あらすじ
東京は浅草、浅草寺近くに昭和のはじめから存在する銭湯「明日の湯」。 三代目の三助は現役の大学生。失踪した父親のかわりに毎日番台に掃除にと、雑務に駆りだされる日々。そのせいで彼女もできないし、就活はおろか、単位も危ない。時代遅れの銭湯なんか継ぐ気はない――のに、毎日珍客が訪れ、三助はしぶしぶ彼らの悩み解決に手を貸すことに――。温かなお湯と人情が疲れた心と身体をあたためる、ほっこり銭湯ミステリー!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
東京の下町にある銭湯「明日の湯」の三代目三助の元に起こる騒動。
今流行りの「お仕事小説+日常の謎+恋愛要素」という作品のひとつでしょうが、実はお仕事小説としてもミステリとしても恋愛要素も今ひとつ中途半端な感じがするのです。だからと言って面白くなかったかというとそうではなく、とても居心地のいい作品だったのです。それは明日の湯という銭湯の心地好さに通じるものなのでしょう。
銭湯も斜陽産業の代表格のひとつです。だから現実として廃業する所も多くあります。存続を賭けて新しいアイデアやサービスを投入する所もあります。でもここで描かれる明日の湯は(もちろん経営が厳しいという描写があるけれども)そこをメインとしていないのですね。日々の営みとしての銭湯が描かれています。その中で起こる騒動と謎。まずは何をともあれ明日の湯自身の魅力を前面に書かれていたからこそ、居心地がよかったのかも知れません。
ばあちゃんが急に店を畳むと言い出した理由、不登校となった女子高生の気持ち、母の元に現れた謎の女性、脱衣所に忘れられた海外の少年、不意に戻ってきた父親。三助はその騒動にてんてこ舞いになりながらも、自分と明日の湯の関係を見出していきます。