あらすじ
権利の都合上、紙版と内容が一部異なる部分がございます。
気鋭の脳科学者が挑む「音楽とは何か?」。知的刺激に満ちた音楽理論書。・脳科学者が音楽のしくみ・存在意義を科学的に掘り下げる。・音楽家・音大生他、音楽を愛する全ての人に。・「音階/音律の成り立ちに関して、本書がもっとも理にかなって分かりやすい」(ピアニスト・角野隼斗氏推薦)。「音楽の仕組みや存在意義に根本から科学的にアプローチした本書は、多くの演奏家にとっても気づきの多い内容だと思う。音階/音律の成り立ちに関して沢山本を読んだが、本書がもっとも理にかなって分かりやすい。脳科学的な「緊張と弛緩」の話は、全ての時間芸術において成り立つと思う」(ピアニスト角野隼斗氏推薦文より)。 脳科学者が挑む、音楽とは何か? 耳の構造から音を読み解き、なぜドレミ音階なのかを経て、音楽の誕生を考察。物理学、心理学、脳科学的視点から重層的に「音楽」を探求する流れは、知的刺激に満ちて感動的。
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Posted by ブクログ
音楽の不思議はだれもか思っていることなんじゃないかと思うけれども、
こんなに解像度を上げて考えたことは無かったので、とても新鮮でした。
ピアノを最近独学的に始めて、楽譜とか音楽の理論は全く知らない中で生きてきた。
誰もが毎日触れるような、みんなにとってこんなに身近なものなのに、
四則計算や言語と違って、みんなが共通に学ぶ基礎知識基盤はそこまで固くなく、
音楽の授業会ったけど結局歌って、リコーダー吹いたぐらいしか覚えていない。
つまり、音楽は、なにげなく、感覚で触れてきた。
かといって、この本にあるように、
音楽理論が、科学の法則のように存在するわけではなく、
慣習法のようなもの、だと理解した。
「どのように音を使うとどのような音楽的な意味を持つか、という音と音楽を結ぶ基本原則をまとめたもの」。
で、音楽を作る、音とは何か、についてから始まる。
音は物理現象ではなく脳で生じる感覚、とのことで、
音の感覚の3要素が、大きさ、高さ、音色(大きさと高さ以外!)
耳の物理構造と音の高さとかについての情報需要の話もおもしろかったなー。場所符号化、と時間的符号化。
音階の性質、つまりキャラみたいなものだという話も。
ドは主音キャラ(トニック)
ソは属音キャラ
シは導音キャラ
ファは下属音キャラ(サブドミナント)
レミラは脇役キャラ
非音階音 臨時キャラ 強い変化で明確な不安定を一瞬引き起こす
転調や移調で主音を変えると、すべての音高の機能がシフトする。
で、音名CDE…と音階ドレミ…の言い方の違いについては、
CDE:カレンダーの日付のようなもので、絶対的。
ドレミ:今日、明日、のように、主音を基準とした音高、つまり相対的。
ハ長調のドはC、ヘ長調のドはF
音の生まれる順番、について考えたことは無かった!
ド、ファ・ソ、シ・レ、ミ・ラ…. とか?音に命を吹き込むような。
そもそもなんで7つの全音が生まれたのか、それについては合意された理論がない中、筆者の考えも紹介されていた。
3条件(旋律のために広い音域を避ける、和音のために協和的な音程を優先する、音楽の複雑性への欲求のために音階音の数を増やす)を満たす過程で、
調性音楽に適している、という条件でドレミファソラシドが選ばれた!?
協和と不協和、和音、オクターブ等価性とかは、
少し難しかった。
実際あまり自身で音楽を、和音を、意識して音を奏でたり楽譜を見たり音楽を聴いたことがないので。
‥
繰り返しと変化で織りなされる音楽を通して私たちが行っていることは、
適度な情報量で適度な緊張を生み、適度な緊張の後に弛緩に戻ることで心地よさをを感じること。
音の強弱(ダイナミクス)、リズム、テンポで脳への物理的な刺激量を増減する。
ピッチ(音高)の変化-基音から離れると、緊張が高まる傾向。
旋律(メロディー)…これは複雑。
楽曲を組み立てる旋律や和音などが織りなす構造のあり方(テクスチャー)があり、
その中でも協和や不協和を感じる。
音が縦に重なった和声的音程の響きの不協和を、感覚的不協和、
音と音の時間的な前後関係から感じられる不協和を、文脈的不協和、
があるらしい。
音楽に限らず、
動物の脳の目的は、感覚入力の予測しにくさ(驚き)を最小化するように脳の内部モデルと行動を最適化し続ける、という自由エネルギー原理(カール・フリストン)があって、
音楽で適度な緊張が肝要なのは、内部モデルの修正に成功する程度であるから、と解される。
著者が全体を通して強調する音楽の機能ー心を動かす。
アリストクセノスは、
ピタゴラスのように数字だけ見るのはもっとも珍妙にして減少に反した理論。音波ではなく、心の働きである音にこそ注目すべき、と説いたという。
音楽とは何か、を明確に定義することは難しいけれど、
音を介して聴衆の心を動かす、ことが音楽の本質であること、
だから、
_拍や音階があるかどうかという手段より、これらの音の集まりが緊張や弛緩の心の動きを起こす情報を伝えているかどうか、ということこそが問題
とのこと。
音楽は、私たちの表現の可能性でもあるのかなー。
意味と言葉を切り離せる、翻訳もできる言語と違って、
音と音楽は切り離せない。
音楽をする際の脳の使い方も、人によってそれぞれで、
音楽を通して脳の動きを豊かにできることもあるのだろうと思ったり、
まあそんなことはそこまで細かく知らなくとも、
不思議とみんなが楽しめるのが音楽の良さなのかもなー。