あらすじ
権利の都合上、紙版と内容が一部異なる部分がございます。
気鋭の脳科学者が挑む「音楽とは何か?」。知的刺激に満ちた音楽理論書。・脳科学者が音楽のしくみ・存在意義を科学的に掘り下げる。・音楽家・音大生他、音楽を愛する全ての人に。・「音階/音律の成り立ちに関して、本書がもっとも理にかなって分かりやすい」(ピアニスト・角野隼斗氏推薦)。「音楽の仕組みや存在意義に根本から科学的にアプローチした本書は、多くの演奏家にとっても気づきの多い内容だと思う。音階/音律の成り立ちに関して沢山本を読んだが、本書がもっとも理にかなって分かりやすい。脳科学的な「緊張と弛緩」の話は、全ての時間芸術において成り立つと思う」(ピアニスト角野隼斗氏推薦文より)。 脳科学者が挑む、音楽とは何か? 耳の構造から音を読み解き、なぜドレミ音階なのかを経て、音楽の誕生を考察。物理学、心理学、脳科学的視点から重層的に「音楽」を探求する流れは、知的刺激に満ちて感動的。
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Posted by ブクログ
音楽と脳に関する本のうち、比較的一般向けのものをいつか読みたいと思って、この本を書店で繰り返しチェックはしていたが、今回やっと手に取って読むことにした。音楽理論というか、そういうものを分かりやすく解説してくれて、そして後半にいくにしたがって脳機能との関連を解説してくれる。随所に、関連した音楽サンプル(YouTube動画)へのアクセスQRコードを、譜面等と合わせて示してくれているため、筆者が説明したい内容が具体的に伝わってくるのが、大変役に立った。他にも「音楽と脳」に関連した本を読みたいと思っているので、ここから手を広げていきたい。
Posted by ブクログ
全章とっても面白い。めちゃくちゃ分かりやすい。
特に、"旋律→和音→不協和音の登場"の流れを知ると、現代クラシックの理解できない複雑さもいずれ耳慣れて楽しめるようになるんだと思えて、未来にワクワクする。より音楽が好きになった。
Posted by ブクログ
難しかった。でも、とても面白かった。
音階の成り立ち、耳の構造、神経→脳の構造、音楽と言語の違いなど、あらゆる角度から音と音楽を切り刻んで解説されていた。
正直言って各章の後半はどれも難しく、理解できなかった。しかし、次の章の冒頭になれば、また簡単な解説から始まるので、なんとか読めたという感じ。しばらく時間をおいてから、また挑戦したいと思う。
Posted by ブクログ
大雑把にまとめれば、これまでの音楽理論で言われてきたことを、心理学や脳科学によって説明し直した本なのだが、その射程がすごい。
最終的に、音楽とは何かを考えようとしているのだ。
まず音とは空気の振動ではなく、人の耳に入って脳に知覚された感覚のことだということから話が始まる。
音の説明として、音波の形や振幅などを取り上げていくものはこれまでにもいくつかの本で目にしていたが、本書ではその音波の振動が耳の中で処理され、電気信号となって脳に伝わっていくかが説明されていく。
脳科学的な説明が加わることで、経験的に知られていることの理由がわかっていくことが面白い。
例えば、一オクターブ離れた音が同じ音と認識される(オクターブ等価性)ことの理由は、耳の蝸牛にある組織であり、音波の振動を感じて神経伝達物質を放出する基底膜の反応から説明できるらしい。
神経細胞の集合の発火パターンが、整数倍の関係にある周波数同士で似ているからだそうだ。
また、臨界帯域(一つの周波数に対して振動する基底膜の範囲を周波数に換算して表現したもの)の幅が、音の分離や、全音の決め方に関わっているとか。
さらに、臨界帯域は低音部で広く、高音部で狭いため、ピアノ上で同じ一オクターブ離れた音程でも、高音域ほど変化の幅が大きく聞こえることにもつながるとも。
こうして全音が規定されると、今度は音階がどう生まれるのかが、今度は聴覚心理学を用いて説明される。
一オクターブの中をどう区切るか。
筆者は三つの前提を作り、その三つの塩梅のいいところで現在の7音から成る全音階ができた、と説明する。
前提1 旋律のために広い音程を避ける
前提2 和音のために協和的な音程を優先する
前提3 音楽を複雑化できるよう、音階数を増やす
このあたりになると、ややどうかな?と思う部分もある。
自分も詳しくは知らないが、アラビア音楽などは全音の四分の一の音程を持つと聞いたことがある。
電子楽器(キーボード)でも、四分の一の音程が出るとも。
和声をあまり重視しないのか何なのか。
自分でも機会があったら調べてみたい。
そのあとは和声や楽式論を情報学から説明していく。
緊張と緩和の話に、クロード・シャノンの情報量(起こる確率の低いものほど情報量が多い)の考え方を持ち込んで説明する。
一つの音階の中でこの音、この和音が来るのは起こりにくいから緊張につながる、などと説明されることとなる。
繰り返しが緩和につながるなどというのも、経験から考えてもわかりやすい。
このあたりから俄然読みやすくなっていく。
最後に脳科学の話がまた帰ってくる。
音楽を表現したり、聞いたりするための特定の部位(音楽野)はない、という話だった。
むしろ驚いたのは部位が限定される言語野の方を特殊だと考えるべきだということ。
そうそう、「音楽とは何か」という問いには、筆者は言語との対照によって答えていた。
単語とモチーフ、統語と旋律、韻律など、言語と音楽には類比できる要素があるが、両者の大きな違いとは翻訳可能性だ、という結論。
おお、そういう方向へ行くのね。
驚くほど多領域の議論を参照しながらまとめあげていくのが見事だった。
いろいろ勉強になった一冊だった。
理系の人ならもっと、すっと読み進められるのかも。
Posted by ブクログ
音楽の不思議はだれもか思っていることなんじゃないかと思うけれども、
こんなに解像度を上げて考えたことは無かったので、とても新鮮でした。
ピアノを最近独学的に始めて、楽譜とか音楽の理論は全く知らない中で生きてきた。
誰もが毎日触れるような、みんなにとってこんなに身近なものなのに、
四則計算や言語と違って、みんなが共通に学ぶ基礎知識基盤はそこまで固くなく、
音楽の授業会ったけど結局歌って、リコーダー吹いたぐらいしか覚えていない。
つまり、音楽は、なにげなく、感覚で触れてきた。
かといって、この本にあるように、
音楽理論が、科学の法則のように存在するわけではなく、
慣習法のようなもの、だと理解した。
「どのように音を使うとどのような音楽的な意味を持つか、という音と音楽を結ぶ基本原則をまとめたもの」。
で、音楽を作る、音とは何か、についてから始まる。
音は物理現象ではなく脳で生じる感覚、とのことで、
音の感覚の3要素が、大きさ、高さ、音色(大きさと高さ以外!)
耳の物理構造と音の高さとかについての情報需要の話もおもしろかったなー。場所符号化、と時間的符号化。
音階の性質、つまりキャラみたいなものだという話も。
ドは主音キャラ(トニック)
ソは属音キャラ
シは導音キャラ
ファは下属音キャラ(サブドミナント)
レミラは脇役キャラ
非音階音 臨時キャラ 強い変化で明確な不安定を一瞬引き起こす
転調や移調で主音を変えると、すべての音高の機能がシフトする。
で、音名CDE…と音階ドレミ…の言い方の違いについては、
CDE:カレンダーの日付のようなもので、絶対的。
ドレミ:今日、明日、のように、主音を基準とした音高、つまり相対的。
ハ長調のドはC、ヘ長調のドはF
音の生まれる順番、について考えたことは無かった!
ド、ファ・ソ、シ・レ、ミ・ラ…. とか?音に命を吹き込むような。
そもそもなんで7つの全音が生まれたのか、それについては合意された理論がない中、筆者の考えも紹介されていた。
3条件(旋律のために広い音域を避ける、和音のために協和的な音程を優先する、音楽の複雑性への欲求のために音階音の数を増やす)を満たす過程で、
調性音楽に適している、という条件でドレミファソラシドが選ばれた!?
協和と不協和、和音、オクターブ等価性とかは、
少し難しかった。
実際あまり自身で音楽を、和音を、意識して音を奏でたり楽譜を見たり音楽を聴いたことがないので。
‥
繰り返しと変化で織りなされる音楽を通して私たちが行っていることは、
適度な情報量で適度な緊張を生み、適度な緊張の後に弛緩に戻ることで心地よさをを感じること。
音の強弱(ダイナミクス)、リズム、テンポで脳への物理的な刺激量を増減する。
ピッチ(音高)の変化-基音から離れると、緊張が高まる傾向。
旋律(メロディー)…これは複雑。
楽曲を組み立てる旋律や和音などが織りなす構造のあり方(テクスチャー)があり、
その中でも協和や不協和を感じる。
音が縦に重なった和声的音程の響きの不協和を、感覚的不協和、
音と音の時間的な前後関係から感じられる不協和を、文脈的不協和、
があるらしい。
音楽に限らず、
動物の脳の目的は、感覚入力の予測しにくさ(驚き)を最小化するように脳の内部モデルと行動を最適化し続ける、という自由エネルギー原理(カール・フリストン)があって、
音楽で適度な緊張が肝要なのは、内部モデルの修正に成功する程度であるから、と解される。
著者が全体を通して強調する音楽の機能ー心を動かす。
アリストクセノスは、
ピタゴラスのように数字だけ見るのはもっとも珍妙にして減少に反した理論。音波ではなく、心の働きである音にこそ注目すべき、と説いたという。
音楽とは何か、を明確に定義することは難しいけれど、
音を介して聴衆の心を動かす、ことが音楽の本質であること、
だから、
_拍や音階があるかどうかという手段より、これらの音の集まりが緊張や弛緩の心の動きを起こす情報を伝えているかどうか、ということこそが問題
とのこと。
音楽は、私たちの表現の可能性でもあるのかなー。
意味と言葉を切り離せる、翻訳もできる言語と違って、
音と音楽は切り離せない。
音楽をする際の脳の使い方も、人によってそれぞれで、
音楽を通して脳の動きを豊かにできることもあるのだろうと思ったり、
まあそんなことはそこまで細かく知らなくとも、
不思議とみんなが楽しめるのが音楽の良さなのかもなー。
Posted by ブクログ
小さい頃にピアノを弾いて、この音は悲しいとか、楽しい感じみたいな感情を味わった記憶がある。それ自体はテレビか何かで既に刷り込まれた映像と音のリンクを再現させただけかも知れないが、音楽には人間の感情を揺さぶる力があり、それが先天的なものなのかが気になっていた。本書が、脳と音楽の関係性を語ってくれると期待して読み始める。
正直、「面白いと思う内容」と「難しくてついていけない」という部分がある。面白いのは脳と音楽の関連性や音楽そのものの多様性について。難しいのは音楽理論の話。音楽については、ジョンケージの無音とかスティーブライヒとかハイドンの「びっくり交響曲」とか。本書にQRコードがついているので、そこからYouTubeを開いて実際に音楽を聞きながら楽しめる。
ライヒは現代音楽のジャンルのひとつであるミニマル・ミュージックの代表として、「繰り返しと変化」の解説てま紹介される。『十八人の音楽家のための音楽』という曲だが、私もよく好きで聞いていた。そこからYouTubeでザッピングしてMatthew Herbertを思い出す。どれも懐かしい。
そう、この懐かしさが何だったか。いつもながら、本とスマホを行き来する。残念ながら、音の記憶について詳しく述べられてはいない。だからこれが映像と関連づいて記憶されるから音楽に悲しさや楽しさが宿るのか、生まれつきのものかは分からない。ただ、経験的に赤ちゃんを見れば、そうした喜怒哀楽は生まれつき音楽に宿るという気もする。この点は本書でも触れられるが、音楽ではなく、音として捉えた場合、その大きさや重なり、波、リズムで快感や不快感を与える作用がある。
ー 感覚的不協和は、個々の音の知覚が原因の比較的単純な感覚ですが、文脈的不協和は、音と音の関係をどう捉えるかという脳による解釈がからむ、複雑で奥深い感覚です。そのため、文脈的不協和には、時代や文化や個人の音楽経験の違いによって感じ方に個人差が生まれます。
言葉は時に記憶から忘却されるが、音楽はいつまでも身体が覚えていて、思い出のインデックスになっている。今でもYouTubeで漁ってしまう時があり、最近は読書の妨げになるため、聞かない事も増えた。昔は聞きながら勉強もできたのだが。まだまだ、興味は尽きない。