あらすじ
「朝目を覚ますと、自分が虫けらに変わっていた」――これって、もしかして私のこと?
主人公が「虫」になる小説の何がそんなにすごいのか? 2012年のテキスト刊行時は「自分を知るための鏡」として『変身』を紹介した著者だが、ポストコロナの現状を踏まえ、この作品は「個の孤立」だけでなく「家族の孤立」として読むことも可能だと説く。そこで書き下ろしの「ブックス特別章」では、ヤングケアラー、ビジネスケアラーの問題とからめた読み解きを試みる。カフカが遺したノートに「自分にあるのは人間的弱さだけ。だが、それは見方によっては巨大な力となる」という言葉がある。カフカ没後から100年、不安と孤独を抱える人が多い今、個の弱さを知ることで人と人とのつながりの大切さを考える「介護小説」として読み直す。
【内容】
はじめに――カフカを読むことは自分を知ること
第1章 しがらみから逃れたい
第2章 前に進む勇気が出ない
第3章 居場所がなくなるとき
第4章 弱さが教えてくれること
ブックス特別章 ポスト・コロナの『変身』再読
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Posted by ブクログ
フランツ・カフカの名著「変身」を深掘りする。
NHKの名著を様々な側面から深掘りし読み解く教養番組「100分で名著」の書籍版。番組もわかりやすいが私には自分のペースでささっと読める書籍版がよかった。
カフカの変身は好きな作品だが、他のカフカ作品同様に暗く不条理。作者も暗く理解されない孤独の人生を歩んだのかと思いきやそうでもない。中島敦がクヨクヨ悩むタイプの作品を書きつつ自身はそういう人間と正反対の性格だったということに似ている。人間は傍目には恵まれていようと内面に人には理解できない闇を抱えているなんてことはよくあるものでそういった言語化できないやるせなさを作品として昇華しようとした時こういう読む人の解釈に任せる占いのような作品が生まれるのだろうか、と感じた。