【感想・ネタバレ】検証 大阪維新の会 ――「財政ポピュリズム」の正体のレビュー

あらすじ

結党から十数年の間に地域政党の枠を越え、国政でも存在感を見せる維新の会。公務員制度や二重行政にメスを入れる「身を切る改革」や、授業料の完全無償化が幅広い支持を得る一方、大阪都構想や万博、IRなどの巨大プロジェクトは混迷を極める。“納税者の感覚”に訴え支持を広げる政治、そしてマジョリティにとって「コスパのいい」財政は、大阪をどう変えたか。それは誰に手厚く、誰に冷たい政治なのか。印象論を排し、独自調査と財政データから維新の「強さ」の裏側を読みとく。

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Posted by ブクログ

一定程度の大きな存在感を示す他方、「イメージ」であれこれと言われているばかりで「実際?」という場合が在るのだと思う。本書はその「実際?」に踏み込んで行こうとする内容だ。大変に興味深い。
自身は北海道の小さな街の住民で、「地域政党」としての「維新」とは関係性が薄い。国政進出をしている「維新」ではあるが、全国の津々浦々で候補者が在るのでもないので、国政選挙でも関係候補と出くわさない場合の方が寧ろ多いかもしれない。それでも、結党して10年余りというような政党が一定以上の存在感を発揮しているということに注目はしてしまう。「アレは何?如何なっている?」という程度には漠然と思う。その「アレは何?如何なっている?」に一定の解を与えてくれるのが本書であると思う。
強力な発信力を持って絶大な人気を誇った知事が先頭に立って起した地域政党であった「維新」である。と言って地元の大阪での一時的な人気というような話しではない。一定の存在感を発揮し続ける政党ということになっている。そのことに関して、本書では「大阪の有権者?」、「主張していることと、展開している施策?」ということを探り、「維新」の路線を「財政ポピュリズム」という造語で呼んで纏めている。
大阪は、他の地域に比べると「大阪は!」という独立的な機運、他所とは一味違う力を持っているであろうという自負や期待のようなモノが大きく、少し個性的というように他地域からは見えると思う。そういう訳で、有権者が少し独特な傾向を帯びていて、それ故に地域政党が大きな存在感を発揮しているように考えてしまうかもしれない。が、実はそうではない。大阪の有権者が、他の地域の有権者と比べて特殊な傾向を帯びているとは言い悪いのだというのが本書が導いた、種々の調査を重ねた結論だ。
結局は是々非々で様々な政策が有権者に受け止められ、肯定的にも否定的にも評価されているのは「普通」なのだ。が、著者が「財政ポピュリズム」と呼ぶ路線で有権者を強力に掴む故に「維新」は存在感を大きくしている。それは大阪で始まったことだが、或いは少しずつ日本中に拡がって行こうとしているのかもしれない。
著者が「財政ポピュリズム」と呼ぶ路線は、従前の“既得権益”的な財政支出を批判、糾弾するようなことをして、財政支出を多くの有権者に再配分して支持を得るというようなやり方のことだ。本書の肝である。他方、従前の“既得権益”的な財政支出を批判、糾弾するような流れで、所謂「小さな政府」的な、財政の縮小を謳っているような印象は強い。しかし、実際には各地の大都市の中で大阪の財政支出の規模は、相対的に寧ろ大きい。
こういうような様々な事柄に関して詳しく調査を重ねて分析的に論じているのが本書だ。個人的に思ったのは、最近の有権者の志向に近寄った辺りの主張を新興政党として元気に展開し、それが一定の力を得て、継続的な支持を得ているというのが「維新」という「現象」なのかもしれないということだ。一定以上の存在感を示してはいるが、是々非々の有権者によって、必ずしも支持されていないかもしれない感じの路線、施策、または意見が二分するような事柄も在る。
「イメージ」ではない、「詳しく調べて考えるとこういう感じ」を打ち出す本書は、昨今の様々な動きを考える上で、大変に有益な材料となり得ると思う。出逢えて善かった一冊だ。

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2025年02月13日

Posted by ブクログ

大阪維新の会=新自由主義、維新の支持者=維新の信奉者、維新政権で大阪の経済成長が実現した、等々、これまで言われてきたイメージが現実をきちんと捉えたものなのか? それを様々なデータ分析を持って考えていく。本書を読むことで、自分が持っていた大阪維新のイメージが今までと大きく変わったり、よりクリアになったりする経験自体も面白いが、それ以上に、データの分析の仕方や見方の手本を具体的事例で持って示してくれているところがさらに面白い。

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2025年06月05日

Posted by ブクログ

政策と維新支持の分析を通して、大阪で巻き起こった財政ポピュリズムとその限界についてまとめた論考。
財政の普遍主義は往々にしてバラマキとの批判を浴びるが、維新は公務員人件費の抑制を通じて巧みにマスコミを味方につけ、タレント首長のテレビ露出もあって、財政を抜きにしても見事ポピュリズム政党として成功した。このあたりの戦略は本書の守備範囲外だが、そこは他でも多く語られている。
本書は今まであまり語られていなかった財政の部分に光をあてているところが注目される。

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2024年09月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

検証と結果が端的に描かれていてとても読みやすかったです。

一部の既得権益層への予算配分を解体し、それをできるだけ多数の人に頭割りで資源を配り直す、財政ポピュリズム。

それまで財政の恩恵を感じられなかった人びとに対して資源を配り、幅広い支持を得る政治スタイル、とある。

成果もあるし、課題もある。

改革が実現したこと、できていないこと、を検証し、課題を考察する、その方法についても学べる。

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

感覚的に捉えていた大阪維新の会に対する根拠を用いた見方。マイノリティの利益を削りマジョリティの自己利益に結びつく政策を行い、大阪府民からの支持を勝ち取ったことが理解できた。

「これまで、税金や社会保険を負担させられながら、そのリターンを享受できたという実感が乏しい人びとは、たとえ誰かが困ろうと、自己利益が確保される政治に魅力を感じるかもしれない。」と、まさしくその通りではと感じた。

しかし、「注意深く考えなければならないのは、それでも財政は、個人の合理性を超えた 集団の意思決定によって駆動し、さらにそれは回りまわって全体の利益につながってきた」「さらに識字率の上昇は、社会における複雑な意思疎通を可能にする。知識や技術が一部 の人の占有物でなくなることによって、さまざまなイノベーションが生じる。教育は個人の占有物でなく、多くの人びとが身につけることによってその利益を社会全体で共有でき るようになる。経済学では、こうした個人の利益を超えて全体で生じる経済的利益を「正の外部性(外部効果)」と呼ぶ。大事なのは、先の公的教育の供給のような事例では、個人が自分に利益があること以外 を行わないと合理的に振るまえば、正の外部性が生まれないことである。例えば、自分の子どもに対する教育だけを望んで、公的な教育サービスに対する負担を渋れば、それは回りまわって全体で得られたはずの正の外部性を消し去ってしまう。そして、外部性が消え去った貧しい未来で暮らすことになるのは、他ならぬ自分の子どもたちである。この矛盾 を乗り越えるためにこそ、個人の利益を乗り越えて、社会全体の価値を実現しようとする行為、つまり財政がある。」と記載のとおり、自己利益だけでなく社会全体の価値としての財政を考えるべきなのか。

とは言え、大阪維新の会による政治は従前のそれよりも優れている部分が多いと実感しており、果たして別の政党において適切な財政ができるかというと甚だ疑問ではある。

IR等の財政ポピュリズムではない政策に期待したい。

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2024年11月06日

Posted by ブクログ

地域政党大阪維新の会に対しては肯定にしろ否定にしろ極端に振れがちではあるが、本書はやや否定的ではあるものの、それでも比較的公平に維新を検証している。

ただいかんせん検証ボリュームが少ない。国政政党の日本維新の会や、有象無象の維新の会を名乗る政党も含めてより検証を広げれば、「維新」という言葉が持つ魅力魔力が見えて来るのではないか。
自分はそもそも明治維新に魅力を感じないので、日本人が使う「維新」にはまず疑ってかかるのだが。

ジュンク堂書店大阪本店にて購入。

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2024年08月24日

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