【感想・ネタバレ】イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日のレビュー

あらすじ

最強のCOOが語る激動の日々
その時、Twitterに何が起きたのか? 一言でい言えば、「破壊」だった――。

買収によりTwitter社に走った激震。リストラ、支払い停止、見えない方針。外資系企業を渡り歩いた著者がその時見たものとは?

【「はじめに」より】
この本はTwitter Japanの社長だった私が、イーロン・マスクによる買収完了後から退職するまでの215日のあいだに起きたこと、見たこと、聞いたことをお伝えするものです。
何が起きたのか? ひとことで言えば「破壊」でした。
多くの仲間が突然解雇され、これまで築いてきた信頼、ネットワーク、エコシステムがどんどん崩されていった。起きた感情は、戸惑い、怒りを超えた、なんとも言えないストレスフルなものでした。しかし一方で、長い目で見たときには、これは「創造」に向かっていくことなのかもしれないと思うこともありました。
Twitter社の改革は、ひとつの民間企業レベルの話を超え、いま日本に蔓延っている閉塞感を打破するうえでも、ひとつの参考になるのかもしれない。(中略)イーロンと出会うことで「このままではダメだ」という危機感を強制的に抱かされた。目を開かされたのです。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

Twitter社がイーロン・マスクに買収される前後でTwitter Japanの社長をされていた方の書かれた本でした。

イーロン・マスクさんは、宇宙次元で行動していることがわかりました。

例えば、人の心ではなく、人類に興味がある。おそらく一般人は、身近な人に対する愛情や思いやりが行動への強い原動力になり、全人類といった抽象的なレベルだとなかなか行動を起こせない。だからどうやったら遠い国や遠い未来のことを自分事としてとらえられるか、ということを今頑張ってやっていたりする。でも、そういった一般論が通用しない人もいるのだなーと思いました。

イーロン・マスクさんの脳のキャパシティも並大抵でないことがわかりました。

ディテールを理解するこだわりがあると聞いていましたが、その専門家並みに情報を処理できる、つまり、なんとなくわかったとかではなくて、知識を使いこなせるレベルで分かり、且つメモリにきちんと収まっている、という記憶容量と情報処理能力が違う。好奇心があるとかないとかといった違い以上のものなのだろうと思います。そんなに知識を自由自在に使えたら、探究心も沸く…

イーロン・マスクさんは失うものに対しての抵抗がないようでした。

著者は、破壊と創造、と言っていたり、真ん中に持ってくるためにまず逆ぶりする、といったような、普通では考えられないような改革の仕方をしていることを述べられていました。

つまり、一般の人間が持つといわれる現状維持バイアス的なものがない。失うことを恐れないのではなく、得られるもの煮たいするバイアスがかかっているのかもしれない。

それは何もないところから始めた経験などにもよるのかもしれないけれど、Twitter社が持っている信頼関係や高度人材に対して、もったいない、という感覚を持っていないような人員削減であったり、方針転換をする。過去の延長ではなくて、過去や現在を完全に無視して新しい会社を作ろうとしているような感じでした。

__「真ん中に持ってくる」こと自体は必ずしも批判されるようなことではないと思いますが、しかし、そのやり方が一般人にとってはカオスですし、破壊にしか見えないのです。彼自身は、破壊とすら思っていないのでしょうけれど。

イーロン・マスクが抜群な「時」。

これは、正直分からない。でもこの能力のある人は本当にすごいと思う。持って生まれたものではなく探究心、情報量、人脈といったものがかかわっていると書かれていましたが、この勘としか今のところ言えない能力を培う方法は誰にもわかっていないのでは…。

本気度。

集中力、と書かれていましたが、社員にも自分と同じように四六時中対応を迫るのは、昭和の日本企業というより、もし違うなら別にそうしなくてもいいけれどそれだとここで働く理由はない、というような意外とさっぱりしたものとも見受けられました。前提に自由がある。どう生きるかを選ぶ。



著者は、そんなイーロンさんを紹介することを通して、日本の硬直状態のヒントにもなるだろうと書かれています。

とはいっても、

世界でNo.1になることが一種のIdentityのようなアメリカ文化とは対象に、

日本は具体的に日本を定義する数々の文化、そして独自の歴史があるからこそ、それを守っていくことが自分たちのIdentityを維持することでもあるように思います。

100年企業が日本に多いと書いていましたが、それは日本ではその会社を維持することに価値が感じられるからであり、逆にイーロン・マスク的には会社を維持することは全く重要でもなく、会社を通して何を成し遂げるか、という野心の部分に重点がある。だから会社自体がつぶれることは大きな問題ではないのだろうという印象でした。

全力でNo.1になるために破壊したり想像したりすることに、日本社会としてどこまでなじみがあるのか、もはやそれが生きる価値との整合性上必要なのか、という点もあるのかと思います。だって、勝手に地表が動いて定期的に私たちの生活を、インフラを、組織を、破壊していくので。維持する、復興する、ことのために力を働かせている。それでも、周りもどんどん変わっていく中で、今まで通り維持するためにも方法を変えていかないといけないという状態に迫られてはいるのかと思います。

じゃあ一般人であり、日本文化に染まった私たちはどうするのか、という点でも、数々のヒントになるお話もあり、とても面白かったです。

著者は、イーロン・マスクは意識的にしていないのかもしれないけれど、どう自分が勝手に書けてしまっているリミットを外すか、というのが一つのポイントだとしています。

__いかに無意識に、自分の潜在意識に語りかけていくかが、何かを実現するコツなのでしょう。できるだけ顕在意識に囚われないことが自己実現のためには大切だと考えています。

後、日本のベンチャーキャピタル市場は1兆円台、という、桁違いに小さいというお話や、儲けることへの年配者からの嫉妬(年収1000万円で)や、制度的に経営者の給与水準か固定されていること、体質的に違うんだろうと改めて思いました。

読むだけでもとても刺激的な体験なので、実際一緒に働かれたとなると本当に激動で人生を揺さぶられるものであったのだろうと想像できました。すごい。貴重。

0
2024年12月19日

「ビジネス・経済」ランキング