【感想・ネタバレ】マリアージュ・ブランのレビュー

あらすじ

恋愛感情はない。手を繋いだこともない。世界で一番気の合う、大切な友人と結婚している――男女の新しい在り方を鮮やかに描いた長編小説! 夫婦としてつつましく暮らしている31歳の奈穂と尊。元同級生で、記念日も忘れずに祝い合う仲の良いふたりだが、性交渉はもとより、恋愛感情も存在しない。友人関係だったふたりは、経済面や体裁面でのメリットから婚姻関係を結ぶことを決めたのだった。恋愛感情に振り回されない、淡々とした暮らしに満足していた奈穂と尊だが、少しずつ二人の関係に綻びが生じて――。

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Posted by ブクログ

ネタバレ


この本を読んで、愛というのが実に多様性に富んだ概念なのだと感じた。菜穂と尊に性的な触れ合いはないけど、嫌なことがあった夜は一緒に寝て、この人は絶対に味方でいてくれるっていう大きな安心感を感じられるなんて、これを愛と言わずして何を愛と言うのか!と思った笑
愛を感じたシーンはいくつかあった。例えば尊がガレット・デ・ロワの人形が菜穂にあたるようケーキを配分するとか、それに気づいた星夜が悲しいと感じたこととか。砂村さんは本当に、人が人を想うときの愛おしさや痛みの描写が繊細で、読んでいてとても引き込まれる。

そして、どんなセクシャリティでも分かり合える普遍の感情というのは、確かに存在するんだなと思った。例えば、菜穂が男に襲われた時に尊が感じた怒りや焦燥感、星夜が尊に向ける好意に気づいた時に菜穂が感じた独占欲みたいなもの。性的な触れ合いを必要としない人だって、その人が好きで自分のことだけ見ていてほしいっていう気持ちは持っているんだと感じた。勝手にアセクシャルの人は淡白だと思っていたけど、何も激情は性と結びつかないところで生まれることだってあるんだ。

アセクシャルの人って、他人と違うという感覚があって、だからこそ同志を見つけた時に強く惹かれ合うのかな?性欲がない分、きちんとその人自身を好いているような気もするけど、一体どうなのだろうか?色々と疑問が湧く。

マリアージュブランは、フランス語で偽装結婚という意味らしい。最初は少数派のセクシャリティを持つカップルだから偽装結婚なのかと思ってたけど、よくよく考えたらなんで偽装なんだろう?だって、性的な触れ合いを好まない夫婦だっているだろうし、子どもを持たない夫婦だっている。何が真で何が偽りかなんて明確な基準はないのに、結婚したら性的な関係を持って子どもを産むのが一般的だから、偽装だと言われるのは息苦しいと思う。この本を読んだ後は、セクシャリティが違う人でも互いを想う気持ちは持っているし、相手を想うあまりに激情に駆られることだってあるんだって思ったから、二人の関係を外から真か偽かなんて決めつけないでほしいと思った。愛の表現は、夫婦の数だけあるのだと思う。

寂しさを埋めて、ままならない低空飛行の日常をなんとか生き抜く二人の姿はとても親しみやすくて、性的嗜好の違いとかをあまり意識せずにすとんと読むことができた。

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2025年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

結婚とはなんだろう。
本作は友情結婚?に近いのかもしれないけど、ラストの章を読んで、身体的なつながりがないとしても、それは愛情がないということにはならないと思えた。

子どもを望むならどうするの?とかいろいろ課題はあるかもしれないけど、このような結婚も良いのかなと思う。

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2025年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【あらすじ】

恋愛感情はない。手を繋いだこともない。世界で一番気の合う、大切な友人と結婚している――男女の新しい在り方を鮮やかに描いた長編小説! 夫婦としてつつましく暮らしている31歳の奈穂と尊。元同級生で、記念日も忘れずに祝い合う仲の良いふたりだが、性交渉はもとより、恋愛感情も存在しない。友人関係だったふたりは、経済面や体裁面でのメリットから婚姻関係を結ぶことを決めたのだった。 恋愛感情に振り回されない、淡々とした暮らしに満足していた奈穂と尊だが、少しずつ二人の関係に綻びが生じて――。


『独身とは、人生の未完成な状態なんだろうか。』

『簡単に結婚しろとかいうけれど、男性に人生の主導権を明け渡してしまうようですごく怖いの。』

『学校で毎日顔を合わせていられる日々とは異なり、卒業後も友達を続けるというのはエネルギーのいることだ。互いに意識して定期的に連絡を取り合い、顔を合わせる機会を設けていかないと友情はだんだんそれぞれの新しい人間関係に上書きされていってしまう。』

『この人は、わたしを粗末に扱わない。』

『人間はやっぱりひとりでは抱えきれないように設計されているんだと思う。この世界はあまりにも複雑だし、大人になればなるほど重い荷物は増えていくでしょ。だからやっぱり支え合うために結婚ってもんがあるんじゃないかな。』

『自分のための言葉は、自分で選び取りたい。』

『自分の痛みにばかり敏感な人間は、もしかしたら自分も誰かの足を踏んづけているかもしれないっていう可能性に気づきにくいんじゃないか。』

【個人的な感想】
普通ってなんだろう。結婚ってなんのためにするんだろう。と思っていた私にぴったりの作品だった。
結婚しなくてもいいと思っていたけど、結婚って悪くないのかも?と思わせてくれた作品。

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2025年05月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現時点で今年一番心に刺さった。
自分自身どちらかといえば奈穂や尊寄りだと思っているからかもしれない。
恋愛や結婚をしなきゃ!なんて思わないし焦燥感もないしそこを軸に据えるつもりがない、という点においてだけど。

ただ、かつて普通の恋愛に身を置いてみようと思ったのはともかくそこで相手の言い分に疑問を持てど対話するでもなく能動的にはほぼ一切動かないで身のうちに我慢だけ重ねて相手がブチ切れたらトラウマ負いました!とかちょっと二人とも自己中ではあるよな。
お互い同士ではうまく付き合っていけてるんだし、単純に相性の問題のようにも思った。
っていうと作中の表現の問題になってしまいそうだけど、相性よくても子どもどうするかでぶつかるだろうしな、でもそれだって恋愛する男女だって価値観違うわけですし、とか色々考えた末たどり着くのは作中でも出てくる「グラデーションのどこかに立っている」。
すべてそこに行き着く気がした。

最後にすっごく横道逸れるけど、星夜がとにかく嫌いで出てくると読むの遅くなったなぁ笑
猫に自分の名前つけろって冗談でも言った時点で「うわこいつ絶対メンドーな男じゃん嫌い」って思ったら案の定だったもんな。

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2025年03月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いやあ、面白かった。オンラインフランス語講師の奈穂と花屋のアルバイト尊が、恋愛感情もなく、性的接触もないまま結婚する話。現代風の少女漫画が小説になったような雰囲気を感じた。従来の夫婦像からかけ離れている結婚生活を送るのが、フリーランスの妻とアルバイトの夫の二人であるということも、この働き方を選択している時点で、一世代前の人たちとは価値観が違うんだろうなあという意味で「らしさ」を感じる。

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2025年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

世界で1番気の合う、友人と結婚しているという見出しに惹かれて読み始めた。性交渉なしの夫婦生活を送る菜穂と尊の日常を描く。結局こういうのって、嫉妬とかがきっかけで恋愛感情が生まれるのが鉄板ですからね、と思いながら読んでいたが結論からいうとそうではなかった。それが、よかった。そうではなかったのだが、物語の終盤で尊が菜穂を助けるシーンがあって、そこがカッコ良すぎてときめきました。
ホモソーシャル的会話に嫌悪感を抱く尊。子どもを産み育てる女性たちの会話についていけない菜穂。男って、女ってこうでしょ?的な世間の風潮からはみ出して、生きづらかった2人が再会して、安寧に過ごせる2人だけの場所があることが、どれだけ幸せなことであろうかと思った。同性とか異性とか関係なく、というのは理想論なのかもしれないが……自分の嫌なことをしないでくれて、つらいときはただそばで寄り添ってくれる人がいることの幸せを感じる一冊でした。

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2025年05月17日

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