あらすじ
「一週間後、あなたを殺します」
そんな言葉と共に、罪を犯した人の下に現れる猫耳姿の死神がいるという。
コードネーム33。またの名をミミ。彼女は七日間の猶予を与えた後、標的を殺めるという変わった殺し屋であった。
麻薬運びの青年、出産予定一週間後の妊婦、父親のために人を殺めた少女、世直しを志して悪人を殺し回る少年など。ミミに殺される運命となった彼らは残された一週間で何を願い、どう生きるのか?
「《汝の旅路に幸あらんことを(Bon Voyage)》」
これは罪人に最期の時を与える猫耳姿の殺し屋と、彼女に殺される者たちの交流を描いた命と別れの物語。
※電子版は紙書籍版と一部異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください
感情タグBEST3
「一週間後、あなたを殺します」という自己紹介とも思えない声掛けで始まる殺し屋(コードネーム33:通称ミミ)と、ターゲットとの七日間を描く短編が連なり、生きる事、人を愛する事、自らの罪を受容れる事、許されぬ罪に立ち向かう事、様々な思いが交錯する物語。
殺し屋組織の実働部隊の一員であるミミに、何故ターゲットに一週間の猶予を与える裁量があるのか疑問に思い読み始めましたが、それも含めてミミの生い立ちが明かされるのは興味深かったですね。
明らかに本作は完結していますが、この作家さんの次回作を読んでみたい期待が生じました。
Posted by ブクログ
著者初読。KU。
幼田ひろ『一週間後、あなたを殺します』は、「死」を題材としながらも、むしろ「生きることの意味」や「人と人との絆」を鮮やかに浮かび上がらせる作品でした。殺し屋の少女ミミが標的に与える一週間という限られた時間は、彼らにとって自分の人生を省みる猶予であり、忘れていた想いや大切な人との関わりを取り戻す機会として描かれます。
その過程を静かに見つめるミミ自身もまた、心の内に小さな変化を芽生えさせていく様子が印象的でした。一話ごとに異なる人間模様が丁寧に紡がれ、やがて全体がひとつの物語として結実する構成は見事で、読後には深い余韻が残ります。
切なさと温かさが同居する読書体験を通じて、「限りある時間をどう生きるか」という普遍的な問いを改めて突きつけられました。大切な人との時間を慈しむことの尊さを思い出させてくれる、心に響く一冊です。