あらすじ
世界同時緊急出版!彼は暴き、告発し、闘い、愛し、最後まであきらめなかった。
「プーチンが最も恐れる男」と評された、ロシア反体制派リーダーにして人権活動家のアレクセイ・ナワリヌイによる渾身の自伝。
2020年、飛行機内での毒殺未遂という大事件の直後から執筆が開始された半生記と、政治犯として収監されてなお、死の直前まで綴られた獄中記で構成。
プーチン独裁政権に挑むナワリヌイの、ページをめくる手が止まらないスリリングな「闘いの履歴」である。
チェルノブイリ原発やアフガン侵攻を間近に見た少年期、ソ連崩壊と新生ロシアに失望した青年期、ロシア上層部の汚職とのウクライナ侵攻を敢然と告発する壮年期までが描かれる「歴史の証言」でもある。
そして何より、情熱、ユーモア、勇気をもって、真摯かつストレートに綴られた「ナワリヌイから世界への最後の手紙」である。
地球上で最も残酷な刑務所で過ごしながら、時に囚人と友情をはぐくみ、SNSでメッセージを発信し、極限下でもささやかな楽しみを見つけ出し、トルストイに共感し、妻と子供たちへの愛を温め続けた「人間の底力」の実話だ。
「この本は、アレクセイの生涯の証であるだけでなく、独裁政権との闘いへの、彼の揺るぎない決意の証です。この闘いのために、彼は人生も命も捧げました。この本を通して読者のみなさんは、私が心から愛した男を知ることになるでしょう。私の夫は、限りない誠実さと不屈の勇気をもつ男です。アレクセイの物語を共有することは、彼を称えるだけでなく、みなさんが正義のために立ち上がり、本当に大切な価値観を見失わないようにする力となるはずです」ユリア・ナヴァルナヤ
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
毒殺未遂後、なぜ命の危険があるのにロシアに戻ってきたのか知りたくて、本人の手記を読みました
その答えはとてもシンプルで、
まず、ロシアという国を人を文化を心底愛していたこと
『ロシアの人たちはすばらしい。ロシアの人たちは複雑で、思索にふけるのが好きで、私も同じだ。それに、何でもかんでも生きるか死ぬかの問題に置き換えて、この国の未来について議論を交わし始める。私もそうだ。』
『ロシアの文学や映画も好きだ。どれも必ず、苦悶や沈思、苦悩、憂鬱、自省に触れている。』
そして、そんなロシアに自由をもたらしたかったこと
それには命の危険を伴うことを覚悟していたこと
『ある日、もう気にしないことにしようと決めたのである。すべてを秤にかけて、自分の立ち位置を理解して、なるようにしかならないと考えることにしたのだ。自分は反体制派の政治家であり、敵が誰なのかよく承知している。にもかかわらず、敵に殺されるのではないかと始終不安に感じているのだとしたら、ロシアで生活する価値はない。どこかに移住するか、生き方を変えるか、どちらかを選ばなければならない。』
そして実際、ロシア帰国直後に不当に逮捕され、北極圏の刑務所で毒殺されました(2024年2月16日没47歳)
After the attempted poisoning, I wondered why he would return to Russia despite the danger to his life, so I read his own memoir.
The answer was very simple:
First, he loved Russia—its country, its people, its culture—from the bottom of his heart.
“The Russian people are wonderful. They are complex and fond of deep reflection, and I am the same. What’s more, they turn everything into a matter of life and death, then begin debating the future of this country. I do that too.”
“I also love Russian literature and film. Every one of them inevitably touches on agony, deep thought, suffering, melancholy, and introspection.”
And he wanted to bring freedom to that Russia.
He was prepared to face the mortal danger involved.
“One day I decided I simply wouldn’t care anymore. I weighed everything, understood my own position, and resolved that whatever happens will happen. I am an opposition politician, and I know full well who my enemies are. Yet if I spend my life in constant fear of being killed by them, then there is no value in living in Russia. I must choose: either emigrate somewhere or change the way I live.”
And in fact, immediately after returning to Russia, he was unjustly arrested and poisoned to death in a prison in the Arctic Circle (died February 16, 2024, aged 47).
Posted by ブクログ
ナワリヌイ氏が亡くなった後にドキュメンタリー映画を観、その勢いでこの本を読み始めた。
ナワリヌイ氏存命の間にその活動をリアルタイムで体感したかった、とこの本を読んですごく後悔した。まず、衝撃を受けたのがロシアの実態で、社会主義国とは国民を等しく貧困にして、権力者が搾取するという構図になっており、それが今のロシアであるということ。(それ以外の国でも起こっているが)そして、リアルな話として、あらゆることが賄賂で免れられるということを聞いたことがあったが、それは冗談ではなかったと気付かされた。さらに、情報は統制され、政府に都合よく国民は欺かれている。国による国民に対する詐欺が常態化し、反逆するものは抑圧される。そんなおかしな体制がソ連から今もなお維持され続けているのが不思議だ。
Posted by ブクログ
今年のベスト本。もしかしたらオールタイムベストに入るかもしれない。
冒頭の写真。
毒物を顔にかけられた直後。両手と顔が緑色になり片目がふさがっている。これには衝撃を受けた。
そして、純粋に読み物として面白い。
文章は読みやすく、とんでもない状況なのにユーモアにあふれているところがいい。
情報が少なく(プロパガンダばかりだし)よく分からないロシアという国を、中の人がソ連時代から解説してくれているような面白さもある。
読んでしまったからにはもう戻れない。
ニュースの見方や世界観がガラッと変わった。
Posted by ブクログ
残念ながら亡くなってしまったナワリヌイ氏なので、とても、読み進めるのが辛い本となった。
プーチンによる暗殺(未遂)やウクライナ侵略などなど、本当に許せない話ばかりだが、結局トランプは許してしまいそうな情勢(2025年2月時点)
ロシア国民に向けてではなく、プーチンに報いを受けさせたいが、、、叶うのだろうか。。。
新聞記者に記事を書かせたり、討論会を開いて人を集めたり、株主になって株主総会で発言したり、YouTube、Instagramを有効活用したり、、、
プーチンにとっては早く殺したくて仕方なかったのだろうけど、西側諸国や国連、各種人権団体が、彼を救うことはできなかったのだろうか、、、、あまりに辛い。
韓国だったら、ナワリヌイ氏の作った汚職暴露動動画一本だけで政権交代、大統領を失脚させられると思うけど、、、ざんねんです。。
Posted by ブクログ
現代の、現実の人間のお話なのですね。
アレクセイ・ナワリヌイさんについて、映画なども出されていたそうですが、正直私は名前ぐらいしか知らなかったので、すべて無知から読んだために、消化に少し時間がかかるというか、でも結末を知っているとなると、どう読んだらいいのか、どう受け止めたらいいのか、という具合でした。
学生の頃の単位取得のお話など、社会の隅々にまで浸透している汚職のしきたりが、自身の体験を持って共有されていて、
それがフィクションの伏線だったらいいのですが、
本当に皮肉だなーというか。
そして、何度も逮捕され、プーチンという恐怖政治家を敵に回してまで本当にここまでよく活動し続けられたなーと、想像を絶する。まずそもそも文章の口調がかなり明るめというか、前向きなのでなんだか次元が違う方だったんだと思いました。
彼を助けられなかった私たち、この世界、これが現実なんだとも知る。
これを読んでてスノーデンさんの本『独白』を思い出しました。
彼はアメリカ政府から逃れるためにロシアに移住されていた。
スノーデンさんの場合、アメリカ国内の支持者自体は身の危険には晒されない分、何か状況が違う気がする。
恐怖政治は死を覚悟して臨み、それでも屈しないなんてどうしたらできるんだろう。
・・・
ナワリヌイさんの止まることを知らない活動の数々。
モスクワでのディベート討論会の開催、
ライブ・ジャーナルのブログでの発信の数々、
国営企業との株主総会を通しての闘い。
ブログでは、当時流通が始まったインターネットが検閲を避けらる空間であったことを利用し、プーチン政権が汚職を基に成り立ってることなど、論稿を投稿し続けてきたそうです。 2014年に政府に閉鎖されますが、その当時には2000万人の訪問者があったそうです。
2011年に設立した反汚職基金。透明性、普遍性を基本原理に掲げ、活動。
エリツィンの娘夫婦が保有する別邸についてや、
トランスネフチというロシア最大のパイプライン企業会計監査の改竄など、
情報を収集し、表に出していく。
裁判沙汰にもなるのですが、掲載されているイブ・ロシェ裁判での最終陳述が掲載されている。
__毎日何十人もの詐欺師が我々の金を巻き上げているというのに、あなたがたは知らん顔だ。そして国民はそれを許している。こんな筋の通らない話があるだろうか。私はこの状況に耐えるつもりはない。もう一度言う。裁判にかけられようが、かけられまいが、いつまでもあきらめることなく、毅然とした態度で臨みたい。この人生にはもっと大切なことがある。
2013年の市長選出馬、
2018年の大統領選出馬準備、
2020年のノビチョク事件は、他候補の選挙活動期間のことだったそう。
その後、ドイツ療養を経て、
2021年1月にロシアに帰国となりますが、入国時に逮捕される。
いろいろな罪で刑罰が下され、その当時の日記も後半3分の1ほどに収録されています。
2024年2月16日、極東の収容所で殺害された、とのことです。
それでも彼は、たくさんの希望を具体的な形で残していると感じる。
__私は今回実施された選挙には参加が許されなかったが、この選挙運動のおかげで、私たちのムーブメントは新し い段階に進 んだ。地方に設立した各本部のネットワークで、 真の野党勢力が永続的に活動を続けられる構造が-できあがった。つまり、 どんな都市であれ、 避挙に参加して勝っために、市民を抗議デモに動員できる新しい体制が築かれたのだ。
この本もそうだと思う。彼はこう告げる。
__「未来の美しいロシア」は絶対に築くことができるということだ。その実現のために闘わなければならない。私のストーリーはこれからも続く。たとえ私や私の仲間や反体制派の協力者たちに何が起ころうとも、ロシアが豊かな民主主義国家になる可能性は決して消え失せない。嘘と汚戦にまみれた邪悪な現政権は消えてなくなる運命にある。夢は現実に変えられるのだ。
悲惨と希望に満ちた世界とともに、今年も地球が太陽を一周しました。