あらすじ
藤本さんは私の釣友達で昔から羆のことは追いかけていた。
そしてついにこんな本まで。これは読むべし。――夢枕獏(作家)
2019年夏、北海道東部で、牛を次々と襲う謎のヒグマが確認された。付けられたコードネームは「OSO18」。
捕獲に乗り出した地元の男たちの数年に及ぶ闘いを描く。
<目次>
プロローグ
第一章二〇一九年・夏 襲撃の始まり
第二章 二〇二一年・秋 追跡開始
第三章 二〇二二年・残雪期 知られざる襲撃
第四章 二〇二二年・夏 知恵比べ
第五章 二〇二二年秋 咆哮
第六章 二〇二三年・春 異変
第七章 二〇二三年・夏 「OSO18」の最期
「OSO18」とは何だったのか?
あとがき
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Posted by ブクログ
最近、熊害のニュースが多かったので興味を持ち読んでみることに。
怪物ヒグマと呼ばれ、マスコミにセンセーショナルに報道されたOSO18 。
これは著者が所属するNPO団体を中心に、精鋭ハンターたちがOSO18を追っていくノンフィクションだ。
OSO18が怪物とされている特異性のひとつに、
(本来クマは植物性の木の実などを好むはずなのに)牛の肉食、しかも内臓を好んで食するということがある。
そして食べきれない食料を持ち去って隠す習性がなく、食べ散らかして放置するということも。
…まるでシリアルキラーみたいで確かにゾッとする。
でも、
OSO18の足取りが明らかになると、
自然の掟や人間界のルールさえ破った無責任な人間の行為が
クマの習性を歪ませてしまったことが見えてくる。
OSO18は人間が生み出した怪物だった…。
とてもやるせない。
OSO18のようなヒグマを駆除することが大事なんじゃなくて、
OSO18のようなヒグマを生まないようにすべきという著者の思いが、がつんと腹に落ちる。
読んでよかった。
……最後に余談だけれど、
クマの賢さは本当にすごい。
対して、歴戦のハンターの中でもまた、赤石ハンターが本当にすごい。かっこいい。これからもお元気でご活躍されてほしい。
Posted by ブクログ
本書に書かれていることは概ね真実だろうと思う。
→人間が栄養価の高い牧草を創り出した。
→エゾシカがそれを食べ、容易に冬を越せるようになって、数が爆発的に増えた。
→農作物被害が深刻化、その為、ハンターによるシカの駆除数が増えた。
→駆除したシカの処理が大変で、それを不法投棄する輩が増えた。
→不法投棄された新鮮なシカ肉にクマが容易にありつけるようになり、本来草木類を食べるクマを、肉ばかり食べるクマに変えてしまった。
「OSO18を怪物に仕立て上げたのは最初から最後まで人間、すべては人間のせいである。」
予想外に読み手が考えさせられる一冊であった。
牧草の品質改良がまさかこういった悲劇に結びつくなんて誰も想像だにしなかったろうと思うと共に、このような事態に波及する可能性があることをしっかり認識しておかねばと思った次第である。