あらすじ
トヨタ、ダイハツ、日野、豊田自動織機、愛知製鋼……
まさかの不正連鎖
最強集団はどこで間違えたのか
多くの企業に共通するマネジメントと組織の課題に迫る
トヨタグループの不正問題を専門記者が徹底取材・検証しました。同グループでは、2021年7月に発覚したトヨタ自動車の販売会社による車検不正を端緒に、2022年3月に日野自動車のエンジン不正、2023年3月に豊田自動織機のエンジン不正、同年4月にダイハツ工業の衝突安全不正、同年5月に愛知製鋼の公差不正が発覚。そして、2024年6月にはついにトヨタ自動車で認証不正が見つかりました。まさにトヨタグループで不正の連鎖が起きているのです。
業績は極めて好調。高品質を売りにしてきたトヨタ自動車がけん引するグループ企業で、なぜ不正が起きたのか、どのような不正に手を染めたのか、どのようにすれば再発を防げるのか。そして、グループを牽引するトヨタ自動車にはどのような責任があるのか。
この問題を当初から追っている製造業への取材歴27年の記者が徹底取材・検証した結果を1冊にまとめました。
不正問題に苦しむのはトヨタグループだけではありません。日本の製造業に巣くう不正の闇の正体を明らかにします。
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Posted by ブクログ
なかなか思ってたより有益でした
メーカーの経営、いまいるまったく違う業界でも参考になる。
現場の声が経営に届かずとあるけど、はなから相手にするつもりもないのかもしれない。で、現場はある意味やるしかないモードとなり、不正に手を染める。経営って、そんな簡単なことで成り立つなら、何もしない人が一番仕事できるになりかねないですね。
・ダイハツ内部通報制度、行政指導あり
・ハードが上、ソフトが下というヒエラルキー→トヨタのコンカレント開発へ繋がった
・後工程はお客様
・トヨタには、職位に関係なく、最もよく知っている人を尊重する文化がある。これ、ほんといい文化
・全体最適を目指して全員参加で問題解決するのがトヨタ流。担当者や管理職がひとりで問題を抱え込む必要はないし、個人の責任に帰すべきでもない。
・本当のことを言える組織にせよ
・上からでも下からでもなく、普通に話せるようになることが大切
・現場に仕事を指示して投げるのではなく、マネジメント層が現場を支援する経営を
Posted by ブクログ
1.技術力の向上
-不足技術力の洗い出し
-外部からの導入
-部門横断チームの結成
2.トヨタのエンジン開発プロセスのグループ導入
-リスク評価の導入
-法規解釈プロセスの導入/法規解釈の標準化
-牽制機能の導入
3.トヨタの問題解決方法の応用
-みんなで知恵を搾る
-チーフエンジニアが問題を発見
4.本当のことが言える組織になる
-都合の悪い情報を優先する仕掛け
5.国際ルールをリードする
6.納期の延長を認める
-時間よりも認証業務を優先
7.改善の手をゆるめない
8.社員のコンプライアンス意識を高める
-何のために働いているのかを考える
Posted by ブクログ
業界関係者に聞くと口を揃えてトヨタの対外的な強さを語る。それは市場スケールと影響力を手に入れたものに可能な帝王学のようなもので、傲慢さとも言える。コストダウンの求め方も強烈。しかし、作業標準も徹底し、ライン工程ごとに可視化した上で日々カイゼンを話し合う土壌において、検査や品質不正が発生させられるとは思わなかった。この問題を聞いての正直な感想だ。他方で、長年の不正はその実証確認が市場を介して行われてきたとも言えるため、却って自信を持ったり、前例主義で正当化されたものもあるだろう。
本書は詳しくトヨタグループの不正内容を分析し、解説する。トヨタグループに限らず、日本全体で不正が通報されやすくなった。これは雇用の流動性が上がったり、コンプライアンス意識の醸成、通報制度等、仕組みの構築が進んだことによるものだろう。
良い本だが、納得しにくい考察が一点。不正は何故発生したか、である。著者の見解は次の通りだ。
ー では、設計者が不正を企てた根本の理由は何か。答えは実にシンプルで、技術力が足りなかったからだ。時間や人員の不足やパワーハラスメントなどは、不正行為を促した要因に過ぎない。そもそも十分な技術力を備えていれば、リスクの高い不正な行為をわざわざ企図する必要がない。従って、トヨタグループが不正の再発を防ぐために、真っ先に取り組むべきは「技術力の向上」だ。日野自動車と豊田自動織機の場合、排出ガスに関する規制値を超過したエンジンがあり、型式指定が取り消された。技術力が足りないのは明らかだ。ダイハツ工業でも型式指定が取り消された小型トラックがある上に、エンジンの開発では高出力に見せ掛けるために不正な加工などを施している。
技術力があれば不正は行われなかったのか。本書でも解説されるように不正にも幾つかの種類があり、十把一絡げには言えない。だが、技術力不足が原因ではないだろう。不足しても改竄でOKとしてしまえば成長がない。成長が必要な領域には、絶えず高みへの目標設定がされるだろう。カタログ値と異なる実力を許容する、自社基準を過信して法令基準を軽んじる文化、それを実証する前例主義や実績主義がそうさせたのだと私は思う。現に、日本に蔓延る不正の大半は、安全性に問題がない場合が多い。だから良い、と言っている訳ではない。監査システムや規格制度にも、ご都合主義的問題点はないのだろうか。