【感想・ネタバレ】マンガ森の彷徨(さまよ)いかた 批評理論で名作を楽しむのレビュー

あらすじ

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「批評理論」を学ぶと、マンガはもっと面白い。
●マンガを愛する現代文講師・小池陽慈が、『現代評論キーワード講義』(2023年・三省堂)に引き続きなじみやすい講義調の語り口で解説を展開。
「批評理論」の基本となるキーワードに隠された、名作マンガをもっと楽しむためのヒントとは?

●こんな方におすすめ
・マンガや読書が大好き
・「学び直し」に関心がある
・本を読むための力をつけたい
・現代社会をより深く見る/知る力をつけたい

●掲載作品(掲載順)
・松本大洋『Sunny』(小学館)
・泉光『図書館の大魔術師』(講談社)
・鳥取砂丘『世界は終わっても生きるって楽しい』(オーバーラップ)
・日々曜『スカライティ』(小学館)
・渡辺アカ『擬態人A』(秋田書店)
・おかざき真里『阿・吽』(小学館)
・ヤマシタトモコ『違国日記』(祥伝社)
・山田鐘人/アベツカサ『葬送のフリーレン』(小学館)
・山下和美『ランド』(講談社)
・大童澄瞳『映像研には手を出すな!』(小学館)
・岩明均『寄生獣』(講談社)
・水木しげる『総員玉砕せよ!』(講談社)
・田素弘『紛争でしたら八田まで』(講談社)
・野田サトル『ゴールデンカムイ』(集英社)
・クロマツテツロウ『ベー革』(小学館)
・坂月さかな『星旅少年』(パイ インターナショナル)
・竹宮惠子『地球へ・・・』(スクウェア・エニックス)
・永田礼路『螺旋じかけの海』(個人出版)
・ヨンチャン/竹村優作『リエゾンーこどものこころ診療所ー』(講談社)
・水谷緑『こころのナース夜野さん』(小学館)
・岡田索雲「追燈」(『ようきなやつら』所収、双葉社)

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Posted by ブクログ

高校生になった元教え子に、『葬送のフリーレン』の分析を書くと約束してしまったのだが、一体、何から手をつけたらよいかと思っていたところで、Twitterでこの本が流れてきた。目次を見ると、「テクスト」を解説する項目で『フリーレン』を扱っている。買おう買おうと思いつつ、数ヶ月が経ち、満を辞して購入した。
読んだことあるマンガが『フリーレン』しかないので、とりあえず、そこだけ読んだのだけれども、内容としては、ふむふむという感じでありつつも、そういうことだったのか! という感じはない。万人がそう読むだろうという平均的な読み方を、批評理論の用語を使って価値づけている本というのが、本のつくりとしての印象である。
前評判として、大学の後輩が、「高校生のレポートの参考にするならいいけど、大学生が卒論の参考にするにはちょっと……」と言っていたのを聞いた。後輩の言いぶり的には、だからイマイチな本、といった言いぶりだったが、中学校教員をしている身としては、これくらいの批評本の存在は、教育的にとてもいいのではないかと思う。

第一話のヒンメルの葬式のシーンと、そこで泣き出すフリーレンの表情から、この物語のコードを「『葬送のフリーレン』=人間の心を完全には理解できないエルフのフリーレンが、人間を知ろうとする物語」として抜き出す。その後、「人類(人間、ドワーフ、エルフ)」と対立するキャラクターとして、「魔族」を取り上げて、この物語のコードが、「異種間での心の分有の不可能性」であるという風に読み替えるのが、論の骨子になっている。
「分有」という概念の使い方もなんとなく気になるところではあるけれども、『フリーレン』で扱われている批評理論の概念が、「テクスト」であるところも何となく違和感を感じるポイントかもしれない。
まず、上のコードの抜き出し方は、至極まっとうな読みだと思うが、あまりにまっとうで普通に過ぎるので、読みとしての面白みはない、というのが文学系でスレてしまった後輩たちの感想だったのではないか。加えて、それは、作者が意図した通りなのではないかというところも何となく気になるのだろう。
テクストを原理的に、誠実に説明するのなら、作者の意図によって書かれた「作品」という考え方を相対化するための概念だと説明するのが基本だと思う。そのため、作品を作品として読んだときにも成立しそうな読みを、テクストの自由な読みとして語られると、何とも微妙な気分になる。テクストの解説のために、テクスト論を実践するのであれば、もっと無関係なコードから、『フリーレン』の持っている無意識的な構造を取り出してほしいと思われるのだと思う。

とはいえ、読み方がまっとうもまっとうであるからこそ、自分たちが何となく読み取っている「普通の読み」をどうやって説明したらいいのか、とてもいいお手本になっていると思う。そもそも、世の中の大方の人たちは、「普通」の読者なのであって、義務教育の中学校教員をしている人間からすれば、そういった「普通」の人たちが、「普通」の読みを言葉にできるようになることの方が、よっぽど教育的に大切なことであるように思う。
考えてみれば、「『葬送のフリーレン』=人間の心を完全には理解できないエルフのフリーレンが、人間を知ろうとする物語」というところまで、しっかりと言語化できるのも、100人読者がいれば、半分くらいもいればいいものなのではないだろうか。これくらいの読みを、しっかりと言葉にして、交流できるようにすることが、けっこう大切でいて、それでいて意外に難しいことのような気がする。

結論としては、先に上げた後輩の評価が、この本の評価を完璧に言い当てているように思う。曰く、大学生が、文学を専門にしてする批評として見るには、あまりに物足りないけれども、高校生がマンガを分析対象として批評するというのは、どういうことなのかということを感覚的に学び取るにはちょうどいいのではないか、といったところである。そもそも、そういう趣旨で書かれている本だと思う。
自分がなんとなく感じている「普通の読み」を言葉にするにはどうしたらいいのかを学ぶ教科書として、ぜひ中高生くらいの読者に読んでほしい。

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2026年04月12日

Posted by ブクログ

まず、これはブックガイドではありませんでした。哲学論を展開するにあたり、題材を漫画に求めたっていう趣向。子の他作品同様、興味深く読めるのは間違いない。

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2026年01月02日

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