あらすじ
環境・社会と経済成長を両立させるには
「サーキュラーエコノミー」しか道はない
サステナビリティと聞くと、多くの人は、何かを我慢しなければならない、「○○してはいけない」といった禁欲的なイメージを抱きがちだ。だが、それはサステナビリティの真の姿ではない。欧州でサステナビリティを積極的に進めている企業の幹部たちと話していて強く感じるのは、彼らの「人間中心主義」の視点だ。(中略)つまり、主役である人間が我慢を強いられるのではなく、「地球の限界の範囲内」という条件付きで、人間が欲望を追求することをよしとしているのだ。そのためには、ビジネスのやり方を大きく変える必要がある。その解決方法として、限られた資源の採取や排出を最小限に抑える「サーキュラーエコノミー」が鍵となってくる。いや、環境・社会と経済成長を両立させるには「サーキュラーエコノミー」しか道はない、と言いたい。(本書『はじめに』より)
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Posted by ブクログ
コロナが明け、2023年5月にオランダとデンマークのサステナビリティを積極的に推進している企業を視察し、同年10月には、ASEAN4カ国(マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイ) の主にサーキュラーエコノミーに関係する50以上の企業や団体を訪問した。
これらの経験を通じて、確信したことがある。それは、今後のサステナビリティ経営のキーワードは、「人間中心主義」と「サーキュラーエコノミー (循環型経済)」だということだ。この二つのキーワードを軸に、再度、あなたの会社で取り組んでいるサステナビリティ経営を見直し、再構築するためのフレームワークを提供することが、本書を執筆した目的だ。
サステナビリティと聞くと、多くの人は、「何かを我慢しなければならない」「○○してはいけない」といった禁欲的なイメージを抱きがちだ。だが、それはサステナビリティの真の姿ではない。
欧州でサステナビリティを積極的に進めている企業の幹部たちと話していて強く感じるのは、彼らの「人間中心主義」の視点だ。すべての人が豊かに、幸せに、便利に暮らせるようにするという目的を、地球の限界の範囲内でどう実現できるか。それに対してビジネスが果たすことのできる役割を彼らは追い求めている。つまり、主役である人間が我慢を強いられるのではなく、「地球の限界の範囲内」という条件付きで、人間が欲望を追求することをよしとしているのだ。
倫理的な企業行動は、社会に歓迎されるだけでなく、企業にも利益をもたらしやすい。なぜなら、 倫理とは「文化圏によって異なることのない普遍的な価値」であり、その価値を提供できる企業は、 万人に求められるからだ。
15世紀以降、絶対的相対主義が哲学界を席巻し、絶対的真、絶対的善が存在しないとの考え方が主流となり、西洋哲学においては、「人として守り行うべき道」「すべての人が価値あるものと大切にしているもの」について語ること自体ができなくなっていった。しかし、倫理資本主義を提唱するマルクス・ガブリエル氏は「倫理」の復権を試みる。「ある」とは何か、を徹底的に論じたのちに、人類共通の倫理は「ある」と結論付ける。そのうえで、 そのうえで、効率や利益を重視した米国型の資本主義ではなく、経済活動のなかに人類普遍の道徳や倫理性、哲学を織り込んでいこうというのが、マルクス氏の倫理資本主義の考え方だ。(マルクス氏は相対主義の立場を理解したうえで、倫理に「普遍的価値がある」と主張している)。
新型コロナウイルスがパンデミックを引き起こしたとき、製薬会社は感染を予防するワクチンをかつてないスピードで開発・生産し、世界に広く供給した。これは、非常に倫理的な事業活動であり、ワクチンを開発した製薬企業は莫大な利益を手にした。このように、企業の活動が倫理的であれば、社会に貢献できるだけでなく大きな利益を上げることもできるというのが、倫理資本主義の特筆すべき点だ。
環境・社会課題のなかで自社のやるべきことを考えるとき、因果のパスを正確に追うことができなくても、「倫理的であること」が重要な道しるべになる。「倫理的」な企業が社会から信頼され、 持続的に利益を上げて繁栄していく。
実際、私たちが2023年に訪問した欧州企業はすべて、「倫理的であること」を志向しており、 しかも彼らは「倫理的であることは合理的であり、合理的であるということは、儲かることだ」と主張する。すなわち、「倫理的である」ということは、「すべての人にとって正しいこと=合理的なこと」を志向することであり、「すべての人にとって正しいこと=合理的なこと=価値のあること」 を提供することは、「その価値に対する対価が発生する=儲かる」ということだ。
これは「環境・社会に良いことをすれば、何をしても儲かる」ということではない。環境・社会に良いことをしても儲からないこともある。この点は強く強調したい。しかし、「環境・社会に悪いという選択肢は、非倫理的」であり、そのような選択をすることは長期的に儲からない。
「SXの時代」でも紹介したオランダの化学メーカーDSMの幹部は、「「環境・社会に悪いが、短期的に儲けられる事業」は長期的利益に結びつかない。(中略)我々のケイパビリティでスーパーのレジ袋をつくることも、植物由来の代替肉用原料をつくることもできた。ケイパビリティを活かせる点では同じだが、仮にレジ袋のほうが短期的に儲かったとしても、DSMでは『レジ袋の事業をやろう」という議論にはならない」と明言する。
正しい利益を追いかけることは、長期的に儲かることにつながる。企業はどうしても、目の前の利益追求に誘惑されそうになるが、本当に長期的な価値を生み出し続けられるか迷ったとき、その試金石になるのが「倫理」であり、倫理に従って今後の戦略を考えていけば、その先にあるサステナビリティ経営や後に述べるサーキュラー経営におのずと行き着く。
空気中の窒素を原料に莫大な量の反応性窒素を生み出した結果、現在その量は、かつて自然界に存在していた反応性窒素の2倍に達しているという。つまり、地球の生態系は今、反応性窒素であふれ返っている。ハーバー・ボッシュ法で製造された反応性窒素の8割は農業分野、2割は工業分野に使われている。
ストックホルム・レジリエンス・センターが発表しているプラネタリーバウンダリーの最新版によると、窒素やリン(リンも化学肥料の主要成分)の循環は気候変動よりも危機的な状況にある(図表 3・3の「生物地球化学的循環」)。プラネタリーバウンダリーは、人間が地球上で持続的に生存していくために、超えてはならない地球環境の境界点を示しており、項目ごとに超えてはいけない限界値が決められている。
では、反応性窒素が大量にあふれると何が起きるのだろうか。農地に肥料としてまかれた窒素化合物は、その約半分が作物に吸収されるが、残りは、土壌や大気、川、海、湖などに流出すると言われている。海や湖に流れ出した窒素化合物は、藻やプランクトンの栄養源となり、大量発生などで水質が悪化し、海洋生物の生態系や生物多様性が破壊されていく。また、廃棄された食品などを焼却処分すれば、大気中に窒素酸化物が排出され、大気汚染や温暖化が加速する。
日本の(自動車に限らない)廃プラスチックのリサイクル割合を見ると、マテリアルリサイクルが 22%、ケミカルリサイクルが3%、サーマルリサイクルが33%、未利用(単純焼却、埋め立て)が15 %となっていて、サーマルリサイクルの割合が高い。だが、サーマルリサイクルは原料を燃やして熱にしてしまうため、国際的にはリサイクルとは見なされていない。サーキュラー型のビジネスモデルをつくっていくには、可能な限りリデュース(削減)、リユース(再利用)、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルで回していくのが理想だ。そのうえで対処できない場合には、サーマルリサイクルを利用するという優先順位になる。
アップルは、単独ではすでにカーボンニュートラルを達成しており、2030年までにサプライチェーン全体と全製品を100%カーボンニュートラルにすることを目標に掲げ、動き出している。 (注17)
この目標が意味するのは、脱炭素化の方針についていけないサプライヤーは脱落し、アップルと取引したいなら否が応でも脱炭素化、サーキュラー化に方向転換を図らなければならないということだ。著者は2021年の『SXの時代』でこの動きを取り上げ、日本企業に警鐘を鳴らしたが、多くの日本企業は当時、この動きを他人事と考えていた。その後、「アップル・ショック」が徐々に日本のサプライヤーに広がり、アップルの要請に対する対策は進みつつある。
私たちは相手に入り込んで、複数のソリューションを提案し、脱炭素をともにリードしていくことを目指しています。これをエンゲージメントと言っています。ファイナンスの世界では、CO2 排出が多い企業から資金を引き揚げるダイベストメントが行われていますが、それは自分の庭にあったゴミ箱をとなりの庭に運んで「うちの庭がきれいになった」と喜んでいるだけです。社会全体を見れば、何の解決にもなっていません。
私たちがやろうとしているのはエンゲージメントなので、相手が石炭火力を持っていたら、あえてそこに入り込む。そして、LNGや再エネをバランスよく導入すると同時に、アンモニアや水素などさまざまなソリューションを提供して、脱炭素化を推進します。
Posted by ブクログ
本書の執筆の目的は、読者の会社で取り組んでいるサスティナビリティ経営を見直し、再構築するためのフレームワークを提供することとある。サーキュラ―エコノミーに興味があって読んでみて、業界ごとのフレームワークや先行事例の紹介など参考になった。個人的な知識不足から難しく感じるところもあったが、サスティナビリティ経営はこれからの時代の必須の考え方と思うので、勉強していきたい。
・サスティナビリティ・トランスフォーメーション(SX)
・サスティナビリティ経営のキーワード:人間中心主義、サーキュラ―エコノミー(CE、循環型経済)
・環境・社会と経済成長を両立させるにはCEしか道はない
・ASEANとともに成長
・企業の利益創出と倫理を合わせて考える倫理資本主義
・環境(親亀)、社会(子亀)、経済(孫亀)→三重構造
・社会課題→個のウェルビーイングを追求
・環境課題→①脱炭素化、②マテリアルのサーキュラ―化、③自然資源のサーキュラ―化(①~③:広義のサーキュラ―化)
・環境省によるCEの定義:従来の3Rの取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、消費資源の最小化、廃棄物の発生抑止などを目指すもの