あらすじ
『サイボーグ009』生誕60周年記念企画! 辻真先、斜線堂有紀、高野史緒、酉島伝法、池澤春菜、長谷敏司、斧田小夜、藤井太洋、円城塔の9人の戦鬼が集結、豪華執筆陣による書き下ろしアンソロジー。
【収録作品(全9編)】
●辻真先「平和の戦士は死なず」
テレビシリーズ第1作の名エピソード、同題の最終回を、オリジナル脚本家が自らリメイク!
●斜線堂有紀「アプローズ、アプローズ」
原作屈指の名作「地下帝国"ヨミ"編」後日譚。サイボーグ戦士、誰がために闘う?
●高野史緒「孤独な耳」
003のバレエ公演にともない、001=イワン・ウイスキーが初めて故国に帰郷する。
●酉島伝法「八つの部屋」
ジェット・リンクはいかにして002になったか。ゼロゼロナンバー・サイボーグ誕生秘話。
●池澤春菜「アルテミス・コーリング」
その目と耳であるがゆえに、003=フランソワーズ・アルヌールが出会えた奇蹟。
●長谷敏司「wash」
60年にわたり戦い続けた004=アルベルト・ハインリヒ、過去の亡霊と再会。
●斧田小夜「食火炭」
張々湖飯店を見舞った奇妙な出来事が、006=張々湖を過去へといざなう。
●藤井太洋「海はどこにでも」
火星探査団救難船に潜入捜査中の008=ピュンマは、謎の事故に巻き込まれる。
●円城塔「クーブラ・カーン」
009=島村ジョーたち9人のサイボーグ。彼らは、楽園を築く者たちか。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アニメを見ていた人にとってはボーナスステージを読ませてもらっているような小説たちだった。
斜線堂有紀さんの『アプローズ、アプローズ』は地底帝国ヨミ編の続きから始まるので、あの後のジョーたちはと思うのが読めるのが良かった。
個人的に1番好きだったのは池澤春菜さんの『アルテミス・コーリング』
こちらはサイボーグ009をあまり知らなくても物語として楽しめる。もちろん知っていると最後などは「おっ」となる。
長谷敏司さん『wash』は今の時代の彼らはどう生きているのか、というような事が読めて興味深かった。
Posted by ブクログ
異能の戦士がチームを組んで活躍する、と言えば現代ではマーベル映画となるが、そんな先駆けが昭和の日本の“漫画”にある。
そう考えると“ウルバリン”なんて“サイボーグ009”の足元にも及ばない。
石ノ森章太郎の世界は、それだけでは無くどこか物悲しい。
仮面ライダーも然り、どこか“正義感”だけでは説明のつかない“悲しみ”を伴った設定が、正義=孤独を見事に表現する。
このトリビュートでは、当時アニメの脚本を手掛けた辻真先のノベライズに始まり、8人の現代作家が思い思いに創作する。
アニメを補完する物語や21世紀まで年齢を重ねた00戦士の様子などがあり、バラエティー豊かで飽きない。
また、各作家がメンバー達ひとりひとりを深く掘り下げ、009ジョーの脇役では無く主役として語る様子は“サイボーグ009”物語への愛に溢れる様子がうかがえる。
誕生から60年が経過した今でも、素材としての魅力が尽きない、ということだろう。
Posted by ブクログ
むちゃくちゃ面白かった!
読み終えるのが勿体なくて、間を空けてゆっくり読んだ。
それぞれの作家さん達は、サイボーグ009へ超リスペクトで作品を書いている。
どの作品も素晴らしく面白かった。
Posted by ブクログ
なかなかに愉しく読んだ文庫本ということになる。出会うことが叶って善かったと思っている。漫画に着想を得て綴られた小説を集めた一冊ということになる。9篇が収められているので、各篇毎に順次読み進めるというような感じで愉しんだ。
「石ノ森ヒーロー」というような表現が在る。この『009』を含めて、幾多の“ヒーロー”の作品を手掛けた石ノ森章太郎に敬意を表し、その創造物であるヒーロー達を呼ぶ言葉だ。
幾多の作品に親しんでいる自身としては、「石ノ森ヒーロー」というのは「期せずして得てしまった常人離れした能力を活かして闘う路を自らの意思で択んで行く」という特徴が在るように思っている。幼少の頃から親しんだ『仮面ライダー』がそういう形で、そして初登場の時期がそれよりも以前である『009』もそうである。『009』には少しだけ長じた小学生時代から親しんでいる。
『009』は色々な形で、何度も作品の休止と復活を繰り返し、結果的に石ノ森章太郎が最晩年辺り迄作品を創り続ける、または創ろうとしていた。聞けば、最晩年に「何とか描きたい」と構想を練り続けていたのがこの『009』の新作であったのだという。旺盛な活動を続け、夥しい作品を発表し続けていた漫画作家の石ノ森章太郎の「代表的作品」として、真っ先に挙げても差し支えないのが『009』ではないかと思う。
『009』は、世界の紛争に裏から介入し、非常識な迄の超科学で色々な兵器を製造し、人類を陥れるようなことをして利得を得ようとする「黒い幽霊団」(ブラックゴースト)が在って、「黒い幽霊団」(ブラックゴースト)が世界中から拉致した人間を改造し、様々な凄まじい能力を有してそれを駆使することが出来るサイボーグを産出し、自分達の活動に利用することを画策した。その企ての最初期に「00ナンバー」と呼ぶ一団が産出された。“001”から“009”の9人である。この9人の改造に纏わる事等に協力してしまった科学者のギルモア博士は、彼らを引き連れて「黒い幽霊団」(ブラックゴースト)を離れ、彼らの企てを挫かなければならないと考える。そして9人は闘う路を択んで行くのである。
こうして「黒い幽霊団」(ブラックゴースト)に関連する事案やその他の事案に向かう9人が描かれるのが『009』だ。各人が協力して総力で事案に立ち向かうという物語も、何人かが関わった事案に関して別の何人かが援けに行くという物語も、メンバーの誰かが出くわす出来事という物語も在る。そして時代のテーマや、人生のテーマが織り込まれる。常人離れした能力を有するサイボーグというSF設定と相俟って、色々と奇想天外な事案が展開する。そして9人が能力を発揮するアクションが在るが、9人と同等かそれ以上の能力を持つサイボーグ集団と対決するような物語も在る。そういう作品が長く送り出され続けていた。
本書はそうしたことを踏まえ、9人の作家達が各々に「トリビュート」として綴った9篇の小説を集めた一冊だ。過去の作品に見受けられた様々な形が巧みに組入れられている。過去の作品を踏まえて、その事後の事や裏側や側面というようなことを想わせる物語も在るが、過去の或る時期に展開した独立的な物語を創っているという作品も在る。更に「半世紀以上を経て」と、現代や現代に近い年代を想定し、そこで活動している9人に関する物語というのも在る。その現代や現代に近い年代の物語だが、「半世紀以上を経て」いても9人は陳腐ではなく、アップデートが図られており、更に「イマドキの…」という問題提起めいたことも含む「『009』というのはこんな感じ!!」という様子で凄く好い。
本書の各篇は何れも凄く好いが、個人的には赤ん坊の肉体に凄まじい頭脳と超能力が閉じ込められている“001”の目線で語られる1984年のレニングラードを舞台にした物語、全身の武器で戦う“004”が仲間達と共に「半世紀以上を経て」いても蠢いた「黒い幽霊団」(ブラックゴースト)の残党に立ち向かった物語、そして他界したギルモア博士の知識や人格に依拠したAIである“ギルモアシステム”に関連する事案に立ち向かう9人という物語が殊更に好かった。恐らく、読む方の数だけ、こうした「個人的に気に入った」が出て来る、秀逸な作品集になっていると思う。
石ノ森章太郎が他界して四半世紀を経ていて、『009』の最初の作品が登場して60年にもなるのだが、各々の背景と特徴を有する多彩な主人公集団を擁して様々な形の物語を綴った本作は非常に奥深く、存分にアレンジして「今日の世界」での物語にさえなり得る。改めて「作品の力」に心動かされる。『009』に懐かしさを覚える方、ファンを自認する方に限らず、作品を知らない方にも「過去の豊かな拡がりを有する作品の設定等を活用したSF的な描き方の、時代を問う長過ぎない作品」として本書の各篇を御薦めしたいというように思う。
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地下帝国ヨミ編の最終話のその後が書かれた話、002開発秘話、ギルモア博士亡き後の世界等、どの話も読み物としては面白く、脚本家の辻真先さん特別参加もあり、どれもゼロゼロナンバー愛に溢れていてよかったと思います。ジョー以外の面々にスポットがあたっていたのもよかった。現代に生きる彼らがアップデータされた姿には若干の違和感はあったもののAIやドローン等、納得できるものもあり成程なぁと。『クーブラ・カーン』とはなんぞやと思い概略をしらべると、「夢の中で見た謎の宮殿について書かれた詩」ということで納得でした。
Posted by ブクログ
1964年週刊少年キングで連載が始まった「サイボーグ009」のトリビュート小説。66年の週刊少年マガジン版と68年のTVアニメは熱狂して見ていた。66年の東映動画は最初の上映は見ていなかったが何度も再上映されたので2,3回は見ている。
ジェットが主人公でサイボーグ製造(育成)過程を描く「八つの部屋」、60年後のハインリッヒ、ブリテンがブラックゴーストの生き残りと旧東ドイツで戦う「wash」、ピュンマが火星往還船で活躍する「海はどこにでも(藤井大洋)」は独立したSF小説としても秀逸。ネットワーク・コンピュータ人格の一つであるシステム・ギルモアが環境改変計画に介入するとともに、高度サイボーグの再生産を図る。ジョーとフランソワーズが「後継ぎが欲しい、自分たちが地球を守り続けることができるのか」という問いを発して終わる「クーブラ・カーン(円城塔)」も秀逸。
Posted by ブクログ
原作ファンは必読。お気に入りは池澤春菜の『アルテミス・コーリング』。コノコに出会えたのは003のサイボーグとしての性能ばかりでなく、フランソワーズの優しさと豊かな感受性があったからと思いたい。9篇とも傑作
Posted by ブクログ
故石ノ森章太郎の不朽の名作『サイボーグ009』は、1964年に連載開始され今年で60周年。本書はそれを記念して企画された書き下ろしアンソロジー。00ナンバーサイボーグと同じ人数の9人の作家が、原作の設定を活かしながら、平和を願う「9人の戦鬼」の新しい物語を書き下ろしている。
特に、巻頭を飾る「平和の戦士は死なず」は、最初のテレビアニメにおいてメインの脚本家だった辻真先が、自らが担当した最終回を小説としてリメイクしているのだ。いまだに名場面として語りつがれている、009と002が宇宙から地球へ落下するエピソードだ。最初に観たとき、そしては原作を読んだときの感動が甦ってくる。
その他の作家も、それぞれの解釈で00ナンバーサイボーグの物語を紡いでいる。ファンなら必読でしょう。
Posted by ブクログ
執筆陣が非常に豪華。
どれも良かったが印象的だったのは『アルテミス コーリング』『食火炭』『クープラ ・カーン』
答えの無い問いへの近似解を悩みながら出し続けることへの苦悩、未来への希望は今に合っていると思う。
Posted by ブクログ
サンデーコミックの009が強烈な原点である自分。009という作品は、終わらせることなく、今もどこかで彼らが活躍している、というこの本のような作品が描かれるのがふさわしいように思う。ビュンママが宇宙で活躍したり、現在のハインリヒやブリテン達が活躍したりする話が良かった。