あらすじ
ドイツ生まれのユダヤ人少年の幸せな日々は、突然終わりを告げた。ゲットーへの「再定住」と父の死。強制収容所への移送と母の死。死があまりに身近な場所で、人間が失うことのできるほとんどすべてのものを失いながらも、運と知恵を頼りに少年は生き抜いた。移送された2011人の最後の生き残りとして、なお寛容を語った魂の記録。
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Posted by ブクログ
これまで映画等でアウシュヴィッツについて知っているつもりでいたが、実態を本著で読み、改めて壮絶さを実感した
印象的なのはこの経験をしたオースター本人が、過去を見つめるには寛容が大事 と言っていること
争いが無くなることを願ってやまない
Posted by ブクログ
ケルンに生まれたユダヤ人の少年が3つの強制収容所を奇跡的に生き延びてアメリカ人になるまでの話。小説ではなく個人の伝記で、比較的裕福だった家庭で生まれたハインツが小学校の入学式に始まるユダヤ人迫害の段階を語る内容。初期は強制収容所から帰ってきた人がいたり労働せず軟禁するだけだったが、戦争の状況も相まって徐々に悲惨な環境になっていく。
ユダヤ人ではあるがドイツ語が母語のため、報告係になったり特別任務を任されたりしていた。タイトルの「厩番」だったのは2か所目の強制収容所で、当時まだ移動や荷物の移動に主力だった馬の生産にティーンエイジャーを選抜し妊娠した牝馬を中心に世話を命じられたことに由来する。
強制収容所から解放されてフランスへ行きさらに親戚のつてでアメリカに渡り、国籍を取ってアメリカ人として生きることにしたハインツ(=ヘンリー)。70年ぶりにケルンへ追悼式典に出席するために戻り、その後逝去する。
歴史で学んでいると年号と単語の符号にしか見えなかった出来事も、ひとりの人生の流れで考えると捉え方が全然変わってくる。当事者の(しかも若い世代の)貴重な記録として、ホロコーストを忘れさせないための1冊となるだろう。