【感想・ネタバレ】フェイクニュースを哲学する 何を信じるべきかのレビュー

あらすじ

他人の言葉,うわさ,専門家の発言,マスメディアの報じるニュース,ネット発のニュース,あるいは陰謀論……,私たちは瞬時に莫大な情報を手にする一方,時に何を信じたらいいのか,わからなくなってしまう.本書では,「知る」ことを哲学的に考察し,「真理を多く,誤りを少なく」知るための方法,そしてその意味を問う.

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Posted by ブクログ

フェイクニュースに関する本は多いが、哲学の方面から考えているのがユニーク。フェイクニュースとは何か、そもそも私たちは何を信じ、何を信じてよいのかについて考えることができる。

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分用読書メモ

フェイクの組み合わせ
【内容】嘘をつく、ミスリードを狙う
【意図】欺くことを意図、デタラメ(真実に関心がない)

デタラメは、pv数の増加やエンタメ性を狙う意図からフェイクを発信するため、内容が嘘か本当かに関心がない。それは嘘では無いか?と追求する議論の壇上に上がらずとも、チートのように発信できるため悪質。

嘘をつく動機
政治的な意図、経済的な意図、面白いことを発信したい

情報的依存:他人経由で情報にアクセス
認識的依存:入手した情報の正誤を自分で考える力

証言を信じる要素
一致性
誠実さ
能力条件

一致性:今までこの人は信頼にあたる言動をしてきたか現実では、その上で正誤を判断しやすい。が、ネットではアカウント削除などにより、経歴が見えにくく発信の責任が軽薄になりがち。
発信源と拡散してる人も正体が分からない

誠実さ:専門家や政治家など能力がある人であっても、意図があればプロパガンダやはぐらかしを言う。

能力条件:嘘をつく気がなくても、分野において知識のない人が「あれはミツバチかも」といってもスズメバチかもしれない
ネットの場合、匿名性から能力について正確な判断が困難

証言の不透明さ
訪問販売は嘘をつく動機が、企業の社員は偽証により信頼を失うリスクから、それぞれで信頼性が異なる。
現実では訪問販売は信じる理由があれば、企業社員は疑う理由があればと態度に差が出るが、ネットでは受け手は状況がどちらか判別しにくい


ネットの嘘の構造的な伝わりやすさ

拡散されるまで時間を要しない
現実では発信者が知人に伝える際に、相手と自分に労力がかかる点から正誤を確認する。伝えるか否かも判断し、やはり伝えなくていいともなる。
ネットは拡散に時間と手間がかからないため、その工程が省かれやすい

再投稿(RT)が容易
現実では噂を発信した人も広めた人も責任を伴うが、手間がかからないため拡散も早い

情報源が信頼できなくても大量にネタを入手できる


なぜ真実でない噂が作られるか
人は理解(事実を伴う)とも異なり納得を求める性質があるから。侵略者が現地人へ親切にした場合、認知的不協和から「彼は実は現地人だ」と噂を広める。
いわば、わかった!を求めている。この行為は事実を元にした人間の知的好奇心とは異なり、納得を狙いたい意図から生まれる。
なぜ地震が頻発するのか?に対し人工地震を理由とする人の中には、腹落ちを求める人とそもそも真実に興味が無い人もいる

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2025年01月31日

Posted by ブクログ

インターネット、テレビ、新聞、ラジオ、うわさなど多くの情報が氾濫しています。
その膨大な情報を、どうやったら信じてもいいものなのか、信じるのはよくないものなのか、その判断基準を考えていく本です。
インターネットでXやインスタグラムなどをリツイートして拡散する人の中には、それが真実だろうが嘘だろうが気にしていない人が多数いる、ということが、薄々は感じていましたが、改めて文章で掲示されると衝撃的なものがありました。
常に自分が知的な徳を忘れないで、情報に接し、発信しなければ、と思いました。

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2024年12月15日

Posted by ブクログ

ウィトゲンシュタインの名前が出てきてうっとなったが、それ以外はよい本だと思う。ある概念の条件を考える、みたいなのはやっぱり哲学者はうまい。

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

政治家たちが互いに「フェイクだ」と罵る応酬。
あるいは「選挙開票が操作された」という主張。
対岸の火事と思っていたけど、そうも言えなさそうな昨今。
本書を通して、フェイクニュースについて、考えるヒントを得たくて読むことにした。

哲学の研究者の本は、一つ一つ前提を明らかにしてくれるので、自分としては割と好きだ。
考えていなかった視座を知ることができたりする。

本書では、対面的なコミュニケーションの場面での条件を考察して、ではネット空間ではどうか、と話が展開する。
他人の証言を信じていいのか、噂を信じてはいけないのか、専門家を信じていいのか、そのうち誰を信じていいのか、マスメディアは信用できるのか、と進んでいく。

例えば、他人の証言が信じることができる場合の条件として、以下の三つをあげる。
①一致条件…過去のその人の発言がほぼ事実と一致している
②誠実条件…その人が誠実に証言している
③能力条件…証言内容について正しく証言する能力を持っている
現実的に、知り合いであっても全部を確認するのは難しいんではないか…と思われるのだが、一つの基準としてすっきりと提示してもらえた気がする。

こうした条件を、専門家に対しては、またマスメディアについてはどうか、という話になっていく。
専門家の場合は、論証の仕方と、その人物の過去の証言の記録をチェックすること、その人物と論題との間に利害関係がないことをチェックすること、その証言を支持する専門家の多さ、査定をチェックすることを提案している。
特に非専門家が論証をチェックするのは難しいが、それを他の専門家の評価で代替するということだ。
実行するのはとても手間がかかるとは思うが、実践的だと思う。

ポスト真実の時代。
世の中はそんなに事実であることに重きを置かなくなっているのか、と驚く。
そんなことを思っていると、終盤には陰謀論が取り上げられている。

陰謀論の大変なところは、外部がないこと。
陰謀の証拠があればもちろんだが、なくてもそれが陰謀の証拠となり、客観的に見ることができなくなる。
しかし筆者はこうした陰謀論が社会の開放性の一つの現れであるという説も紹介する。
そういえば、噂についても、理解や納得を人と共有したり、感情を正当化して他の人と共有するコミュニケーションの面での意味があるという説も紹介していた。
こうした指摘はまったく思いもつかなかった視点で新鮮だった。
で、陰謀論。
反駁・暴露・教育という三つの対処法を提示している。
これまた非常に辛抱強い取り組みになっていく。
家族が陰謀論にはまって苦しんでいる人にとって、救いとなるかどうか。

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2025年08月24日

Posted by ブクログ

20250727-0813 本書は2024年9月出版だが、これを読んでいる2025年7月現在、世間はフェイクニュースが当たり前のようにあるので、むしろその言葉を一時期より聞かなくなったような気がする。筆者は従来の知的権威の失墜を「知の民主化」というよりは「知のアナーキズム」ではないかという。その傾向は強まっているのではないか。
フェイクニュースはしばしば陰謀論と結びついていることも多い。陰謀論とに対抗するには、著者は3つの対処法があるという。反芻・暴露・教育を提示しているが、この中でも教育の重要性を筆者は説いている。ここで言う「教育」は情報教育のことではなく、より根本的な知的な徳の教育である。
それには時間がかかるかもしれないが、粘り強く積み上げていく必要があるのだろう。これは教育現場だけでなく、家庭、行政なども含めて対応する必要があろう。
本書は大変読みやすかった。哲学の専門的な解説は控えめだが、かえって興味を持った。

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2025年07月30日

Posted by ブクログ

フェイクニュース、陰謀論などがそもそもなんなのかって定義から始めるのが面白かった

雑にまとめるなら手放しで信じられる情報はないってことかな思う
また情報の確かさを検証する完璧なアプローチもなさそう
ただここから断定をしてる情報や発信者は怪しいと言えるので一つフィルターにはなるかなと思う

陰謀論のメカニズムである情報知ってることがステータスになりそれで他人を評価するって件は興味深い
誤った情報を知ることだけでも悪影響が出る場合もあるのか
真偽判定しようにも誤った情報を裏付ける情報にまた当たる可能性があるから難しい

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2025年03月06日

Posted by ブクログ

まず個人的な印象として、件の兵庫県知事選挙の後に読んだので、その内容に戦慄すら覚えた。
また、"陰謀論"に囚われて抜け出せない人に関する記事等もちょうど最近目にすることが多かったので、そちらも実にタイムリー。

序章から極力平易な言葉遣いで鋭い考察を飛ばしている。
決して革新的で真新しい提唱が為されているというわけではないが、私たちが日常、虚実ない交ぜとなった情報過多社会に生きる中で、なんとなく感じ取っていた曖昧模糊とした焦燥や煩悶を一つ一つ拾い上げて明瞭に言語化し、説明してくれている。
フェイクニュースという言葉自体は比較的新しいものだが、ここで展開されている論法は、例えば"人はなぜ占い(あるいはオカルトでも)を信じるのか"を考察する際に古来繰り広げられてきたそれと重なる部分が大きく、哲学や心理学と相性が良いことが理解できる。
政治的なポピュリズムに対し、"知的なポピュリズム"という概念を打ち出してきたことには、なるほどと深く頷いた。

一方でマスメディアの末端に身を置いてきた一人としては、第4章に差し掛かり神妙な面持ちとなる。
著者による客観的な分析がそこでは行われており、口を極めてオールドメディアの有り様を非難するようなものでは決してないが、これまでと比して劣化してきている面があることは否めない。
期せずして背筋がぴんと伸びていることに気付いた。

人文学に関する専門的な素養を持たない人にとっても分かりやすくしたためられた本書は、カオスのような世の中で意識的あるいは無意識的に"哲学"を用いて思弁する道への格好の入口となり得る。
答えは本の中ではなく、あなたの、私の、一人一人の中にある。

余談ながら著者は私の大学時代のクラスメイトであり、鬱蒼とした森に覆われた彼の下宿にぞろぞろと集まり、夜通しあれやこれやと口角泡を飛ばしていた日々が読みながら思い出された。
と言ってもほぼすべてが何の社会的意義もない単なる与太話であったが…。

「現在、多くの国や社会では、住民投票や選挙等の直接的・間接的な民主的手続きを通じて意思決定が行われている。しかしこのプロセスは、それぞれの社会の成員が政治的な問題に対する判断能力を具えていることを前提にするだけでなく、一人ひとりにある程度正しい情報が共有されていることをもまた前提にする。したがって、もしもこの前提が崩れるとすれば、民主的なプロセスそのものの信頼性が揺らぐことになり、決定された結果の正統性にも疑いの目が向けられることになる。」

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2025年01月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

哲学するということはあれこれ考えることであるからして、フェイクニュースについて時間をかけることを求めるものになるのは当然なんだけど。だんだんめんどくさくなってくる。ので、引っ掛かるのだろうなあ。

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2024年11月05日

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「そもそもフェイクニュースや陰謀論とは?」という哲学的、言語学的な解説がおもしろかった。まさに読者(非専門家)と筆者ら専門家と前提知識を共有するということだろう。結論も単に「情報の取捨選択をしましょう」というような良い子ちゃん風なものではなく好感を持てる。

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2024年10月18日

Posted by ブクログ

フェイクニュースという言葉を聞いたのは、2016年の米国大統領選挙の時のトランプ候補の発言だった記憶がある。インターネット時代で、真偽が分からないニュースが飛び交うようになっていた時代だからだと思うが、考えてみれば関東大震災の時の朝鮮人虐殺がそれによるものだったし、太平洋戦争における大本営発表もそうだった。昔から行われていたものだった。それがネット時代になるとともに、大きく注目を浴びたわけだ。しかしタイトル通り、フェイクニュースとは何ものなのか?必ずしも嘘ではなくても、真偽に拘らずに流すニュースが確かにあるし、その理由もさまざま。そして信じるとはどういうことか、噂は信じて良いのか、「専門家」は信じられるのか、マスメディアは信じられるのか、そして陰謀論とは何なのか?なぜ陰謀論を信じてしまうのか?陰謀論の定義は?など深みのある論説の集大成だった。カント、デカルトの言葉までが引用されるほど、哲学的な論証と言って良いだろう。

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2024年10月12日

Posted by ブクログ

よくここまで多角的に論じることができるもんだな、という感想。真っ当なことが書いてあり、学者品質で新書レベルに軽く深堀っており、リテラシー向上に資する。
『ちょっと新しいテクノロジーでさ、みんな惑わされたり消化不良に陥っているけどさ、人間の根っこは変わってないからさ、ちょっと立ち止まって冷静に自己分析してみようぜ。そのうち馴染むからさ、それまで流されたり踊らされたりしないようにさ、ちゃんと考えてこーぜ』という内容で、考え方のヒントが多角的に紹介されている本。
人類にとっては、マスメディアのルネッサンス、というステージなのかも、ですね。

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2025年03月23日

Posted by ブクログ

インターネットが発達して、良くも悪くも情報の扱い方が難しくなった気がします。

たしかに、結論を急がないことが大事なのかもしれません。

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2025年01月05日

Posted by ブクログ

書店で気になったもの。哲学的観点で、フェイクニュースの定義から語り起こされる。信用できる専門家の条件として、過去の証言の記録、利害関心とバイアス、同意する専門家の多さ、信念形成ルートの独立性ってのは、なるほど納得。全く目新しいって内容ではないけど、リテラシーの再確認にもってこいの一冊。

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2024年10月15日

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