あらすじ
「ほんとうの幸い」って、何だろう?
瑞々しく、愛おしく、胸に響く傑作青春小説!
県立野亜高校の図書室で活動する「イーハトー部」は、宮沢賢治を研究する弱小同好会だ。
部長だった風見先輩は、なぜ突然学校から消えてしまったのか。
高校生たちは、賢治が残した言葉や詩、そして未完の傑作『銀河鉄道の夜』をひもときながら、先輩の謎を追い、やがてそれぞれの「ほんとう」と直面する。
今を生きる高校生たちの青春と、宮沢賢治の言葉が深く共鳴する感動長編。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
チカ。本当の幸い。キョンへ。郡司先生。マスヤス。風見先輩。万琴。自分にとっては善き事。全員の善き事とはならない。でもその思いは嘘じゃないし必ずしも間違いではない。
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ラストシーン、ビブリオトークでの
"ほんたうにいいこと”をしたいと思っている。
だけど、みんな間違うんだ。残念ながら、絶対に。それは、自分にとっての善きことが、他人にとっての善きこととは限らないから
というところがズーンときた。
チカと風見さん、キョンへとチカ、マスヤスと風見さん、チカと美濃部先輩、風見さんと美濃部先輩…
それぞれの関わりが、絡まりあって物語をおもしろくさせる。
単体で読んでもおもしろいけれど、「図書室のはこぶね」を先に読んでいたからこそのおもしろさがあり、野亜高校図書室を舞台にした、他の三時代(伊吹さん、郡司先生たち、図書室のはこぶねの主人公たちがそれぞれ高校生だった時代)も垣間見える。
「図書室のはこぶね」もそうだったけれど、「銀河の図書室」も、高校演劇で語ってほしいセリフや名場面が散りばめられている。
作中のビブリオバトルで登場する本など、実在する本たちを読みたくなる物語でもあった。
Posted by ブクログ
野亜高校のイーハトー部部長の風見が「ほんとうの幸いは、遠い」と言うメッセージを残し不登校になった。2年のチカとキョンヘ、1年のマスヤスは宮沢作品から風見の残した謎を読み解いてゆく、三人三様の悩みを持ちながら。最終章で明かされる風見に起きた出来事、真実。自分の認識する良きことが他人にとってはどうなのか、風見は純粋すぎるからこそ悩み苦しみ動けなくなったのだろう。今年初めに伊与原新さんの青ノ果テを読んだが、そちらも高校生の不登校から始まる物語だったが、それとはまた違った宮沢作品へのアプローチ、青春物語だった。
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「ほんとうの幸いは、遠い」この銀河鉄道の夜に出てくるフレーズを最後に連絡が途絶えた風見先輩。
残されたイーハトー部の3人はこの言葉の意味を考え続ける。
そしてそれと共に自分たちが抱える痛みとも向き合っていく。痛みと共に前を向き、それぞれが歩み出す姿に胸を打たれました。
ラストのイーハトー部の卒業式も本当に感動しました。
チカのビブリオトークは圧巻だったし、何より風見先輩にみんなの想いがちゃんと届いたことが本当によかった。
今まで宮沢賢治は難しそうであまりちゃんと読んだことがなかったけれど今はすごく読んでみたい。
そしてまた改めてこの本を読み直してみたいなーって思います。
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久しぶりに爽やかな読後感。高校生同士のやりとり特有のむずがゆさ、イタさ?、みたいなものがありながら、最後まで気持ちよく読めた。風見先輩が学校に来れなくなった理由もなるほど〜だったし、大人になった私たちも同じようなもの抱えてるよね、とじーんと来た。クライマックスの盛り上がりもすごかったし、納得のラストだった。よい課題図書でした。
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2

みきか

【書評#3『銀河の図書室』】
1

みきか
2025年8月17日 09:05
私は、夏休みの一日を使って『銀河の図書室』を読んだ。この本は、YouTubeで知った。やわつむりさんという方のチャンネルで、みんなで同じ課題本を読み感想を伝え合う企画をしていて、私も参加したのだ。
主人公チカはイーハトー部という部活に所属している。そこでは宮沢賢治の本を読んだり、部員が読んだ解釈を話し合い、追求していったりする活動をしている。チカは現在高校2年生で、3年生の先輩である風見さんに惹かれるように入部した経緯を持つ。しかし、風見さんは高校2年生の秋、修学旅行後
「ほんとうの幸いは、遠い。」
というメッセージを残して学校に登校しなくなってしまった。
チカの同級生で、仮入部生としてイーハトー部に所属するキョンヘは、チカと共に風見先輩の残した謎を追う。言葉に秘められた苦しみを紐解き、救いに行こうとする。自身の弟を失った際にも、宮沢賢治の本が出てくる。弟はとある病気に罹っていて長生きできないことがわかっていた。だが、「普通」でない自分の家庭環境や自分の弟を消化しきれないまま悶々としていた。失うとわかってから、弟にしてあげられなかったことを悔いてしまう。弟が好きだった『風の又三郎』を岩波少年文庫版で手に入れ、棺に入れてあげようとするその思いに胸を打たれた。
チカの一つ下の後輩、マスヤスはマイナーなイーハトー部に自身から飛び込んでくる変わり者だ。しかし、堂々とした姿や溌剌とした発音など輝く一面を持つ。結果、軽音学部と兼部しながら活動するようになっていく。
元気いっぱいに見えるマスヤスにも、隠れたトラウマがあり、人間味を感じる。彼女は一つ下の学年と言うこともあり、今後の高校生活でも宮沢賢治の本を、そしてそれ以外の本もたくさん味わい尽くしていってほしい。
そして切って切れないのが高校3年生の風見さん、そしてクラスメイトの美濃部先輩。明るく朗らかで善い人である風見さんは、自分自身の「善いこと」を全力で行っていく人間だ。チカも、美濃部先輩もそれはわかりきっていた。しかし、一つ一つの行動にはその相手がいて、その人の持つ背景は風見さんの見ているものと異なるかもしれない。
自分のよかれと思ってしてきた「善いこと」のせいで、目の前の人の心や身体を傷つけることになってしまっていたと知ったら――、自分が外に出てなんらかの行動をすることで、目の前の人の人生を狂わせてしまったら。
”ほんたうにいいこと”
”ほんたうのさいはひ”
が何なのか。そして私たち、私にとってのイーハトーブはどういうところなのか。
考えて、考えて、考え抜いた先に行う行為こそが
「ほんとうにいいこと」
であるのではないだろうか。
イーハトーブを実現していくために行動し続けていくことその過程そのものが、
「ほんとうのさいわい」
なのではないだろうか。
怖かったら1人ではなくてもいい。
大事なのは自分にとってのイーハトーブを思い描き、全力で行動して生きていくことなのだと思う。
私は、これからの人生で自分なりのイーハトーブを見つけて、その実現に向けて「ほんとうにいいこと」をしていく。「ほんとうのさいわい」の傍にある穴が怖くても、周りの人に助けを求めたり一歩進んで止まってしまっても、それでも全力で目の前の困難や困っている人に向き合っていきたい。
Posted by ブクログ
え、おもしろ
読みやすいのにその読みやすさからは考えられないくらい心を動かされた
笑っちゃうくらい面白いとか、感動するとかではないのだが、他にそう相当する語彙が私にはなかったので1番近しい心を動かされたを選んだ
深い伏線がちりばめられてる訳ではなく、登場人物がそれぞれ悩みを抱えていて、高校生活と宮沢賢治を通してその悩みを解消していくのがメインのお話だ
伏線がない分、容易に展開を想像できるが、悩みの解消については宮沢賢治の作品が絡み、想像つかなかった
しかし、読んでいる際にはむだに伏線について考えずに読み進めるだけで登場人物たちの悩みも解消されていく
この本は何も考えずに読める
そのはずなのに読んでるときも、読み終わったあともなんとも言えない感情に支配された(上では心を動かされたと書いた)
言ってしまうと読書家でバリバリ考察したい!ってひとには不向きなのかもしれない
この本が向いてるのはこれから本を読む習慣をつけようとしている人や、読書が苦手な人だと思う
この本を読めば、読書が好きになる
そんな本だ
Posted by ブクログ
どこか米澤氏の古典部シリーズを想起させるような、青春学園小説でした。
「善意」というものは受け取る側の気持ちや背景によって変わります。その人の気持ちや背景を常に完璧に理解することは不可能であり、そうしないといけないのであれば誰も人に親切にしようとはしません。「善意」とは、一定は自分本位になってしまうのは仕方のないことではないでしょうか。
風見先輩と一緒に過ごす最後の1年間を覗いてみたいです。きっと楽しいのでしょう。
Posted by ブクログ
大切なことは自分本位にならず、想像力を働かせることかもしれない。
人は失敗するし、失敗しない人なんていないわけで、お互いに許し合うことができればいいけれど、なかなかできることじゃない。お互いの間違いを認め合って許し合う最後は青春そのものって感じがして綺麗だった。