内格差や無業者は増加したのか
男性の年収分布の推移/男性フルタイム雇用者の年収格差/生活困窮者やその予備軍は増えたのか/ニート/生活不安定者/ひきこもり、孤立無業者/下側に広がる格差と将来への懸念/第4章まとめ
第5章 地域による影響の違いと地域間移動
対照的な近畿と東海/若年男性の就業・年収の地域間格差の変化/地域間移動の動向/大学進学に伴う地域間移動の傾向/高校卒業後の他都道府県での就職動向/第5章まとめ
終 章 セーフティネット拡充と雇用政策の必要性
親世代の高齢化による生活の困窮/低年金・低貯蓄からくる老後の困窮/既存の枠にとらわれないセーフティネットの拡充/介護サービスのさらなる拡大/雇用政策・就労支援で若年のうちに挽回を/データに基づく冷静な議論を
補 論
あとがき
参考文献
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Posted by ブクログ
1993年から2004年に卒業した世代を就職氷河期世代と定義して、その前のバブル世代、その後のリーマン・震災世代と就職時のはじめの職業、所得、婚姻、就業形態などを大規模な統計データから分析している本です。
私が一番心に残ったのは、世代が新しくなるにつれて、所得が一番低い層の割合が拡大していて、これは氷河期世代以降のリーマン・震災世代でも継続している、ということです。
これらの世代の人たちが老年期になった時、日本はどんな国になっているのかを考えると、明るい気持ちにはならないです。
明るい国にするために、まずは現実を直視することが大切だと思いました。
Posted by ブクログ
データの分析に基づく論理的な展開。
社会福祉政策などを検討する人にはとても参考になるのではないかと思います。
文系の論文かくあるべしみたいな本。
Posted by ブクログ
客観的にみれば、氷河期世代でことが始まったわけではないこと、そして、景気回復期の今の若者で実は雇用、収入の不安定が続いているといっている。
自分は一浪、工学修士で2000年卒の男だ。学卒前の97年、院卒前の99年で就活した時の、今で言う学歴フィルターの威力に打ちひしがれたものだ。運良く外資系ITで職を得て今に至るが、リストラ、パワハラ、競争がひどく、生き残るために必死だった。大学卒でも企業がだいぶ絞ったので正社員になれないやつもたくさんいた。一流大卒者は豊かだったろう。氷河期の頃は、職場のモラルやハラスメント意識も低く、職場環境や支援は今とは比べ物にならない位悪い、感覚だ。
一側面の客観事実とし、氷河期世代から始まったと言われていることが実はそうではなかったと言うことが示されている点は、私にとって新しい認識であった。ただ、あの時代の厳しさは異様ではないかとの思い。バブル期の価値感や制度を引きずった社会が、不況期を受け入れ馴染む過渡期だったので、多くのものを変えていく様が異様に思えた。そこを特別ししているのだな、と自分的には認識したい。あの時代に目先の利益を追うしかないとして、技術を手放したり、互恵や協調のもと、技術を教えたり入りやすくしたことが今の地位に落ちた要因の一つだと思う。などなど、想像力がひろがる、示唆に富んだ大変学べる本でありよかった。何度かまた読み返してみたいと思った本だ。
Posted by ブクログ
私は氷河期世代ではないが、イメージで非正規が多く就職が厳しかった世代と思っていた。
本書を読むと、多くのデータを用いて客観的なデータで氷河期世代の実態を紐解いており、イメージではない氷河期世代を知ることができる。
私は本書で言う、「リーマン震災世代」で実感として、周囲の就職や所得は厳しいかもと感じていた。
本書は私の世代も含め、バブル世代など他の世代もデータで比較しており、氷河期世代以外の世代についても、データで実態を把握できた。
Posted by ブクログ
なんとかしないと。ぼーっと手をこまねいている場合じゃないよ。やばいことになるのはすぐだよ、すぐ。
いろいろ考えなくてはならないことが多いのは分かるんだけど、もっともっとこの先やばいことは話題にしないとなあ。この話題だって30年くらい誰かがしてたでしょう。
国はもっと危機感を持たなきゃいけないし、国民は自分事として考えないと。サスティナブルどころか、立ちゆかなっちゃうよ。芸能人のくだらないゴシップなんかどうでもいいんだよ。ちゃんと投票して国にプレッシャーかけないとだめだっての。
Posted by ブクログ
失われた30年の損失の大きさよ。バブル崩壊や産業構造の変化、震災、リーマンショックなど様々な要因があったのだろうが、問題を先送りにしたツケは甚大でこれから福祉や介護の問題が社会に重くのしかかってきそうだ。
私自身が就職氷河期後期世代で、個人的に社会の先行きが明るかった試しがない。ポスト氷河期世代も年収や就職に苦戦していることや世代間で収入格差が拡がっていることなどを考えると負のスパイラルを断ち切るのは容易ではなさそうだ。
女性の社会進出で制度が整い、実は氷河期世代が子どもを前の世代より産んでいることなど社会がすべて劣化したわけではない。
小泉政権が痛みに耐えろと改革を進め、自己責任論が跋扈し、私たち世代はずっと痛みと責任を背負わされてきているわけだが次の世代にその負の遺産を遺したくない。
Posted by ブクログ
第1章まとめ
就職氷河期世代、特に後期世代は、上の世代に比べて、卒業後、長期にわたって雇用が不安定で、年収が低く、年収の格差は卒業後15年たっても解消しない。
氷河期世代よりも下の世代は、景気回復期の卒業した世代も含めて、雇用が不安定で、年収が低いままである。
氷河期世代を境に、就職した年の景気の長期的な影響が弱まった。
第2章まとめ
氷河期後期世代にあたる1970年代後半から80年代前半生まれは、そのすぐ上の段階ジュニア世代よりも、40歳までに産む子供の数は実は多かった。
個人レベルで見ると、若年期の雇用が不安定だと、男性だけでなく、女性でも、結婚確率や子供の数は減る。
しかし世代全体で見ると、ある世代の子供の数とその世代の経験した新卒労働市場の状況には、はっきりした相関関係はなく、景気と出生率の短期的な関係も時代や国よって変化する。
第3章まとめ
新卒時点では、女性の方が男性よりも就職氷河期の影響が強かったが、就業率や正規雇用率の世代差は数年で解消した。
ワンコム化や既婚女性の就業継続率上昇が就職氷河期の影響を打ち消していた面が大きい。
就業率や正規雇用比率とは異なり、フルタイム雇用車の年収については、女性同士の世代間格差も、同世代内の男女格差も縮小していない。
第4章まとめ
就職票書き世代以降、所得分布の改装の所得がさらに下がることによって、世代内の所得格差が拡大する傾向にある。
ニートや、親と同居する無業者、非正規雇用者、孤立無業者など、特に厳しい状況に置かれている人の割合は、若い世代ほど増えており、年齢が上がっても減っていない。
第5章まとめ
就職氷河期のインパクト自体に地域差があった。
地域間の賃金格差は就職氷河期に拡大し、特にフルタイム雇用者で顕著だった。
18歳時点の地域間移動自体は減少傾向にあるが、その時の居住地が他の地域に比べて、相対的に景気が悪いと、立ち引き進学も、他の都道府県、就職も増える。
最後
親世代の高齢化による生活の困窮、
定年金低貯蓄から来る老後の困窮
既存の枠にとらわれないセーフティーネットの拡充、
介護サービスのさらなる拡大、
雇用政策就労支援で若年のうちに挽回を
データに基づく冷静な議論を
統計の向こうに見えるのものは?
本書の各種統計から見ると、平成の長い年月(終わる間際を除くほとんどすべて)に渡って、社会は若い新規就職者にとって不安定・峻厳なものだったことがわかる。これはまさに日本の失われた30年そのものの表出のようの思われる。社会に第一歩を踏み出す、希望に燃えて当然の世代がこんな困難に直面すれば、結婚して子供をつくる、友人たちと余暇を楽しむ、海外旅行に出かける、などの行為が出来にくくなるのが当然だと思えてくる。それが一語一句文字通りに令和の今の社会状況を形成しているのではないか。
だとしたら苦難含みのこの時代を乗り越えるためには、仕事とは職業とは人生とはをもう一度子どもたちに教え直し、そして彼らを支えてやることこそその第一歩になるのではないだろうか——統計から強烈に透けて見えるのは、まさにそういう社会の重要性である。
Posted by ブクログ
最近SNS等で叫ばれることが多くなった就職氷河期問題に関する問題。これを統計という客観的エビデンスを用いて論じており、問題を冷静に捉えるうえで有益な書と思える。
統計の説明が多いためやや読みづらさを感じたが、それは私自身が統計の分野に慣れていないからだろう。
問題を捉え直したうえで、政策として次なるアプローチをどうするかについては、著者自身が述べるとおり、特効薬は示されていない。それだけ根深く複雑な問題なのだろうが、本書で得た客観的視点は、私自身もこの問題にどう向き合うかを考えるうえで大切にしていきたい。
Posted by ブクログ
自分も後期氷河期世代の一人として我が身を投影して読んだ。
我々の世代の真価が問われるのは思う様に働けなくなる30年後だ。年金制度は破綻はしないだろうが(支給額を減らせば破綻はしないし、そもそも年金だけで暮らそうと思っている考えの方が破綻している)行政や企業の支援は当てにしない方がいい。頼りになるのは辛酸を嘗めた同世代同士の繋がり、横の連帯だ。あらゆるケースに対応した紐帯を築く準備期間がまだ30年残されている。
後世、あの世代は貧乏くじを引いて可哀想だった、と同情されるのではなく、逆境なりに頑張ったじゃないか、と評価される一員になっていたい。
ジュンク堂書店天満橋店にて購入。
Posted by ブクログ
1990年代半ばから2000年代前半の、バブル景気崩壊後の経済低迷期に就職した「就職氷河期世代」(本書では、1993~2004年に高校、大学等を卒業した世代と定義)に関し、その前後の世代と比較しつつ、世代別の雇用や経済状況、家族形成への影響、女性の働き方の変化、世代内の格差、地域間の移動などについて、政府統計をはじめとするデータを用いてその実像を検討し、セーフティネット拡充等について提言。
個別の事例を基に印象論で語られがちであった就職氷河期世代について、就職氷河期の若年雇用の悪化が未婚化・少子化の主因だといった通説の再検証も含め、データに基づく客観的な全体像が提示されており、個人的にも勉強になったし、この世代等に向けた政策形成に当たっても基礎とすべき内容であると思う。特に、自分も含まれる、就職氷河期世代からは外れ、政策の対象にあまりなっていない、ポスト氷河期世代(2005~2009年卒)やリーマン震災世代(2010~2013年卒)も雇用が不安定で年収が低いままであるという事実は、目から鱗であった。
最後の政策提言部分は一般論的で具体的な制度設計まで提起されているわけではないが、この世代に向けて雇用政策とは別に福祉の拡充に向き合うべきということ、生活保護の次の段階の既存の枠にとらわれないセーフティネットを拡充すべきということ、氷河期世代より下の世代への就労支援を充実すべきということといった方向性は、賛同できるものであった。
Posted by ブクログ
バブル期から就職氷河期とその後のポスト氷河期世代の状況を様々なデータを元に勉強できました。
数字で見てもバブル崩壊と言うのはそれだけ社会に与えた影響が大きかったんだなと言う感想です。
実は就職氷河期以降は失業率などは低いままと言う事実と、実際に就職氷河期世代に困っている人が多い事を考えると、就職氷河期とはバブル崩壊で大きく変わった社会に人も会社もうまく馴染ませるための10年間だった気がします。
私が若い頃はまだ当たり前のように言われた『お前の代わりなんていくらでもいるんだ!』と言うセリフなどは、昭和の価値観の悪い部分の最たるものだと思います。
就職氷河期世代がバブル期以前の悪い部分だけを煮詰めて飲まされた世代と言っては言い過ぎですが、梯子を外されたとは言い得て妙で、そのように教育されてきたのに社会に出たらそれではダメ(人)、昨日までそうやって来たのに今日からはそのやり方ではダメ(会社)、となった訳ですから世の中はすごく混乱したのではないでしょうか?
例えば非正規雇用と言う言葉一つ取っても、高度経済成長期やバブル期のなんとなく生きていけた社会での非正規雇用と、バブル崩壊を経て安月給なのに嫌な思いまでして働きたくない、もしくは心を病み働けなくなると言う社会での非正規雇用では、意味合いも大きく変わったのでは?と感じますし、数字だけでは見えてこない中身の質の変化をどう捉えるか?も、やっぱり大事だと思いました。
Posted by ブクログ
就職氷河期世代の就業・収入・生活実態を、統計データから明らかにしようとする本。なのだが、俗説で言われるロストジェネレーション的な傾向は証明するのは簡単ではない、というのが本書の結論。
個人的には、氷河期世代当事者として欲しかった結論ではないので、消化不良なのは間違いない。でも、主観や感情論ではなく、データ/エビデンスに基づいて議論をすべき派でもあるので、複雑な心境。
前向きに考えるなら、経年変化をデータで追おうとすると、社会が想像以上に複雑な(データの解釈が難しい)ことに気づけたのは良かった。
例えば、「大学進学率」「女性の働き方に関する考え方」「雇用慣行(雇用の流動化)」などの社会的な変化の影響を考慮すると、就業率や賃金データから、氷河期の影響だけを抽出するのが難しくなっていると感じる。エビデンスがあるからと結論に飛びつくのは危険、というのを改めて認識する。
ただ、そんな中でも確実に言えるのは、バブル世代とそれ以降の世代には、明らかに格差があること。そして、氷河期世代への支援は、年齢的にもはや就業支援は現実的ではなく、福祉支援の段階に来てしまっていること。
後者に関しては、暗い未来しか見えなくて、暗澹たる気持ちになる。。。
Posted by ブクログ
統計に基づいた就職氷河期世代のマクロ的な分析。当事者として興味深く読んだ。が、参照されるデータの多さ、論文調の文章が当方にはなかなか難しく。
女性のケースと地域についての章は流し読み。
最初の就職で躓いてしまい、以降低賃金の非正規雇用から抜け出せずキャリアやスキルを身につけないまま中年になってしまった。年収が低いので結婚できず、老後の年金支給額も少ない。…というのが氷河期世代のイメージか。大方、データもそれらを裏付けている。
意外だったのは氷河期世代は団塊ジュニア世代より子供を産んでいた、氷河期世代の影に隠れがちだがリーマンショックと震災のあった世代の就職状況も劣らず悲惨だった、という2点。というか経済的に自立できない若い人たちが増えているというのは単に日本経済が右肩下がりのせいでは…。コロナ禍後のインフレと円安、過去最高税収、実質賃金は下がり続けているのに物価は上がる一方。生活は厳しい。若い世代の立ちんぼやら闇バイトやらのニュースに90年代のような既視感を覚える。
非正規雇用から抜け出せなかったのは当時の小泉政権が派遣法を改正したのも原因だろうと思っている。
氷河期世代も50代に入っている。職務経験を積む機会なくその年齢になってしまった人に、今更職業訓練や斡旋をしても効果は薄い。自分の職場に、スキルのない50代の男性が配属されてもなかなか難しいものがある。福祉で対応すべきという本書の指摘に同意。
あと10年もすれば氷河期世代も高齢者。年金が少なくて生活できない困窮者が大勢出て社会問題化するのだろう。
自分は氷河期世代としてブラック企業に就職し、その後職を転々としたのち(震災の年にした転職活動は惨憺たる結果だった)今の会社に入社した。もう10年以上の勤務、給与も待遇もこれまで勤めてきた会社で一番恵まれているので続いている。運がよかった。運が悪ければもっと困窮した立場にいてもおかしくなかった。
Posted by ブクログ
本書の分類では自分はポスト氷河期世代(05年〜09年卒)になる。この世代というのは、前世代よりかは就職内定率は回復しており、自分の実感としてもそのような記憶になっている。世間の記憶もそうかもしれない。
しかし本書のデータで見ると、バブル崩壊直後の氷河期前期世代(93年〜98年卒)と内定率は変わらない。そして、そのあいだに挟まれた氷河期後期世代(99年〜04年卒)はどん底であり、リーマン震災世代(10年〜13年卒)も惨憺たるデータが並ぶ。
本書を読んでいると、このようにデータを駆使して世間のなんとなくのイメージを覆す効果はある。たとえば、氷河期前期世代はイメージより苦しい状況ではないとか、氷河期と少子化の相関関係には複雑さがある(単純な事実として、少子化自体はバブル崩壊前から始まっている)などだ。ただ、このような思い込みの刷新自体にあまり意味はない。
問題は、もう少し実務的なものである。平たくいえば経済面、金の話である。リーマン震災世代でも、いまや30代に入っている。データはデータでしかなく、それをどう再分配につなげるか。氷河期の問題は老齢化が進んでからこそ、大きな問題となることは明らかだからである。
Posted by ブクログ
各種データを冷静に検証して論を進める姿勢に好感が持てるし、信頼を感じる。
従来ざっくり語られるイメージに対してのズレも興味深い。
日本の将来に関して、本質的な部分での助けとなる政策が行われることを願う。
Posted by ブクログ
◆ 所得・雇用における格差
正規と非正規で40代の平均所得に2倍以上の差
正規雇用者の年収が約500万円に対し、非正規雇用者は約200万円台に留まる。
→ 雇用形態による格差がそのまま資産形成や生活の安定に直結。
同世代内の「初任給格差」が生涯格差に直結
バブル期卒業者と氷河期初期卒業者では、初任給に1万〜2万円の差があり、昇給や転職市場でも埋まらない。
→ 若年期のスタートラインの差が累積的に格差を拡大。
生涯所得格差は最大1億円以上に及ぶ
正規×既婚世帯と、非正規×単身世帯の間で、家計金融資産や年金支給額にも大きな開き。
◆ 家族形成・住宅取得の格差
40代時点での未婚率が異常に高い
特に男性は、他世代より10〜15ポイント高く、40代後半での未婚率が約30〜35%。
→ 所得の不安定さが結婚・出産の障壁に。
持ち家取得率が他世代より20ポイント以上低い層も
とくに非正規や中小企業勤務者では、住宅ローンの審査にも通らず、持ち家率が著しく低下。
→ 将来的な資産格差に直結。
◆ 精神的・健康的側面の格差
主観的幸福度が他世代より低い
「自分は幸福だ」と答える割合が、バブル・団塊ジュニアと比べても明確に低い。
→ 精神的健康や将来への希望にも大きな影響。
健康格差:氷河期世代の非正規層で生活習慣病リスクが高い
不規則な労働時間、医療アクセスの不安、ストレス過多が背景にある。
◆ 社会保障や老後に向けた格差の連鎖
年金受給額予測で大きな差
正社員として厚生年金に加入し続けた人と、国民年金のみに留まった人とでは、将来の年金額に月額10万円近い差。
「貧困の再生産」につながるリスク
親世代の格差が教育機会や進学率に影響し、次世代の学歴・所得格差へと波及。
このように、本書は「世代全体が不遇だった」という表層的な議論ではなく、「同世代内での二極化・格差の固定化」が進行しているという点を、膨大なデータで裏付けているのが大きな特徴です。
Posted by ブクログ
自身が本書でいう「氷河期後期世代」にあたることから、一般的に言われている通り、「氷河期世代」は色んな意味で他の世代より損をしているのか、さまざまなデータの裏付けを元に考察している、ということで、興味が湧き購入しました
単に収入や就職率に限らず、少子化や地域間格差、男女による違い、ニートや介護による無業者問題などの観点でも考察されていてとても興味深い内容でした
データ(エビデンス)を用いて、論理立てて考察されていてとても腑に落ちる内容だったと感じます
驚いたのは、必ずしも「氷河期世代」だけが損をしているわけではなく、「氷河期」以降は基本的に特に低所得の領域において下げが止まっておらず、格差が広がり続けているということ、一方で、それが少子化につながっているとは言えないことがデータからは読み取れると言うことです
様々な観点で要因分析されていて、単純な話ではなく、視点を広げるいいきっかけにもなったと感じました
Posted by ブクログ
就職氷河期世代の一人として、巷で言われるような因果関係が果たしてデータ的に裏付けられるのか、関心がある。たとえば氷河期世代は雇用が不安定なので未婚率が高く少子化が進んでいる、と良く言われるが果たして本当だろうか?
実は未婚化の流れは氷河期世代以前から進んでおり、雇用の安定性とは相関がない。この場合、雇用状況が改善されたポスト氷河期世代では出生率が向上するはずだが、そのようなデータは見られない。同様に地方創生政策における各地方の人口移動についても、進学時点でのインパクトが大きい。
つまり就職氷河期とは、バブル崩壊後の前期後期及び、リーマン震災の二段階15年にわたる長期の現象であり、その間に男女雇用機会の均等化や大学進学率上昇、晩婚晩産化といった社会構造の変化が同時に起こっている。共働き世帯の増加と女性のキャリア形成多様化、終身雇用の崩壊といった複合的な要因を分析しなければならない。
そしてこれら激動のような時代に、賃金も上がらず社会保障負担は増え、インフレに直面する氷河期世代の2000万人をいかにすべきか、国や企業にはビジョンが欠落しているのである。
Posted by ブクログ
第三次ベビーブームが来なかったのは、
バブル崩壊で、第二次ベビーブーム世代が就職氷河期世代になってしまったから、
という説があるが、この新書は、これらをデータでしっかり分析しようとしている。
とにかくたくさんのグラフが出てくる。
。。。残念ながらわかりにくい。読みにくい。
バブル崩壊で正規雇用につけず、結果年収が下がる。
年収が下がると子供を持ちにくくなる。
女性のライフスタイルが変わり、正規雇用・結婚・出産・退職・非正規雇用というのもあれば、
正規雇用のまま高齢出産、というのも増えている。30代後半、40台出産が増えたというデータもある。
いずれも仮説、そうではないか、といわれていることを実証した、というところ。
しかしそれ以上のものではないような、、
著者がいいたいことがわからなかった。
まえがき
序 章 就職氷河期世代とは
「就職氷河期世代」とは/マクロ指標で見る就職氷河期/前期世代と後期世代の違い/ポスト氷河期世代・リーマン震災世代/就職氷河期世代観の変遷/指摘されてきた問題点
第1章 労働市場における立ち位置
初職――正規雇用か、非正規雇用か/就職先の規模・業種・離職率/就業状態の推移――世代間の差は徐々に縮まる/年収の推移――世代間の差は縮まらない/就職活動時の景気は影響するか/若年期の不況の瑕疵効果/就職氷河期を境に瑕疵効果は弱まった/第1章まとめ
第2章 氷河期世代の家族形成
未婚化・少子化の原因は若年雇用の悪化か?/1人の女性が産む子供の数は下げ止まっていた/既婚率と子供の数の複雑な関係/初職による格差/世代内格差を世代間に拡張する誤謬/景気と出生率の短期的な関係/若年期の景気の長期的影響はさらに複雑/少子化・高齢化対策の方向を見誤る危険性/第2章まとめ
第3章 女性の働き方はどう変わったか
就職氷河期のインパクトの男女差/就業率・正規雇用比率の世代差は数年で解消/フルタイム雇用者の男女間年収格差/就業率・正規雇用比率の男女間格差/晩婚化・晩産化の影響/出産退職の減少と就職氷河期世代/第3章まとめ
第4章 世代内格差や無業者は増加したのか
男性の年収分布の推移/男性フルタイム雇用者の年収格差/生活困窮者やその予備軍は増えたのか/ニート/生活不安定者/ひきこもり、孤立無業者/下側に広がる格差と将来への懸念/第4章まとめ
第5章 地域による影響の違いと地域間移動
対照的な近畿と東海/若年男性の就業・年収の地域間格差の変化/地域間移動の動向/大学進学に伴う地域間移動の傾向/高校卒業後の他都道府県での就職動向/第5章まとめ
終 章 セーフティネット拡充と雇用政策の必要性
親世代の高齢化による生活の困窮/低年金・低貯蓄からくる老後の困窮/既存の枠にとらわれないセーフティネットの拡充/介護サービスのさらなる拡大/雇用政策・就労支援で若年のうちに挽回を/データに基づく冷静な議論を
補 論
あとがき
参考文献
Posted by ブクログ
タイトル通り、統計データに基づき実証的なアプローチが取られている。ドキュメンタリーのような内容ではなく、淡々とファクトを積み上げていくスタイルが心地よい。
Posted by ブクログ
個人的怨嗟の成仏のために読んでみた。帯のまとめの最初2つが、そうなんだ意外、と。あそこで労働環境が構造的に変わってしまったのか…経済の失敗は国を滅ぼすな。地域による差も知らなかった。
著者あとがきに深くうなづく。自分も氷河期のなかでも悲惨な氷河期後期世代ドンピシャだけど、ほんとあの時は若者の自己責任的な空気が強かった。許せん(←成仏できてない)
あと少子化は氷河期あまり関係ない、その前からだし、最近はさらに進行中だけど、ということで。原因はいろいろだと思うけど、なんだろう…一番は空気かな。空気ってなんなのかなー(盛大に話ずれた)