あらすじ
2014年9月27日午前11時52分。
久しぶりの好天に恵まれた週末、紅葉の最盛期、そしてお昼どきであったことから、御嶽山の山頂付近は多くの登山者でにぎわっていた。
そこに突如として水蒸気噴火が発生する。
火山ガスに覆われ、巨大な噴石が飛び交い、一瞬にして生死の境に登山者たちは放り込まれてしまった。
頂上付近で被災しながらも生還した著者が、その決死の脱出行と教訓をもとに2016年に刊行した『御嶽山噴火 生還者の証言』に、その後の安全登山活動、御嶽山の防災への取り組みなどを追加し文庫化。
■内容
はじめに
第一章 運命の日
絶好の登山日和/十一時五十二分、一回目の噴火/それぞれの証言、噴火の瞬間/漆黒の闇、二回目の噴火/巨大な噴石、三回目の噴火/必死の疾走/覚明堂からの下山/ロープウェイ鹿ノ瀬駅へ
第二章 噴火の実態
御嶽山という山/噴火の様相
第三章 噴火の爪痕
困難を極めた捜索活動/取材と報道、伝えることの大切さ/生存者の自責の念/命を落とされた登山者とご遺族
第四章 噴火の教訓
生還できた理由/正常性バイアスと多数派同調バイアス/シェルター、ヘルメットと危機管理/登山者の意識/御嶽山再訪
おわりに
文庫増補分
第五章 噴火から十年
はじめに/二〇一八年 規制解除/二〇一八 規制解除/二〇一九規制解除/講演会/社会の変化/自分自身の変化/文庫版のおわりに
文庫解説 及川輝樹
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Posted by ブクログ
生き残る努力はみんなしてて、そのなかで最後は運だろうってことは分かる。山は登らなければ遭難しないけど、噴火は登ってなくても遭遇する可能性はある。とにかく、眺めたり写真を撮ったりしないで少しでも早く逃げるのが大事。
Posted by ブクログ
2014年の御嶽山、登山者として山頂で噴火に遭遇し、最善の努力と運によって生き延びた山岳ガイドの手記。
その時、御嶽山で何が起こったか、そして彼女はどんな状況に陥り、どのように生き延びたかという克明な記録。
63名という多くの犠牲を出した噴火の記憶を、忘れず、風化させず伝え、そこに確実にある危機として、敬い、できれば二度と犠牲者を出さないよう、伝えたいという思い。
私は山には登りません。
だから、本書に書いてあることは関係ありません。とは思わなかった。
御嶽山は活火山。それは皆が知っていた事実。
でも、ずっと安全だったから、警戒レベルが低かったから...そこに噴火は起こった。
日本は地震が多い国だから、プレート境界にあるから多少の地震は仕方ない。
富士山はずっと噴火してないから大丈夫。
だとは、私は思わない。
危機には敬意を払い、自分にできるだけの対処をする。家族、仲間に呼びかける。
備える。
大事なことを、改めて認識させてくれる手記だった。
Posted by ブクログ
小川さゆり『御嶽山噴火 生存者の証言 増補版』ヤマケイ文庫。
2016年に刊行されたヤマケイ新書『御嶽山噴火 生還者の証言』に第五章として、その後の安全登山活動、御嶽山の防災への取り組みなどを追加し、文庫化。
2014年9月27日午前11時52分に発生した御嶽山の水蒸気噴火で63人もの尊い生命が失われた。9月10日と11日に火山性地震が50回以上もあり、噴火の警戒レベルを引き上げる条件を満たしていたにも関わらず、通常のレベル1からレベル2に引き上げられることはなく、火口付近の立ち入り規制は行われていなかった。
2011年3月11日の東日本大震災も似たような状況で発生した。3月9日の午前中に津波を伴う震度5弱の強い地震があり、その後もマグニチュード6クラスの地震が相次いでいたにも関わらず、何ら注意喚起が行われなかったのだ。自然災害は予測不能と言われるが、今から思えば、自然は人間に大きなヒントを与えていたのだろう。
今から10年前に起きた御嶽山の水蒸気噴火。2014年9月27日の好天に恵まれた土曜日の昼時にに発生したということもあり、御嶽山の山頂付近は多くの登山者で賑わっていた。そんな登山者の1人であった山岳ガイドを務める著者が頂上直下からの決死の脱出行を生存者たちの証言を交えて描く。
突如として発生した水蒸気噴火。見る見る噴煙が上がり、火山ガスに覆われる中、巨大な噴石が飛び交い、著者は岩の陰や岩の窪みに身を潜め、ひたすら噴火が収まるのを待つ。助かった多くの登山者も岩陰や山小屋などで身を護る行動を取っていたようだ。しかし、それも運。事前の情報収集力、判断力と行動力、そして、運が明暗を分けたのかも知れない。
御嶽山の水蒸気噴火の映像はテレビのニュースやSNSなどで目にする機会があった。見る間に空を覆う黒い噴煙、飛び交う噴石、パニックに陥る登山者。余りにも過酷な映像には驚かされた。東日本大震災の時に自分は会社の2階で震度6強の揺れを経験したのだが、天井から石膏ボードや蛍光灯が落ちて来るは、鉄製の扉や配管パイプがガンガン鳴るはで、全く生きた心地がしなかった。津波被害や原発事故を別にすれば、10年前の御嶽山ではそれ以上のことが起きたのだ。山頂付近で遮蔽物が殆ど無い中で噴火に遭遇することはどんなに恐怖を感じたことだろうか。
定価1,430円
★★★★