あらすじ
私はその頃、百鬼園氏の家の書生であり、学生であり、執事であり、有力な家族の一員であった――自宅へ来る高利貸に応対し、漱石の軸を夫人に買い取ってもらうよう算段をし、佐藤春夫に短篇の紹介を頼む際に同行する。寝食を共にした書生が見た家庭での内田百閒。自宅と別宅の二重生活の様子が綴られる。
巻末に百閒の関連エッセイ・短篇を収録。
(目次より)
Ⅰ
ドイツ語の歌/代返/内田先生の時間/ゾルフ大使/青春の日/一分停車/晩飯/撫箏の図に題す/卒業論文/腕時計/学期末試験
Ⅱ
『冥途』縁起/砂利場の大将/二本のパイプ/退職金/軸
Ⅲ
大検校の軒/小びとのおじさん
内田百閒作品
予科時代/ゾルフ大使/冥途/大尉殺し/山高帽子
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
内田百閒の家で書生をしていた方による随筆集『一分停車』のなかから百閒に関する文章を抽出し、文中で触れられている事項にかかわる百閒の作品を併録した文庫本。大学の講義時間中は厳格な講師として、プライベートでは飄々とした師として、学生たちに接する百閒の姿が楽しく書かれている。「奥さん」として登場するのは最初の妻である堀野清子さんで、二人目の妻である佐藤こひさんは巧みに存在を消されている。意図的かどうかはわからないが、気の毒な感じがする。最後に収録された百閒作『山高帽子』は、岩波文庫の『冥途・旅順入城式』にも収録されている、大好きな大好きな作品なのだけれども、その原稿が雑誌に載るまでの紆余曲折を本書に収録されている『二本のパイプ』のようなかたちで他者の視点から聞かされた後に読むと、また格別。つくづく、何百回読み返しても新たな味を楽しめる、滅多にお目にかかれない極上の短編だなあ。ただただ脱帽。
Posted by ブクログ
学生時代、内田百閒の自宅に書生として住み込んだ著者のエッセイ。
百閒の奔放な行動に翻弄される著者。
高利貸から逃れるためホテルに滞在する百閒と自宅の奥さんとの間を取り持つ献身ぶりに惹き込まれる。
巻末に百閒の5短篇を収録。充実感を得られる。