あらすじ
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西洋絵画の巨匠とその名作を紹介し、大人気のYouTubeチャンネル『山田五郎 オトナの教養講座』(チャンネル登録者数は58万人)にアップされた動画の中から、印象派とそれに連なる画家たちを紹介した回をまとめたものが本書です。
隣国イギリスで印象主義を先取りしていたターナーにはじまり、フランス印象派に直接の影響を与えたミレー、クールベ、マネ、ブーダンら広義の写実主義者を経て、印象派の中核を担ったバジール、モネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、ドガ、カサット、モリゾ、カイユボットに加え、印象派展終了のきっかけとなった新印象主義のスーラ、印象派と20世紀美術を結ぶ架け橋となったポスト印象主義の、セザンヌ、ゴーガン、ゴッホと、計18人を紹介。個々の画家の芸術と人生だけでなく、印象派が西洋絵画史の中で果たした役割も、ざっくりわかる構成になっています。
YouTube動画と同様に、本書も山田五郎さんと見習いアシスタントとの面白い掛け合い形式で構成されていて、楽しみながら奥深いところまで解説されている充実の1冊。この1冊を読めば「印象派のすべて」がわかるはずです。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
YouTubeも見た上で購入。
やっぱり買って良かった!
とてもわかりやすい図等が使われていて、大満足。
ふせんかインデックスを貼って好きなところをいつも見返せるようにしたい。
Posted by ブクログ
古典主義→ロマン主義→写実主義→印象主義
歴史・宗教→同時代の現実→見たまま→感じたまま
同じ風景でも、写実主義のクールベは崖のディテールを、ブーダンは筆跡を活かして空を描き、モネは海面に映った夕焼けの光を描いている。
【印象派前】
・ターナー…イギリスで30年前に印象派を先取りした色彩の画家。
・ミレー…農民画家ではなく歴史(宗教)画家になりたかった。落穂拾いはキリスト教のルツ記が元。
2月革命で労働者が力を持ち、農民の絵を描かざるを得ない状況があり、評価もされた。
・クールベ…超破天荒。サロンに歯向かって初の個展を開く。
・マネ…オランピアの作者。印象派ではないが、攻める画家。面倒見が良く、リスペクトする若い画家が集まって後の印象派となった。
しかし、プライベートでは、妻の子どもは自分の父親の子かもしれないという苦悩を生涯背負った。妻は父親の愛人で、可愛がっていたマネの後輩にも手を出すような女性だったがマネは溺愛していた。
→モリゾはマネを心底尊敬していたが、弟子にしてもらえず、マネは妻に似た女性を唯一弟子に取った。
・ブーダン…海景画家と呼ばれる空の王者。
カリカチュアで稼いでいたモネ少年に本格的に絵を学ぶことと、外で風景画を描くことを勧めた。
外の光で描く、タッチを生かして描くという影響を印象派に与えた。
【印象派】
・バジール…実家が裕福な元医学生画家。性格もよく、皆の健康を気遣い、貧しい仲間たちを経済的にも精神的にも支えた。
金がなく自殺未遂や無心をするモネの絵を大金で買ってやり、自分は節制してモネを支えた。
普仏戦争で若くして戦死したが、仲間から愛された。
・モネ…「印象、日の出」は実はそこまでディスられていなかった。
日傘をさす女は3枚描かれているが、妻のカミーユと息子を描いたのは1枚目のみ。あとの2枚はカミーユを亡くした後に描いた浮気相手の娘で、顔は描けなかった。
修行のような睡蓮の連作はモネにとって鎮魂の祈りで、亡き妻カミーユを思って、極楽浄土に咲く蓮の花を描き続けたのではないか。モネは日本が大好きだった。
・ルノワール…モネと筆触分割を開拓したが、人物画には筆触分割は合わず、印象派から離れる。
・シスレー…最も印象派らしい印象派とされる。生きている間には絵は売れず、生涯印象派を貫いて貧しい生活を送った。(印象派の作品が高値で取引されるようになったのは20世紀に入ってから。モネは長生きだったために生きている間に作品が売れた。)
モネ、ルノワール、バジール、シスレーは大親友。
シスレーの実家は裕福だったため、バジールとシスレーはモネ、ルノワールに肖像画を発注して買い取ることで生活を支えていた。
・ピサロ…印象派最年長。庶民のモネ派とブルジョワドガ派の仲介役。自分と異なる世代、画風も認めて自ら取り入れる懐の深さがあったが、点描を印象派に入れようとして猛反対に遭い、印象派展が終わる。
・ドガ…特殊な性癖の持ち主で、頑固で口も悪く、女性差別主義者だった。晩年は目が見えなくなったが、裸の少女のフィギュアを蜜蝋で大量に作った。
・カサット…ドガを師と仰ぎ、ドガに罵倒され続けながらも、難儀なドガを生涯支えた。
・ベルト・モリゾ…ブルジョワドガ派と庶民のモネ派の仲介役で、ドガの扱いに大変苦労した。マネを慕い続けるが思いは実らず、マネの弟と結婚した。
カイユボット…実家が莫大な資産家で、展覧会を開催し、仲間の絵を買い取り、印象派展を生前も死後も支えた。
【ポスト印象派】
スーラ…点描。もともとモネ派とドガ派で仲違いを繰り返していたが、仲裁役のピサロがスーラを印象派展に招き入れようとしてモネ達の強い反発を買い、印象派展は終了した。
セザンヌ…写真が登場した19世紀、リアルさを追求してきた画家達が悩んでいた中、絵が下手だったセザンヌは、別にそっくりに描かなくていいじゃん!絵と現実は別物!として開き直った。下手な絵に巨匠アングルのサインまで入れてしまう自己肯定感の高さと、下手でも描き続ける強さ。
遠近感も質感も表現できなかったが、時代が彼に追いつき、ピカソも強い影響を受けてキュビズムを始める。
ゴーガン…最期はタヒチで絵画を描き、原色ベタ塗りのクロワゾニスムという画法でポリネシアンの信仰を描いた。
ゴッホの弟テオが頼み込んで、わずか2ヶ月だけゴッホと一緒にアルルに住むが、ゴッホの耳切り事件が起き破綻。売れるタイミングを逃し続けて亡くなった。
ゴッホ…画商の弟テオのお金で絵を買い、生活費もあればあるだけ使い込み、お金は全て弟が出してくれていた。アルルの黄色い家には誰も来なかったのでテオが画家達に声をかけて、お金を出してやっとゴーガンだけがきてくれた。耳切り事件で切り落とした耳は馴染みの娼婦に届けるなどの行動で入院となる。娼婦ではなく、そこに通っていたゴーガンに届けたのではないかと筆者談。
銃で自分を撃ってその場で自殺したとされて映画化されているが、実際は避暑地に遊びにきていた不良に遊ばれて撃たれた可能性が十分にある。それでもゴッホは不良少年たちを責めず、遊んでやっていた。
*筆触分割
印象派が開発した、チューブから出したままの絵の具をそのままブロック状に並べる技法。絵の具は混ぜたり重ねたりすると暗くなる(減色混合)ため、色のブロックが、見る人の脳内で明るいまま混ざり合うと同時に、視覚混合の不安定さが光と色彩の揺らぎを感じさせる一石二鳥の技法。
タッチを残さずグラデーションで描くという古典派の否定であり、当時パリ万博で流行った日本画の影響で平面的な絵を描くことも、遠近法を用いる西洋画家の伝統を破ることとなった。写真が発明されたこともあり、写真には表現できない雰囲気を表現することに挑んだ。
*点描
工学理論に基づきスーラ達が開発した科学的な技法。補色を混ぜずに並べることでハレーションを起こし、加色混合のようにより明るく視えることを狙った。
スーラは、絵には外枠まで点描で描き、外枠の色調バランスも絵の色調に合わせて補色を使ってさらに明るさを表現した。ポスト印象派の画家のほとんどが点描を取り入れた時期があるほどのインパクトだった。
Posted by ブクログ
題名に偽りなし。本当にめちゃくちゃ印象派のポイントが明確にわかるし、それぞれの画家の業績や人柄までも分かってしまう。語り口もユーモアを交え、適当に素人のアシスタントの合いの手も絶妙。裏事情的なこともいっぱいあって、これまた面白い。というかあきれることも多い。
印象派の礎となった、ターナー、ミレー、クールベ、ブーダン、ヨハン・ヨンキントンなどのことが詳しく述べられていて、なるほどと思うことがたくさんあった。オランダ人のヨンキントンがフランスに空を大きく描く風景画と外の光で描くことを初めて持ち込んだとは初めて知った。オランダは山がなく、空が大きく見える土地だからね。
金持で、印象派の画家たちと親しく混じり、金銭面で多大の援助をした、自身も画家だったバジールやカイユボットの生涯もよく分かった。彼らのことも含めて、画家たちの交友関係にもかなり触れられているのは興味深い。
ベルト・モリゾにも一章割かれているのはいいね。マネがぽっちゃり女性が好きで、細身のモリゾを弟子に取らずに、ぽっちゃりのエヴァ・ゴンザレスを弟子に取ったのはそのせいだろうし、奥さんのシュザンヌもぽっちゃり。モリゾはこのシュザンヌを嫌っていたらしい。
このシュザンヌについても、やれやれという感じだ。マネの親父がティーンエイジャーの3兄弟のピアノ教師に、21歳のシュザンヌをあてがって、1年後にシュザンヌが誰の子かわからない子どもを産んでしまう。親父の子どもといううわさもあったようだが、マネはシュザンヌと同棲するようになり、7年後に入籍する。この子どもレオンを認知するのはかなり後。
ドガもなかなかやばい。女性には声もかけられないぐらいで生涯独身。晩年は密かに少女フィギアを作りためていて、死んでから関係者がドン引きだったそうだ。印象派展では毒舌を吐きまくってひっかきまわした。そのドガを最後まで世話したカサットは偉大。
モネは頼ってきた死んだ友人の妻アリスと子どもたちをそのまま受け入れたようだが、友人の死の前からそのアリスと関係があって、連れてきたピエールがモネの子だということは定説になっているらしい。
そうそう、ゴッホは自殺ではなくて他殺だったと知って、びっくり。これを妻に話したら知っていたので、これまたびっくり。避暑に来ていた金持のやんちゃ坊主にやられたらしいのだ。その本人が晩年になって告白している。
印象派前夜、印象派、新印象派、ポスト印象派まで画家一人一人にスポットライトを当てて語られていて、読み終わって充実感がある。
Posted by ブクログ
内容は圧巻だった。
美術について、より深く知りたいと思わされた。
絵画といえば敷居が高いイメージを抱きがちだが、この本の中にある画家の親近感あるエピソードに触れたら、美術をより身近に感じることができると思う。
Posted by ブクログ
美術館で点でしかみることのない絵画を描いた画家たちの生い立ちや性格、人生のどの時点で書かれた絵なのかが解説してあり、絵画鑑賞が倍以上楽しくなること間違いなし!
印象派がどのように生まれて、その後に繋がったかもよく分かる。
次はどの美術館に行こうかな♡
Posted by ブクログ
山田五郎さんのユーチューブ「オトナの教養講座」の印象派の画家達を紹介したものをまとめた1冊。
会話形式で絵の写真も多くわかりやすく楽しめました。
印象派の画家達それぞれの個性や生活ぶり絵にまつわるエピソード、それぞれの画家たちの関係性もよくわかりました。
Posted by ブクログ
分かりやすくて読みやすい。もともと作品を見てクールベ尖ってるなぁと思ってたけど、人となりを知ってさらにやばい人やと思った。私は好きやでクールベ。
印象に残ってるのは、クールベ、ドガ、ゴッホ。こんぐらい無茶苦茶で、歪みまくって、不器用な人たちが真っ直ぐに情熱を注ぐことで、歴史に残るような作品が出来上がるんやろうなぁ。今までそんなに印象に残ってなかったけど、作品の見方が変わったのは断然ドガ。いい意味でも悪い意味でも忘れられない人になった。ゴッホには幸せになって欲しかった。
Posted by ブクログ
山田五郎さんのYouTubeでいつも美術を学ばせていただいています。その中でも、印象派に焦点を搾っている本。魅力的な印象派の画家たちとその作品、歴史についてとてもわかりやすく解説していただいています。山田五郎さん最高です!
Posted by ブクログ
画家の生涯や行動、性格などもざっくりと割り切って解説されていて、わかりやすい。
印象派の入門書は2、3読んだことがあるが、そうなんや!と初めて知る事もいっぱい。
Posted by ブクログ
印象派とその前後の流れについて、主要な画家とその作品から学べる作品。
多分に著者の想像が入っているようなのでその分は差し引いて考える必要がある。
Posted by ブクログ
印象派の画家達の生い立ち 性格 人生
などと一緒に、どのように印象派が生まれたかなどが分かりやすく書いてあって、絵画を見ながら楽しく読み進められる。
Posted by ブクログ
印象派に影響を与えたターナーから、写実主義、印象派の中核をなす画家たち、新印象主義、ポスト印象派までの作家と作品をアシスタントに解説するカタチをとり、五郎さんの軽妙なトークで解説してくれています。
原田マハさんの小説ほどフィクションの余地は広くなく、学芸員の説明よりは自分の見解を入れ込める余白がある。一つの解釈としてこうだったんじゃないか?というかなり説得力のある説を使って作家自体やその作品を深掘りしていて、お話が印象に残る。
この本を読んで、美術館に行ったら、「おー、これかー。」と思えて、これまで以上に楽しめた。
美術史や、印象派の前後も含めた美術のことが知りたい方にはうってつけの一冊。
Posted by ブクログ
印象派や新印象派、ポスト印象派の画家たちの評伝。
YouTubeの内容をリライトしたものなので、聞いたことのある話が多いけれども、うまくまとまっていて、頭の整理には非常に良い。500ページもあって長いけれども、割とスラスラ読める。