あらすじ
幽霊が見えて、数々の幽霊話を解決してきた太一郎の幼馴染みの巳之助は、浅草の道具屋の若旦那の太一郎とは対照的に、鬼も逃げ出すいかつい風貌で怪力の持ち主だ。なぜか深川の皆塵堂には、昔から出入りしていて、力仕事に重宝されている。
長屋のかみさん連中に魚を売る、気ままな棒手振りで、まるで女っ気がなかった巳之助は、札差の大店大和屋の、とびきりの美人女中お志乃に一目惚れ、なんとか嫁さんにもらいたいと願う。
誰がどうみても、お志乃は高嶺の花。皆塵堂の主、伊平次たちも面白がって、呪い話で手に入った藁人形を巳之助に手渡し、四日の内に次々交換して、お志乃さんにふさわしい価値ある贈り物に替えてみせることができたら、材木商鳴海屋のご隠居清左衛門にかけあってもらい、みんなで背中を押そう、と巳之助をけしかける。
藁人形がはたしてどこまで化けるのか、巳之助の涙ぐましい奮闘がはじまる。
そうこうするうちにも、皆塵堂には、次々と怪異話が舞い込んで……。
皆塵堂シリーズきっての強力キャラ、自称江戸一の猫好き、棒手振りの巳之助が巻き起こす一世一代の「わらしべ長者」奮戦記!
感情タグBEST3
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今回は、巳之助回。
いやー、いいやつだねぇ、顔は怖いけどw
猫好き仲間の彦兵衛さんとのやりとりも楽しい。
巳之助が、大好きなお志乃ちゃんに贈り物をするために頑張る姿、いいねぇ。一生懸命で好き。出された条件がわらしべ長者ってのも愉快だし。何をどう交換していくのか、わくわくしながら読み進めることができた。
最後のあの決断、かっこいいぞ。漢だねぇ。
それにしても、太一郎の猫を引き寄せる能力はほんっと羨ましい。
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元々がホラーのシリーズですが、だいぶ前からコメディ寄りにはなっていましたが、今作ではホラーがもうホント申し訳程度・・・よりさらに少な目。いやでも、もうもはやホラー的な要素を期待して読む人も皆無といってもいいシリーズだしなあ。自分もそうなので別にこれはこれで満足だったから問題なしです。
あとがきでも書かれている通り、巳之助主役ということでそもそもコメディ全開ではありましたけど。
でも最後の巳之助がちょっと潔いというかかっこよすぎませんかね?なんか話を畳むために無理にかっこよく描いた感がでてしまった・・・のは邪推でしょうか?
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皆塵堂シリーズ。個性の強いキャラが揃っているこのシリーズだが、今回は巳之助回。身分違いの美人女中に振り向いてもらう第一歩としてご隠居の清左衛門から出された課題が、藁人形から物々交換をして四日間で価値あるものに替えること。わらしべ長者巳之助バージョンである。
棒手振りの仕事をしながら皆塵堂に持ち込まれる怪異にも関わり、一つの事件ごとに品物を交換してゆく巳之助の活躍が楽しい。そして最後の決断はいい男すぎる。もうすでにホラー要素はほぼないが、面白かった。
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古道具屋皆塵堂シリーズ、13作目。
皆塵堂版「わらしべ長者」。物々交換のスタートは呪いの藁人形(!)から。作者曰く、巳之助回ということで、何時になくコメディ要素の強い回となりました。もうちょっとホラー味が濃くても良かったかな、と思わないでもないですが、長期シリーズの中にこういう回もたまにはあってもいいかも。
果たして、藁人形から想い人のお志乃さんに送る贈り物に辿り着けるのか。結末はまぁ、巳之助らしい、かな。何より猫ファーストで、強引かつ迷惑な言動をしがちな巳之助だけど、根は結構良い男なんだよね。そういうところを神様はちゃーんと見てらっしゃるということですね。
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安定の面白さ。
長く読んでるので、各々のキャラクターに愛着が出て楽しい。
今回は巳之助。どんどん怖いキャラになっていくけど、憎めない。太一郎はほとんどゲスト扱いだけど、もう仙人のような域になってた。
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シリーズ第十三弾。
怪力&コワモテ&自称"江戸一番の猫好き”の棒手振り魚屋・巳之助が、札差の大店〈大和屋〉の美人女中・お志乃に惚れてしまいます。
憧れのお志乃さんへの贈り物の為に、巳之助は〈皆塵堂〉の主・伊平次の提案(てか、思いつき)で“呪いの藁人形”から始まる“わらしべ長者”に挑戦させられる羽目に・・。
さて、巳之助はお志乃さんの贈り物に見合うモノまで交換することができるのでしょうか・・。
今年は巳年ですね!ということで(?)今回は巳之助メインのストーリーでございます。
高嶺の花であるお志乃さんへのプレゼントの為に“恋のわらしべ長者”に挑まされるわけですが、スタートが“呪いの藁人形”ってところがこのシリーズらしいですよね。
(はなから“無理ゲー”感満載w)
物々交換していく過程で〈皆塵堂〉に持ち込まれる怪異案件にも対応させられながらも(例えば幽霊のオジイにスパルタ蕎麦打ち指南をされる等々・・)、藁人形→笊→魚籠→酒→蝋燭→峰吉作の蝋燭台→天眼鏡・・と何だかんだでランクアップ(?)していく巳之助の奮闘ぶりをユルく楽しませて頂きました。
(ただ、何気に一番トホホな目に合っているのは円九郎という点は最近のお約束w)
そして気になる首尾のほどですが、最終章「最後に手に入れたのは」に描かれた結果を読んで、巳之助が「ただの顔が異常に怖い猫好きの乱暴者」→「男気溢れる性根が真っ直ぐないいヤツ」に株が上がりましたね~。
お志乃さんへの片思いがどうなるのかはわかりませんが、占いの卜仙先生も「お前さんに相応しい女が必ずいるから・・」と仰っていたように、いつか巳之助にも春が訪れるとよいな・・と思った次第です。
で、最終的なオチとして今回頑張った巳之助に「下駄神様」からの“ご褒美(?)”があったようで、とりま良かったのではないでしょうかね~。
因みに、著者・輪渡さんのあとがきによると、次回は「峰吉回」を予定されているということで、おおいに期待したいと思います~。
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〈古道具屋皆塵堂〉シリーズ第13作。
今回は作家さん曰く『巳之助回』。
体が大きく顔が怖くて、女衒だろうが借金取りだろうがお構いなしにやっつける、敵に回すと怖いけれど味方になってくれたら心強い。
女にはモテないが、簿手振りの営業先の主婦たちからはからかわれる。
友人の太一郎のように猫が寄ってくることはないが、江戸一番の猫好きで、江戸で知らぬ猫はいないほど。
そんな巳之助が一目惚れしているお志乃さんに、皆塵堂が買い付けた美しい小箱を渡すため、わらしべ長者のように藁人形から様々なものに交換してもらって最終的に小箱に見合ったものに交換できるかを試されることになった。
思いついたのは伊平次だが、判定するのは清左衛門。
巳之助は小物に見合ったものに交換してもらい、清左衛門から恋の後押しをしてもらえるのか。
単なるわらしべ長者方式ではなく、交換する相手がみな曰く付きの家に住んでいたり、最近おかしなことが起きているというのが皆塵堂シリーズらしいところ。
ただ今回は太一郎の出番はほとんどなく、『巳之助回』なだけにシリアスな展開にはならない。
蕎麦打ちに(というより蕎麦打ちを教えることに)情熱を燃やすおじいさんの霊
中に入っていると鬼が見える長持ち
男が女を折檻する姿が影にうつる行灯
紆余曲折がありながらも何とか物々交換していく巳之助だが、最後に交換してもらったものは…。
巳之助の豪快さと勢いと、正直さと人の好さと、様々な個性がたっぷり味わえる話だった。
そして彼を守ってくれているのは猫たち(鮪助含め)に加えて下駄神様もいたとは。
オチも含め、上手く繋がって面白かった。
だがシリーズ初期からするとすっかりホラー要素は薄れているような。
作家さんのあとがきでなるほど、確かに「古『道具』屋」らしい道具がたくさん出る話になっていた。
シリーズ作品一覧 ※はレビュー登録あり
①古道具屋皆塵堂
②猫除け ※
③蔵盗み
④迎え猫 ※
⑤祟り婿 ※
⑥影憑き ※
⑦夢の猫 ※
⑧呪い禍 ※
⑨髪追い ※
⑩怨返し ※
⑪闇試し ※
⑫捻れ家 ※
⑬藁化け 本作 ※