あらすじ
日本最大の料理コンクールで最終審査に残った6人。
テーマは「10年ぶりに会った友人との食事」。
わずか45分の闘いを制し、世界に羽ばたくのは誰だ!?
大人気TV番組『料理の鉄人』に携わった著者渾身の料理バトル!
邸 浩然 Tei Kozen…8大中華を修行した一匹狼
川縁伶奈 Rena Kawabuchi…フレンチ料理界のサラブレッド
里中 海 Kai Satonaka…不思議な魅力のポルトガル料理人
浅倉 薫 Kaoru Asakura…シャイだが天性の勘を持つイタリア料理人
和田拓実 Takumi Wada…ミシュラン二つ星レストランのスターシェフ
山科一人 Hitori Yamashina…脱サラして和食の板前を目指す最年長
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『文字から五感が刺激される臨場感が味わえる』
料理経験10年未満の若手シェフによる日本最高峰の料理コンテスト”YBG”。その決勝が舞台。6人のコンテスタントと各アシスタント、そして審査員たちの多視点で描かれる群像劇である。
コロコロと視点が入れ替わり同時並行的に物語が進んでいくため、テレビのカメラワークを見ているようなスピード感があり読者を楽しませるテンポが良い。まるで会場にいるようなライブ感が楽しめた。
それぞれのコンテスタントが背負う負けられない理由を丁寧に描き、意地と意地がぶつかり合い、料理にかける熱い想いが伝わってきた。ジャンルは違えど恩田陸さんの名作『蜜蜂と遠雷』を読んだときの感情を思い出した。
ラストは少しあっさりしていると感じたが、多くを語りすぎないのもまた良し。皆のその後が気になる余韻も楽しめる。専門的な内容でありながら料理の素人にも情景が思い浮かぶような表現力には感嘆した。和、中華、フレンチ、イタリアン、ポルトガルとジャンルの違う料理を扱うことにも著者の挑戦を感じる。「料理の鉄人」世代ではないが、それでも十分楽しめたので世代の方は胸熱だろう。
Posted by ブクログ
五十嵐貴久『コンクールシェフ!』講談社文庫。
あの伝説のテレビ番組『料理の鉄人』に五十嵐貴久が関わっていたとは全く知らなかった。当時はリアルタイムで毎回楽しみに番組を観ており、『料理の鉄人』の関連本やレシピ本などを購入して読んでいたのが懐かしい。
第10回『ヤング・ブラッド・グランプリ』の決勝に勝ち残った6人の若手シェフの闘いを描く、料理小説。
第10回を数える『ヤング・ブラッド・グランプリ』の決勝に勝ち残ったのは、フレンチの東京『ラ・フルール・ギンザ』から川縁令奈、中華の広島『宝殿楼』から邸浩然、ポルトガル料理の長崎『リーバン』から里中海、フレンチの東京『ヴィアン・ココット』から和田拓実、和食の京都『あじ京』から山科一人、イタリアンの宮城『イル・ガイン』から浅倉薫の6人だった。
主人公はイタリアンの料理人で、シャイなイメージの浅倉薫だ。浅倉薫はアシスタントを務める友人の野中直子と共に決勝に臨む。決勝のテーマは『十年ぶりに会う友人との夕食』であった。
6人のシェフの迫真の調理シーンが克明に描かれる。思わぬトラブルがあり、ドラマがありと読み所は満載だ。主人公の優勝は間違い無いのは最初から解っているのだが、まさかの感動の連続に驚かされた。
またまた蛇足で済みません。
実は『料理の鉄人』に出場したシェフの料理を食べたことがある。偶然、有名ホテルのフレンチレストランで総料理長を務めた元シェフが田舎にオープンした店でランチセットを食べたのだが、味は普通だった。田舎で店を開く以上は価格設定を抑えざるを得ないので、それなりの食材を使い、それなりの手間に抑えたのだろう。
テレビ番組の『料理の鉄人』はアメリカなど海外にコンテンツが輸出され、『アイアン・シェフ』というタイトルで放送されたようだ。後に日本に『アイアン・シェフ』が逆輸入されるが、『料理の鉄人』のような人気は無く、直ぐに打ち切りとなったと記憶している。
その日本版『アイアン・シェフ』に出場した野菜の魔術師と呼ばれるシェフの店でたまたま食事をしたことがあるが、見事な野菜料理には驚かされた。ソテーして僅かに塩で味付けしただけの野菜が何故か美味いのだ。この時はまだ『アイアン・シェフ』に出場する前で、妻の誕生日祝いということで、夕食にシェフのおまかせコースを予約したら、前菜が野菜料理がバイキング形式だった。驚くほどの美味さだったのが、地元の蕪を使ったソテーだった。勿論、ズッキーニの花とか、他の前菜も美味かったのだが、蕪のソテーだけは舌の記憶に残る強烈な味だった。
本体価格810円
★★★★★
Posted by ブクログ
国内最高の料理コンクールを舞台に、決勝に残った6人の料理人が優勝を目指してその腕を競う”キッチンバトル”。
小説として主人公が優勝するというのは織り込み済だが、他の5人もそれぞれ個性豊かに設定され、その技量では誰が優勝してもおかしくないと思わせる。
料理場面のリアルな描写に圧倒されたが、著者は人気テレビ番組『料理の鉄人』に携わっていたとなれば、さもありなんと。