あらすじ
欧州では、大都市も地方都市も、街の空間を再編し、多様な移動の選択肢を提示することで豊かな生活を実現しつつある。これはEUが提示した「持続可能な都市モビリティ計画(SUMP)」に基づく交通まちづくりの成果といえる。欧州の事例をそのまま日本には適用できなくとも、良いところを学ぶことで活力を取り戻せるはずだ。欧州における最新の取り組みと背後にある考え方、日本の交通政策の歴史的経緯を踏まえつつ、これからの日本に求められる具体的な戦略を提言する。
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Posted by ブクログ
自分の地元においても、公共交通の存続が話題に上ることが多い。今までは、採算がとれないのならば仕方がないという気持ちでいたが、本書を読んでからは、(車等の移動手段を持たない)交通弱者を切り捨てることになるだけでなく、地元の魅力を呼び込む吸引力さえも閉ざすことにつながり、消費が落ち込み、ついには自治体や街の総合的な力を落としてしまうことだと気付くことができた。
交通政策は、持続可能な社会のなかで総合的にとらえられるべき一つの課題であるが、本書では著者の欧州での実生活を踏まえた知見や、「持続不可能性」といった、ありそうでなかった視点で語り広げられる課題の見方が大変面白いと感じた。
公共交通の政策に関する成功例は日本にもあり、もちろん本書でも紹介されている。
経済学博士、工学博士の2名の共著となっており、両氏の交通政策に対する視座も学問の粋を越えてさらに興味深く、それでいて読みやすいものとなっているので、少しでも興味があれば御一読することをすすめる。
Posted by ブクログ
出羽守(でわのかみ)という言葉を聞いたことがあるだろうか?海外ではこう、よそではこうと、やたらと外部の情報や先例を引き合いに出す人を揶揄する言葉である。本書は、都市づくり、とりわけ地方都市の維持という観点でまさしく出羽守の様な書であるが、車社会が過度に進行し衰退が著しい日本の地方都市と、賑わいを見せる欧州の地方都市の違いを客観的に比較し、日本の未来のあり方を提起する良書である。高齢化や過疎化に伴い、日本の地方都市における公共交通は財務的に極めて厳しい状況に置かれている。民から官へ適度に移行しつつバランスを取っていくことに加え、LRTを活用し人々の動線を作り、交通という観点だけでなく街全体の経済を活性化する総合的な施策が求められていると言える。宇都宮のライトレールなどや富山の事例などを踏まえ、過度な車依存から脱却するための国づくりが今必要だ。