【感想・ネタバレ】蔦屋重三郎の生涯と吉原遊廓のレビュー

あらすじ

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2025年1月放送開始のNHK大河ドラマの主人公は、江戸の吉原に生まれ育ち、吉原で培った人脈を糧にのし上がっていった蔦屋重三郎。そもそも江戸文化の発信地であった吉原遊廓は、いかなる場所で、蔦重はいかに吉原とよい関係を保ちながらうまく活用していったのか。本書は江戸・吉原が生んだ天才プロデューサー・蔦重の生涯を追うとともに吉原の歴史・文化を探っていきます。

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Posted by ブクログ

谷津矢車さんの『蔦屋』を読み終わった2日後に行った書店で、この本が新刊コーナーの前面に売られていて、ふと手に取りパラパラ眺めていたら、つい先日想像していた世界が目の前に現れて、蔦重や戯作者たちの声が聞こえてきて、遊女たちの想いも伝わってきて、店頭でぶわぁっと涙が出てきてしまったので慌てて閉じ、少し落ち着いてからレジに持って行った次第。はじめは買うつもりなかったんだけど。

オールカラー141ページ、4章あります。「蔦屋重三郎の生涯」、「蔦屋重三郎の吉原遊廓」、「遊女たちの生活」、「吉原の近代と現在」。前半は蔦屋重三郎の生涯と、絵師や戯作者たちの活躍、後半は吉原の歴史や表と裏など。

前半については、とにかく絵がどれも素敵。着物のしわや模様、部屋に置いてある物、草木などすべてが細かく描き込まれていて、絵師たちの画力の高さに感動。じぃーーーっと時間を忘れて見入っちゃう。喜多川歌麿の貝や鳥なんて、スゴイのひとことです。

また、恋川春町の「吉原大通会」を見ていると、それぞれの個性がよく伝わってきて笑ってしまうと同時に、なぜなんだろう、うれしいような切ないような気持ちになって、涙が出てくる。

他にも、北斎が描いた耕書堂の店先、「吉原細見」や戯作者たちが命をかけて書いた本の紙面、吉原の地図とその風景、またその一室で繰り広げられる宴会の様子などを見ることができ、当時の空気感がまるごと感じられます。

そして、何が感慨深いって、私の大好きな『居眠り磐音』シリーズと時代がガッツリかぶっていること! 本書を眺めていると、「磐音」に出てくる人たちの存在を感じるんですよ。磐音と交流のあった北尾重政の絵もこの本で見られるし、吉原会所の四郎兵衛さんもここにいたんだなぁ、とか、そもそも蔦重もちょっとだけ登場するしね、もう感無量なんです。

後半の、吉原遊廓の歴史とその裏表なども、今までずっと知りたかったことが絵や図によってひと目でわかって感動。妓楼の中の図などじっと見ていると、遊女や客、そこで働く人々など、大勢の姿が描かれていて、ワイワイガヤガヤ、さまざまな物音や声が聞こえてくるよう。すごく生き生きしてる。年中行事や催しもあり、桜が満開の仲之町を、私もこの目で見てみたい、歩いてみたいと思いました。

でも一方で、華やかでにぎやかで楽しそうな風景の裏に、遊女たちの苦しみ、哀しみもあります。そこもちゃんと書かれています。だからここでは、磐音の許嫁だった奈緒の人生を、どうしたって考えちゃいます。遊女たちのことを想うと、涙がにじみます。

第4章では明治以降の吉原を見ることができるのですが、こちらは『鬼滅の刃』の「遊郭編」を思い出させますね。吉原は多くの作品の舞台になっているので、それぞれを思い出していろんな気持ちが湧き上がってきます。

また、明治44年の吉原大火と、大正12年の関東大震災のときの写真を見ることができ、さらには、かつて吉原があった現代の東京、三ノ輪駅周辺の写真もあり、吉原遊廓が実在していたことを実感できます。今度東京に行くことがあれば、見返り柳(今でも木があることにびっくり!)や大門跡などをぜひとも見に行きたいし、浄閑寺にも行って手を合わせたいです。

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2024年10月28日

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