あらすじ
音のない世界でも、きっとメッセージは届くから──ろう理容師を祖父に持つ若手作家。その半生を描こうとする姿が胸に迫る傑作小説!
日本の聾学校ではじめてできた理髪科を卒業した第一号であり、自分の店を持った最初の人。そんな祖父を持つ五森つばめは、3年前に恋愛小説系の文学賞を受賞してデビューした。だが、その後自分の目標を見失い、2作目が書けないでいた。そんな折、デビューしたところとは違う出版社の編集者から声を掛けられ、祖父の話を書くことを強く勧められる……。ろうの祖父母と、コーダの父と伯母、そしてコーダの娘の自分、さらには聾学校の先生まで。三代にわたる希望をつなぐ取材が始まった。
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Posted by ブクログ
日本初のろう理容師・五森正一の半生と、その孫でスランプ中の作家・五森つばめの成長を描いた小説。
つばめは3年前に恋愛小説でデビューしたが、2作目が書けず悩んでいる。
編集者の提案で、祖父・正一の物語を書くことを決意。
正一は大正時代に生まれ、2歳でろう者になり、日本初の聾学校理髪科を17歳で卒業。
差別や偏見、優生保護法など厳しい環境の中、徳島で理髪店を開業し、家族を育てた。
つばめは疎遠だった祖母・喜光子(ろう者)、父・海太(コーダ)、伯母・暁子(コーダ)、聾学校の教師や支援者への取材を通じ、正一の信念や家族の苦悩、愛を知る。
喜光子の過去の秘密や、コーダの父が抱えた葛藤、阿波踊りでの心温まる再会を通じて、つばめは「伝えること」の意味を見出し、作家としての覚悟を固める。
3世代の想いが繋がり、ろう者の歴史と普遍的な人間ドラマが描かれる。