あらすじ
名画の力とは、現場で作品に向き合ったときこそ発揮されるものだ――。前著『欲望の美術史』『美術の誘惑』『美術の力』『名画の生まれるとき』と同様、『産経新聞』夕刊に毎月連載されている「欲望の美術史」の記事を中心に、別の媒体に載せた記事や新たに書き下ろした原稿を加えて大幅に再構成した一冊。伝統の力から現代美術、美術館まで。博覧強記の美術史家による、美術の魅力をより深く味わうための、極上の美術史エッセイ。
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Posted by ブクログ
美術史家・宮下規久朗氏の新刊。
絵の掲載は十分で、全てカラー、各章が完結で安定の読み心地だった。
近年開催された美術展にフォーカスし、代表作を解説されていたのが目新しい。
自分が訪れたものも多く、美術展の印象の振り返りにもなった。
「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」展で展示された、レッサー・ユリィ『夜のポツダム広場』は実際に会場で見たが、確かに印象深いものだった。
1920年代の戦間期のドイツで、敗戦と経済混乱からの復興、そしてその後に起こる新たな歴史の予感を、にじんだベルリンの夜景を通して描いている。
宮下先生といえばカラヴァッジョは定番だが、今回はアメリカのカラヴァッジョという視点が新鮮だった。
『リュート弾き』を通して見た、アメリカのMETとロシアのエルミタージュ美術館の比較は興味深く読んだ。
内容は既出のものと重複もあったが、宮下先生の本はいつ読んでも、解説自体が芸術だと感じる。