あらすじ
『田中角栄研究』『宇宙からの帰還』『脳死』など、ジャーナリストとして膨大な著作を残した「知の巨人」は、なぜ晩年、あえて非科学的な領域に踏み込み、批判を浴びたのか……。
「語り得ない領域」に触れる詩や信仰の言葉を弄ぶことを禁じて、ファクトを積み重ねて突き進んでいた立花が、最晩年に小説や詩が醸す豊潤な世界に身を委ね、宗教と和解する必然を描きだした渾身のルポルタージュ。現代社会に問いを立て続け、書き、疾走した立花隆の原点と到達点を解き明かす。大江健三郎氏との未公開対談「創作と現実の間」を収録。
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Posted by ブクログ
立花隆の本は非常にたくさん読んできた。
田中角栄の研究、宇宙からの帰還、脳死、臨死体験などどれを読んでも、その博学と、その問題に取り組む圧倒的なエネルギーに感動させられてきた記憶がある。知の巨人との評価にも納得はしていたが、マスコミ学会など、様々な世界がその知の巨人を作り、本人もそれを否定せず、自分の行動に生かそうとしていたのかもしれない。
人はどこから来て、死んだらどこへ行くのか?正しく宗教がその主なテーマとしてきたこと、この立花氏の行動の中に凝縮されているのかもしれない。
もう一度臨死体験を読み返してみようと言う気になった。
Posted by ブクログ
知の巨人を偶像化するのではなく、きちんと批判的に観察していくスタンスはよい。それは貶めようというのではない。より人間らしい姿を明らかにするための。
Posted by ブクログ
本書は著者がまえがきでジャーナリズムの模範のように事実にこだわる平易で明晰な文章の単調さに辟易として同種のライターでありながら敬遠していたと告白する。
ただアカデミズムとジャーナリズムの懸け橋としての存在としての立花の存在を無視しえず、彼の自伝的作品を読む過程で自分と共通する多くの点を見出し、なぜ自らの言葉に対する考えと異なるような文章を書くようななってのか探っていく。
第1章~第2章生まれ育ちについて両親のキリスト教入信(父親の世俗的動機と母親の熱心な信仰)。読書の虫となり、科学的な興味と文学指向。
第3~4章反核運動と世界への視野の広がりと挫折。詩作と内向化。キリスト教とドストエフスキー、神秘哲学への興味
第5章文藝春秋入社、週間文春配属、ノンフィクションの目覚め。社会の観察と思惟のギャップ感から学士入学。ウィトゲンシュタインとの再会。
第6章哲学と神秘主義から認識可能な世界と認識を超えるものとの境界線をひく整理法を確立?認識を超えるものを否定するのではなく、言語化するためには論理的に認識できることが必要と判断。再びジャーナリズムの世界に戻る。田中角栄研究。
第7章ジャーナリズム+α、宇宙からの帰還
第8章調査報道、脳死
第9章相転移=同じ物質が環境に応じて態様が変わる現象の類推?臨死体験
第10章東大先端研客員教授、若い世代との交流
第11章知の巨人、エントロピーの法則の理解に対する批判、環境ホルモン入門への批判、進化のイメージ、インターネットとグローバルブレイン
第12章ニューサイエンス的思考、ガイア理論、サル学の現在、思考の技術エコロジー
第13章武満徹・音楽創造への旅
第14章大江健三郎との対話、右傾化への危機感、天皇と東大、野村秋介、兄弘道、キリスト教との邂逅、南原繁、護憲論、立原道造
あとがき立花隆版「論理哲学論考」まで405頁
巻末に大江と立花の対談、創作と現実の間
難解な点も多いが世俗的なエピソードもあり、立花隆の広い守備範囲を分析する1つのアプローチとして参考になる。