あらすじ
自然に治癒することはなく、一生強い「毒性」を放ち、心身を蝕み続ける―
発達障害と複雑性PTSDの第一人者が、「心の複雑骨折」をトラウマを癒やす、安全かつ高い治療効果を持つ画期的な治療法を解説。イラストによる完全図解と動画を用いて、治療の一部始終を再現する。
あなたは本当にトラウマのことを知っていますか?
質問です。次の問いはYes or No?
(1) トラウマは日常的によく起きるものなので、だれでも1つや2つトラウマを持っている 。
(2)日本で一番遭遇する可能性が高いトラウマは、地震などの大災害である。
(3) トラウマは「こころの傷」なので、不安神経症と同様に脳波の異常とか脳の形の変化までは起きない。
(4) トラウマは分かりやすいイベントなので、精神科の他の病気に誤診されることは希だ。
(5) 深刻なトラウマでも、時間が経てば徐々に治ってゆく。
(6) 深刻なトラウマがあっても、それにいっさい触れず、本人も忘れるように努力すればやがて元気に生活ができる。
(7) したがって、トラウマがあっても一般的に体の健康には大きな影響はない。
(8) トラウマの治療には、共感し、傾聴するカウンセリングが何より有効だ。
(9) 深刻なトラウマを負った子どもたちであっても、しっかりと愛情を注ぐことでトラウマの傷を癒やすことができる。
(10) トラウマ治療は時間が大変にかかるので一般的な保険診療では実施できない。
答えはすべて No です。詳しい理由は本書にて
「まえがき」より
トラウマとは、抱えきれないほどの辛い体験によって受けたこころの傷をあらわします。重症なトラウマは、自然治癒が極めて困難で、心身に大きなマイナスの影響が生じてきます。この治療のためには、「トラウマ処理」と呼ばれる特殊な心理療法が必要になってきます。しかしこのようなことは十分に知られていないため、トラウマを抱えながら苦闘されている人々が多数存在します。
本書は、深刻な問題を生み出しているトラウマのあまり知られていない知識と、その治療法について書かれています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
発達障害の中でも虐待による発達障害的特徴に注目されていた著者のトラウマ治療の一般向け書籍。ACE’Sが注目されたり、ICD11にて複雑性PTSDが診断基準に入り、トラウマには注目をされている。依存症の背景にもトラウマを抱えている人は多い。トラウマ治療にはEMDRが有名であるが、著者がそれを改良し簡略化した治療として開発したTSプロトコール。薬物療法も含めて著者の複雑性PTSDに治療が一般向けに書かれていてわかりやすかった。
Posted by ブクログ
トラウマケアのやり方が一般化していく過程が書かれている感。筆者の薬の使い方がホメオパシー的。身体へのアプローチも民間療法的なものと相似。過去に行われている療法にも意味があると感じた。
心の領域を学問化した弊害もあるような気がした。学問化というよりかユング派の弊害というか…
今後、心の領域の取り扱いがより敷居が低くなっていく気もする。心理療法、精神医学の実践家としての立場の方からの提言。
Posted by ブクログ
これまでも、専門書の中では比較的安価で手に取りやすい部類の著書が多かったが、今回ついに新書となり、より多くの人が手に取りやすくなったのではないかと思う。内容は似たり寄ったりではあるが、TSプロトコールやTS自我状態療法など、少しずつアップデートされているのがわかる。
Posted by ブクログ
トラウマの知識と治療法について、『一般的な読者に向けて』とあるけど、『一般的なマニア向け』のような興味深い内容だった。
簡易版トラウマ処理のTSプロトコール。
神田橋先生の影響。
発達性トラウマ症と複雑性PTSD。
単回性トラウマと複雑性トラウマの治療法の違い。トラウマ処理技法の一覧。
もともと発達障害がある人の発達性トラウマ症の治療。
ケーススタディ。多重人格。
トラウマをテーマにした本が増えていくのかもなあ。