あらすじ
千葉の山中で発見された女性の死体。事故死か自殺と思われたが、彼女が直前までストーカー被害に遭っていたことがわかる。地元の名家の御曹司であるその加害者は、父親の権力を使って県警の上層部に圧力をかけ、取り調べも拒否し行方をくらませる。脅しに屈しない県警の一部と女性の遺族が立ち上がるが、銃撃事件も発生して事態は混迷するばかり。そして舞台は女性が死んだ山へと……。山岳×警察小説の傑作!
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Posted by ブクログ
同じ千葉県人ながら著者のことは亡くなられるまで存じ上げませんでした。
新聞に遺作として本書が紹介されており、千葉県の山の中で私が一番好きな伊予ヶ岳が舞台の山岳&警察小説と知って興味が湧き、積読リストに入れていました。
中盤までは警察組織の腐敗が酷く、犯人の確証はあるのに手も足も出ない感じに嫌気がさしながら読み進めましたが、ラストはそれなりにすっきりしたのでホッとしました。
また、実際に登ったことのある山なので山狩り(捜索)のシーンは必要以上にリアルさを感じてドキドキしました。
低山でも山の難しさはあって、千葉県の気候からくる森草木の濃度とかの描き方がとてもよかったです!
調べたら、著者は本格的な山岳小説も書かれているそうなので、他の作品も読んでいきたいと思いました。
ご冥福をお祈りいたします。
Posted by ブクログ
山狩という題名から、山を舞台に犯人を追い詰めることがメインの小説かと思って読み始めたけれど、実際に描きたかったのは警察内部のごたごたや裏社会とのつながりだったように感じた。実際小説の3/4くらいはそのあたりを丁寧に描いていて、犯人も分かっているのになかなか捜査が進まない。最後1/4くらいで山を舞台に一気に話が展開するけれど、犯人は山を舞台に逃げ回ったりするわけではなく、山狩で狩られるのは殺人を疑われる村松さんの方で、そっちなのかーとちょっと微妙な気持ちになってしまった。
最終的に犯人の親の犯罪まで表沙汰になり、怪しい組織が解体されるのはよかったけれど、もう少し山を舞台に犯人とのデッドヒートがあってもよかったかな…と思った。
Posted by ブクログ
千葉県の伊予ヶ岳の山頂で発見された女性の遺体。ストーカー被害を訴えた女性のものだった。事件を解明しようとする山下や小塚たちは、警察内部や外部の暴力団、地元の警察や暴力団と、癒着する企業に、捜査を阻まれるという四面楚歌の状態になる。
500メートル以上の山がない千葉県が舞台で、山岳小説という特異な一冊ですが、一般登山道というよりも獣道の様な人が寄りつかないような場所で、繰り広げられる逃走劇に、山岳小説というイメージが持てませんでした。
ストーカー事件にしても、宮部みゆきの模倣犯の真犯人の様に普段は知的な印象だけど、シリアルキラーぶりが目につくイメージがありましたが、この犯人は、計画的だけど、どこか杜撰だったりと掴みどころがないのも感想
警察と暴力団、地元暴力団の癒着にしても、後半の倫理を無視した警察のやり方についても、本当に屑だなと思ったり。それだけに、少ない警察の正義と言える山下や小塚たちの活躍が際立っていたなと思います。
Posted by ブクログ
笹本稜平『山狩』光文社文庫。
2021年に逝去した笹本稜平の最後の小説ということで大いに期待したのだが、残念ながら並みの出来であった。
地方の権利者による警察への圧力が正義を歪め、再び警察の正義を取り戻すために高い志を持つ警察官たちが立ち上がるという在りがちなストーリー。タイトルの『山狩』が少し浮いているような気がする。
家族と千葉の伊予ヶ岳で登山を楽しんでいた千葉県警生活安全課の小塚俊也は山中で若い女性の死体を発見する。千葉県警により事件性は無く、事故死か自殺と思われていたが、死の直前までストーカー被害に遭っていたことが判明する。
女性は村松由香子という24歳の女性で祖父が元警察官であった。由香子のストーキングしていたのは地元の名家の御曹司の門井彰久で、由香子が山に向かう時に付近で目撃されていたのだが、不審なアリバイ工作を行い、父親の権力を使って県警の上層部に圧力を掛けて取り調べを拒否し、行方をくらませる。
小塚は警察内部でも敵か味方か判然としない中、脅しに屈しない県警の山下正司、北沢美保と女性の遺族と共に真相解明に立ち上がる。しかし、銃撃事件が発生すると事態は混迷し、被害者の遺族も姿を消し、舞台は女性が死んだ山へと……
本体価格900円
★★★