あらすじ
中学校には馴染めず、厳しい母親に叱られ家庭でも居場所がない。夏子は日々を無気力に過ごしていた。心の支えは、妹のチイちゃんと共にお話を創ること、そしてチイちゃんの推しのアイドル・羽猫くんの動画を一緒に視聴すること。しかし夏子の様子を見かねた母親は、夏子が目を背けてきた「現実」を突き付けてくる。さらに同時期に羽猫くんが活動を休止して――。すべてを失った夏子は、一夏の巡礼の旅に出る。
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Posted by ブクログ
高山 環さん、今回初読みの作家さん ♪︎♪︎(*^^*)
こちらは装丁に一目惚れし購入した一冊 (^O^)♪︎♪︎
妹のチーちゃん(千佳)を亡くし、心に大きな罪悪感を持った13歳の少女、ナッツ(夏子)。
ある日、親に嘘をついて家を出た夏子と友達のマチ(弥生)。
わずかな所持金と荷物だけを持ち、活動を休止した推しのアイドルを捜し、再会を果たす目的のため、目撃情報があった遠く離れた宮崎を目指す計画を実行する。
まず、夏子の住まいである、武蔵小杉(神奈川)のタワマンからマチの親が経営する工場へ向かいマチと合流。
そして、九州へ納品に向かう予定の工場長が運転するトラックの荷台に忍び込む作戦で二人の旅は始まる。
しかし、途中の大阪で荷台に忍び込んで来たことが工場長にバレ、二人の計画が狂いだす。
工場長から逃げ出した二人はまず、大阪で出会った漫才コンビに食事をねだり、奢ってもらう。
そして、漫才コンビの彼女さんも一緒に加わりアパートに一泊。翌朝の別れ際に新幹線の切符代の足しにとお金を貰う。
その後早速、新大阪駅の新幹線ホームより九州入りを目指す二人だったが、二人を探しに現れた二人の親の前にマチはわざと飛び出し捕まってしまう。
マチと離ればなれになった夏子は、ひとり九州入りを余儀なくされ、博多で屋台らーめん屋で生計を立ている美鈴さんと娘のタカラちゃんと出会い、働かせて欲しいと懇願し、宮崎入りに不足していたバス代を稼ぐためにお手伝いさせてもらうことになった。
こうしてなんとか宮崎に辿り着いた夏子は、おばあちゃんと再会し、数日間を共に過ごす。
おばあちゃんと再会できたことに安堵した夏子は、ここで、自らの意志で推し捜しの旅を終える決心をする。
宮崎で推しのアイドルを捜し出し、再会することは出来なかったが、奇跡的な出会いを繰り返し経験することで少しずつ前に進み成長していく夏子を描いたお話。
この作品、夏子とマチ、この二人の少女の友情がとても清々しく、お互いを大事にしているから言えないと言う気持ちがうまくでていたのではないかと思う。
夏子は誰にも言えない悩みを抱え、自分を管理下に置きたがる両親を嫌悪するが、旅に出て食べるにも住むにも困らない自分の境遇は両親のお陰なんやと少しずつ感じ始める。
読んでいて最初は、親の態度に違和感を持ったけど、終盤にかけて全てが明らかになり、前に進めなかったのは両親も同じやったんやと納得できた。
ただひとつ...。
夏子の消息を博多の美鈴さんと宮崎のおばあちゃんは、報告していたこと...。
仕方ないけど、そこは黙っていて欲しかったなぁー。と...(笑)
こんなにも寄り添ってくれる大人がいるなんて、まだ世の中捨てたもんじゃない!(笑)
現実でもこんな風に受け止めてくれる社会であればいいのになぁーと、読後そう思った。
世代問わず、ぜひ手に取って欲しい!
この夏オススメな一冊! (^O^)
Posted by ブクログ
夏にアニメ映画化されている情景が目に浮かびます。
夢って何か壮大なものでないと口に出してはいけないように感じていたけれど、夢って色々な形があって、それら全てが尊いものであると思わせてくれました。大人も子どもも完璧な存在ではないけれど、互いを思い合って、思い過ぎてすれ違う。人間は不器用で愛おしい。
Posted by ブクログ
いかにも夏休みの田舎の親戚といった
装丁に惹かれまして
第12回ポプラ社小説新人賞奨励賞
ピルグリムは巡礼者といった意味らしい
女子中学生の成長ロードノベル
私立中学に通う中学一年生の夏子
武蔵小杉のタワマンの一室に両親と住む
とするとタワマン文学の一作とも
一見希望校に入学して人が羨むマンションに住む少女が抱える苦悩
自分にも娘にも厳しい母親
おっとりと見守る父親
夏休み、妹の残した気持ちを運ぶため
祖母が住む宮崎へ家出同然の旅に出る
少女が抱えていた苦悩は想像以上に大きくて
これを解き放つのは大変で荒療治も必要かと思うのだけど
この道中が無計画すぎて
トラックの荷台に乗ったり
お笑い芸人の部屋に泊めてもらったり
しかも携帯は家に置いてきてるし
影で大人が見守っている設定だけど
児童文学に近い作品だと思うと
良い子はマネしないでね、と思います
Posted by ブクログ
「将来の夢を書いてください。」中学に入って早々の教室でやる気に満ちあふれた担任からの課題だ。
夏子はこの課題に「夢を持たない」と書き込もうとする。
イマドキの中学なのか、それとも何があるのか。
夏子は自分は蛹の中に籠もって出来るだけ友達も作らない、出来ないのもあるのかもしれないが。
妹とぬいぐるみ相手にファンタジーの世界に逃げ込んでいる。
しかし、その妹は今はいない。妹の死に夏子は深く傷ついている。
妹の推しを自分も推しているように装ってマチというクラスメイトと友達になり、ライブにも出かけるが、その推しが引退することになり、妹のために宮崎まで探しに行くことになる。
神奈川から宮崎まで、中1女子の夏休みの冒険の始まりだ。
行く先々で、色んな人に出会い、助けてもらいながら宮崎に辿り着く。
その中でマチともお互い本当の自分を出していく。
宮崎では祖母にも助けられ、本来の目的は成してなかったけど、蛹から一歩踏み出すことができるようになる。
夏子は妹の死というどうしても越えられない出来事によって自分を責め、一人の世界に籠もってしまうのだが、それは庇護してくれる父母がいてのこと、そういうことも夏の旅で色んな人に出会い実感することになる。
この旅は夏子にとって妹の償いの巡礼の旅であり、成長の旅でもあった。
夏子の創作と思われるファンタジーと夏子とマチの旅が並行して進み、完結していた。
Posted by ブクログ
親の心子知らず、子の心親知らず
13歳の少女が旅をすることで親の偉大さを知り、平凡な日常が如何にして築き上げられた世界だったのかと感謝するが、
現代の実社会は子どもが旅をするにはあまりにも不親切。
見知らぬ中学生を一泊させようものなら逮捕案件。メディアの標的。子供は自宅に強制送還。
これでは誰も親切にできない
悪い大人がいることも事実なので線引きが難しい。
安心安全に暮らせる社会になればいいのに、、
Posted by ブクログ
中学一年生の少女2人による旅物語。
人それぞれ抱えているものがあってそれが旅の中で徐々に明かされて行き最後は全てが解き放たれるという展開はロードムービーのテンプレート的でありこれは読み進めていくと予測出来るのかなと思います。
ただ主人公が中学生ですので途中の展開は少し都合良すぎるのが気になりました。実社会において私が家出してきた中学生を一晩泊めようものなら確実に逮捕でしょう。
また途中で差し込まれる物語も個人的には不要かなと感じました。タイトル回収している訳でもなく、これがないと主人公の心理が描写出来ない訳でもなさそうですし。
悪くはないけど普通かなというのが個人的な感想です。