あらすじ
1893年の万博開催間近のシカゴ。夢の祭典に邁進する建築家、難航する資金集め、襲いかかる嵐や火災、そして人知れず「殺人ホテル」を作り上げ、おぞましい猟奇犯罪を重ねる連続殺人犯……。新興国アメリカの光と闇を描き切った、エドガー賞受賞の傑作ノンフィクション『悪魔と博覧会』、待望の復刊文庫化。解説/巽孝之
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Posted by ブクログ
シカゴ万博が始まる前の状況から実現、開催中、後始末まで、
建築家バーナムを軸にしながら、多くの人の目線で淡々と描く。
並行して描かれるのは、期待の殺人鬼、H.H.ホームズの人生。
強烈な光と陰の移り変わりが印象的。
大阪万博が開催されている今、万博の本来の意味や価値も考えさせられた。
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エリック・ローソン『万博と殺人鬼』ハヤカワ文庫。
2006年に文藝春秋より単行本で刊行された『悪魔と博覧会』を改題、文庫化。660ページ余りの読み応えのある、エドガー賞犯罪実話部門受賞の犯罪実録ノンフィクション。
『万博と殺人鬼』という、アメリカの光と影を連想させるタイトルが興味深い。
シカゴ万博という華やかな大イベントの準備が進められる中、その影で活気に沸くシカゴに仕事を求めてやって来る若い女性たちを巧みに誘い、自身が造った秘密の建物の中で行われる猟奇殺人と遺体の隠蔽を行うシリアルキラー。しかし、彼の残虐な殺人行為は次第に綻びを見せ始める。
1890年代初頭のシカゴ。建築家ダニエル・バーナムは史上最大規模の万国博覧会を成功させるべく奔走していた。エッフェル塔に代表されるパリで開催された万国博覧会の建築物を凌ぐ建築物の構築が求められたのだ。
一方、ロンドンではジャック・ザ・リッパーが残虐な殺人行為を働き、それがアメリカ国内で噂になる中、建設ラッシュに沸くシカゴの裏側で『アメリカ最初のシリアルキラー』と呼ばれるH・H・ホームズというハンサムで悪知恵の働く男による連続猟奇殺人事件が起きていた。
万博の準備が着々と進む中、ホームズは恐るべき犯罪を隠蔽するための舞台の準備を密かに進めていたのだ。
苛虐の舞台が整うと、ホームズは万博開催で活気にあふれるシカゴに仕事を求めてやって来る若い女性たちを誑かし、次々と毒牙に掛ける。不審を感じた周囲の人びとや失踪した女性の家族がホームズに女性の所在を尋ねると巧みな話術と嘘で切り抜ける。
その後、アメリカ国内を転々と巡り、偽名を使いながら詐欺を働いたホームズは、保険金詐欺の疑いでピンカートン社の探偵に追跡され、遂には警察に引き渡される。
そして、重婚と詐欺と虐殺を繰り返し続けた殺人鬼ホームズをじわじわと締め上げていくのはベテラン刑事フランク・ガイアだった。
この平和な日本でさえ、毎日のように全国各地で起きる殺人事件のニュースを耳にするようになった。その多くが家庭や親族間で起きているのは驚愕に値する。犯罪の質や重さが明らかに変わって来ているようだ。
万博や五輪などの大きなイベントの開催や交通機関の発達で多くの人びとが流入して来ると同時に凶悪犯罪も流入して来る。かつて、凶悪犯罪など殆ど無かった東北地方に新幹線開通と同時に多くの凶悪犯罪が流入して来た。今はイベントや交通機関の発達だけでなく、ネットの情報氾濫が凶悪犯罪を地方に伝播させる一因になっているのかも知れない。
本体価格1,680円
★★★★