あらすじ
「マカン・マラン」著者が描く感動のファミリーヒストリー
昭和39年、羽田の町工場で働く良彦のもとに
亡き父の日記が届く。
戦時中に「非国民」と周囲から罵られ、
終戦後も自室にこもり続けた父を、
良彦はかつて軽蔑していた。
しかし、日記を紐解くと、
そこには父が口にすることがなかった想いと壮絶な人生、
そして良彦の家族三代をめぐる数奇な運命が記されていて――。
解説・中島京子
※この電子書籍は2021年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
戦前から戦後にかけての、古川という農村の、一家三代の家族史。太平洋戦争下の悲劇を描く小説は数多くあるが、この本は、戦地を描いたものでも、原爆や空襲を描いたものでもなく、戦争の直接的な被害は受けなかった家族の物語だ。今となっては失われつつある農村の風俗や、方言が印象的だった。
祖母の世代にとっては、戊辰戦争がそう遠くない過去であり、父にとっては、関東大震災から太平洋戦争が一続きの過去であり、子供たちは、戦後の復興と高度経済成長の担い手として、東京で働く。
総論としては、中島京子氏による解説が素晴らしく、それ以上に私が語る言葉が無い。
個人的には、登場する女性たちが皆個性的で、好きだった。祖母も、母も、叔母も。内面的に自立しており、激動の時代にも自分の価値観を揺るがせる事なく、それでも現実から目を逸らす事なく、たくましく家族を支えていく。というか、この一家は男性たちが皆、それぞれに、頼りないのだ。愛を貫こうとした祖父はすぐに体を壊して亡くなるし、軍国主義に同調しなかった賢明な父は、それゆえに神経症になり自室に篭り続ける。尊敬できる立派な、でも家族を守る事はできない、か弱い男たちであった。