あらすじ
「子どもが、産まれるんです」真冬の深夜。酔っ払いの男は静かに語り出す――。(佐藤青南「祝杯」)
担当していたWebマガジンが大炎上。絶望した私にかかったのは、猛毒をもつフグの卵巣を食べに行く誘いだった。(蝉川夏哉「毒を食らう」)
密室状態にあった酒蔵で発見された他殺体と、消えた大量の酒。犯人の使った驚くべきトリックとは?(鴨崎暖炉「酒蔵廊下の密室」)
晩酌のお供に読みたい物語、25作品!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
2025/3/8-8/31 1話3分で読める長さなので、展開がやや性急すぎてついていけない話もあった。個人的にトリックが面白かったのは、酒蔵廊下の密室、運命の女。文体や話が好きだったのは、いつかのマグカップ、献杯記念日。お酒の知識がちょっとだけ増えたし、知らない作家さんを沢山しれたかな。
Posted by ブクログ
お酒のアンソロジー。お初の作家さん、よく読んでいる作家さん取り混ぜて楽しませていただきました。ほのぼの話からクスッとする話にヒヤッとする話、お酒を使ったトリックなどなど。友井羊さんの「スープ屋しずく」にホッとして。ありがたいのが最後に著者の方々の紹介と代表作が書いてあったこと。「この人あれ書いた人かー」と思ったり、この作品の著者の他の作品読んでみようかな、と思ったり。他の「3分で読める!」も読んでみようかな。
Posted by ブクログ
2025.07.24-2025.08.12
お酒にまつわる短編集。
このようなアンソロジー的な短編を読むことに慣れていないため、次々と変わる文体に少し面を食らった。
しかし、半分ほど読み進めていけば、ショートドラマを連続で見ているような、転換ができるようになっていき、後半はサクサクと読めた。
この本の中で印象に残った物語は4本。
『美酒の集いのメインディッシュは』柊サナカ
主人公の青く、熱く、震えるような正義感に共感を覚えた。「酒の肴」はさまざまだが、彼の言葉に胸を打たれた私もまた、味わう側の人間になってしまっているのかもしれない。
『真夜中の梅酒』咲乃月音
父の生き直しに対する息子の憤りとやるせなさが終始付きまとう。しかし、「親」が「親」であろうと努力する様や、子どもの知らない「夫婦」の関係性があること。あくまで家族は他人であり、甘えて共倒れするのではなく、慮り合うことが重要だと感じた。
『白い粉の秘密』喜多喜久
とにかく女性の心の描写が、私を捉えて離さなかった。恋愛的な中で曖昧にゆれる駆け引きと、あまりにも魅力的な主人公の「相手にとってこういうふうに見えたら嬉しい」という気持ちのこもった所作は、彼女を運命の女たらしめた。罪を犯したくなるほど極上の女神を、私はこの短編集の中で一番美しいと思った。
『いつかのマグカップ』深沢仁
あまり恋愛小説は読まないタチなので、これが良くあるパターンなのか、否かの判断がつかなかった。しかし、主人公の選択はとても良いと思った。子どもにとっても、彼女にとっても、非常に良い。個人的に私なら産む選択はしないと思うが、彼女はそれだけ元旦那のことを憎からず思っているのだろう、と感じた。その愛しさを読者の私が感じるからこそ、元旦那の行動とそれに対する償いの選択は当然だなと思った。人を裏切るということは、その人の魂を軽んじることなのだから。
酒を巡る物語というのは、一見アダルティな印象を持つ。しかし、どの物語も口に含むと、香りが鼻を抜け、味に馴染みがなくてもクセになる。ページが少なくなるほど心と体が緩んでいく、気楽に苦味や甘味を楽しむのに打ってつけな一冊だった。