あらすじ
なぜ日本の賃金は上がらないのか──。日本型制度の「決め方」「上げ方」「支え方」の仕組みを、歴史の変遷から丁寧に紐解いて分析し、徹底検証。近年の大きな政策課題となっている問題について、今後の議論のための基礎知識を詰め込んだ必携の書。
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Posted by ブクログ
日本の賃金制度について、資料が多い内容ではあるが真面目に書かれた印象の本。
・日本以外の国では職務の内容が雇用契約に規定されている(職務給)が、日本の場合はこれが特定されていない。日本における雇用の本質は職務(job)でなく所属(membership)にある。戦後まもなくは子供の数などによって給与額が決まるという生活給であった。これをより合理的な賃金体系へということで現在では人を評価する職能給となっている
・定期昇給というのも戦後の激しい労働争議に困った経営陣が作り上げた巧妙なシステムであったが、長い間定昇+ベアという時代が続いた。バブル崩壊後は定昇のみで、経営陣にとっては給与の支払総額が変化しないという幸せな時代であった。(が、人件費の総額が変わらないから物価も上がらないのだという意見はある)
・日本も早く職務給にすべしという議論は近年多いように感じるが、本書を読むとこの議論はもう、終戦直後からずっと繰り返されてきていることがよく分かる。同一労働同一賃金が良いとしても、ここまで苦労して定昇を積み重ねてきた中高年層からの反発も大きいだろうし、一度出来上がった給与システムを変更していくのは相当に難しいのだろう