【感想・ネタバレ】世界宗教の経済倫理 比較宗教社会学の試み 序論・中間考察のレビュー

あらすじ

※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。

日経BPクラシックス 第20弾
ウェーバーの宗教社会学は大きく分けて、プロテスタントの倫理を考察する『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』および『プロテスタンティズムの諸宗派と資本主義の精神』の部分と、
東洋と中東の宗教の倫理を問う『世界宗教の経済倫理』で構成されているということである。
この『世界宗教の経済倫理』は具体的には、第一部で中国の儒教と道教を考察し、第二部でインドのヒンドゥー教と仏教を考察し、第三部ではユダヤの古代ユダヤ教を考察するものとなっている。
そしてウェーバーはこれらの三つの地域における宗教的な経済倫理は、プロテスタンティズムとどのように異なり、それが資本主義の成立や興隆の実現をどのようにして妨げたのかを、丹念に追跡していくのである。
これらの三部の考察は大部な著作として残されているが、これらの個別研究とは別に、ウェーバーは宗教倫理と経済の関係について考察する総論に該当する文章を、『世界宗教の経済倫理』に含めている。
それが冒頭の「序論」と中国の儒教と道教の考察が終わったところで執筆された「中間考察」である。
「序論」には、これらの世界宗教の考察の方法論的な点検が行われるが、これは「中間考察」でも続けられており、これは中間的な考察であると言うよりも、序論の議論をさらに展開した文章となっている。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

『職業としての・・・』『プロ倫』に続いて、本シリーズ三冊目のウェーバーである。『プロ倫』でプロテスタンティズムと資本主義発展のダイナミズムの関係を論じたウェーバーが、それを一般化すべく、儒教や仏教など他の世界宗教との比較において、その教義体系や担い手としての社会層の特質を浮き彫りにし、それらが世界観や生活様式の合理化にいかなる影響を及ぼしたかを考察する。「序論」と「中間考察」はその方法論と骨子を述べたもので、壮大なウェーバー宗教社会学の肝が簡潔にまとめられている。

学問的な厳密さでは旧訳に敬意を表するが、概念過多のウェーバーの複雑な文章を忠実に日本語に移せば、一行一行辿るだけで閉口してしまうのもやむを得ない。中山氏の翻訳は読み易さで定評があるが、後ろから訳し上げるのではなく、文を区切るなどして極力前から訳し、訳語の選択にも「価値自由」→「価値判断を含めずに考察」、「行為の実践的起動力」→「行動させる実際の原動力」、「規定的」→「決定的な役割を果たした」等の工夫が見られる。

厳密な方法意識に貫かれたウェーバーの著作には、いくつもの前提や留保が張り巡らされており、ドイツ語原文と言わぬまでも直接翻訳にあたってみなければ微妙なニュアンスはわからない。例えば、ウェーバーが「存在が意識を規定する」というマルクスの唯物史観を逆転させたとよく言われるが、ウェーバーは唯心論に立ってプロテスタンティズムが資本主義を生んだと言ってるわけではない。マルクスにしてからが単純な経済決定論ではないが、ウェーバーの真意は一方を他方の単なる「反映」や「関数」と見做すのではなく、双方向の因果関係を考察すべしということだ。ともあれ評者のような一般読者に手近な解説で済まさず原典に向かおうという気を起こさせてくれる好訳だ。

0
2023年12月30日

「ビジネス・経済」ランキング