あらすじ
「あなたの人生に名シーンは、ありますか」。
記憶を失って天国を訪れた小野田。自分は死んだのだと悟った彼は、天国映画館の支配人・秋山に誘われ、一緒に働くことになる。
天国から新たな世界へ旅立つ人の人生を上映するこの映画館で、様々な人生を観るうちに、小野田の記憶と心に変化が訪れてゆく。
そして、自分の人生の映画フィルムが、ついに届いた。
その映画は、彼自身はもちろん、観客たち誰もが思いもよらぬ人生で――。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
相変わらず清水作品は美しい…
人と人との尊い繋がり、温かさをいつも見せてくれる。今回も心がとても洗われた気分だ。
主人公小野田明は、生前の記憶を亡くしたまま若くして天国に来た。彼はそこで友人たちとかけがえのない時間を過ごすとともに、「天国映画館」の一員として働くことになる。そこの映画館では天国にいる誰かの生前の物語が上映され、その上映を助けるのが館員の仕事だ。
小野田は映画館支配人の秋山のサポートをもらいながら、様々な映画の上映に携わることで、多くの人の思い出に寄り添っていく…
果たして小野田は生前の記憶を取り戻せるのかー。
そして彼の今後の行く末はー。
特に好きなシーンはやはりラスト。
あんなに「生」の喜びを感じる瞬間はあるのだろうか?
あのシーンを通して、
本当に人生は映画のようだと強く思った!!
あと本作で欠かせないものは、印象的な登場人物たちと映画たち。小野田の友人ロベルトや明菜、そして大和の存在は天国で生きる上で小野田にとって大切な道標だったと強く思う。
また本作を彩った映画たちも素晴らしかった。
思わず観てしまった「ニューシネマパラダイス」!!
たしかにあのラストシーンを観ないのは人生損だ(笑) とても印象的で言葉で言い尽くせないシーンだった。
次の清水作品は、どんな世界を読者に見せてくれるのか今からワクワクだ。
Posted by ブクログ
死んだ後に天国があって、そこに映画館がある。そこで上映されるのは天国に来た人の生前のダイジェストと言う話。
大和くんの話が一番良かった。10歳で亡くなった大和くんは、幼い頃からずっと病院で過ごしてそのまま亡くなってしまう。
ところが天国に来た瞬間に痛みも何もかもなくなり自由に動き回れるようになり今までできなかったことを思う存分に出来るようになった。
自分の子供がそんな境遇に合ったら、そうあってほしいと願うような内容だった
Posted by ブクログ
気がつくと天国にいた主人公。どうやら自分は死んだらしいのだが、生前の記憶がない。そんな主人公に、そこが数ある天国の一つで、そこに暮らす人々にその人生を上映する映画館があると聞かせる映画館支配人。主人公は、その映画館を手伝うことになるが…
人生を肯定して、前へと進むハートウォーミング物語は数あれど、その舞台が死んでからの天国というのは面白い。しかも、その映画を見た人は天国から次のステージへ行っている。なんだか不思議。
でも、少年の話や結末に主人公の身に起こることを考えると、その設定はアリだなと思える。
Posted by ブクログ
死役所の天国版とでもいおうか。
いい話だけど、なまぬるくて、うすっぺらく、さむ、と思ってしまう、私の性格の悪さよ。読み手によってはとてもあたたかい本になりうる。他人の人生は自分の人生をうつす。本も同じです。
人生はよく映画にたとえられる。最後まで何が起こるかわからない、だから楽しい。それを本にしちゃったもの。
ストーリーとしては何の変哲もなく見どころがなくても、素敵なワンシーンがあるだけで、いい映画だ、というのが刺さった。ワンシーンを支えているのは日常だ。鈴木さんという普通のひとが毎日通勤電車に揺られている日常がなかったら、突然逆方向の電車に乗って海に行く非日常はいいワンシーンにはならない。つまらない日常の尊さよ。
病気の大和くんの現世を鈴木さんに見せたいというのは、なんか気持ち悪い。大和くんの尊厳を傷つけてる。こんな不幸な人もいるぞ、平凡な日常は幸せなんだぞ、とでもいいたいのか。勝手に病人を不幸だと決めつけないでくれ。勝手に踏み台にするな。余計なお世話だ。
最後の主人公が実は生きていたというくだりは、生きてさえいれば希望があり、いい映画にできる、ということだろうか。
小説内で紹介されていた映画は見てみたい、ニューシネマパラダイス、シチリア!小津安二郎とか。東京物語、
支配人の秋田の現世が気になる。