【感想・ネタバレ】沈黙の春のレビュー

あらすじ

人間の生活に多大な便宜をもたらした化学薬品の乱用によって、自然が破壊され、当の人間をも蝕んでいくその恐ろしさを詳細に調査し、告発した海洋生物学者レイチェル・カーソンの代表作。当時はあまり知られていなかった残留農薬の問題や、食物連鎖による生物濃縮(生体濃縮)がもたらす生態系への影響を公にし、社会に大きな影響を与えた。歴史を変えた世紀のベストセラーを正確で読みやすい訳文と文献リスト付きの完全版で贈る。

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Posted by ブクログ

殺虫剤、除草剤の毒性、それによる健康被害、自然破壊の実態が突きつけられ、恐ろしいとしか言いようがありませんでした。

何とかして悲惨な現実を世に知らしめ、現状を打開しなければならないという、レイチェル・カーソンの強い信念が文章に溢れていました。かなり前に読んだ「センス・オブ・ワンダー」と共に、心に残りました。

がんに侵されている中での執筆であり、本書出版から1年7か月後に亡くなったことを、解説文を読んで知りました。執筆に心血を注いでいた著者のことを思うと、胸が熱くなり頭が下がります。

自然界の中で、人間は限りなく謙虚でなければならないと、思うことしきりです。

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2025年06月15日

Posted by ブクログ

 レイチェル・カーソンの『沈黙の春』は、農薬の大量散布による自然や生態系の破壊と健康被害に警鐘を鳴らし、自然保護活動やエコロジー思想に大きな影響を与えたとして非常に有名であるが、新訳が出たことから実際に読んでみることとした。

 本書刊行の時代の1950年代から60年代というと、科学/化学の力に魅了されていた時代であり、農薬による害虫駆除が大々的に行われたのもそうしたことからだったのだろう。本書では、鳥や魚その他の動植物に対する被害や、水や土壌の汚染に関する実相が次々と明らかにされていく。そして、農薬会社や行政、あるいは研究費の助成等で企業と利害関係のある研究者などが、農薬がそれらの被害の原因であることを容易に認めなかったことが被害の拡大を招いてしまった。

 著者は、害虫駆除について、農薬による化学的防除に対して、天敵を利用した生物的防除の成功例を紹介し、その可能性を称揚している。確かに上手くいった例はあるのだろうが、現地にはいない新しい生物を招き入れるということは、当然ながらその場所の生態系に影響を及ぼすことになるので、思わぬ状況が生じる可能性もある。

 いずれにしても、人間が自然を思うがままに管理できるとするのは、人間の傲慢なのであろう。失敗からきちんと学ぶ、本書は多くの例を通して、貴重な教訓を教えてくれる。

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2024年09月18日

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