あらすじ
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北海道から九州まで全国19ヵ所…
気鋭のノンフィクション作家が、自らの足で日本の“裏面史”を歩いた記録的一冊!
暗闇の中を旅するような風景の描写は、「残すか、忘れるのか」そんな問いを投げかける試みのように思える。これぞ八木澤ルポである。
――丸山ゴンザレス(ジャーナリスト)
列島を、歩く。大地と人間の物語に、分け入る。歴史の彼方に消えてしまった騒めきに、耳を澄ます。その時、細胞が踊り始める。
――奥野克巳(文化人類学者)
【内容】
私が好んで歩いてきたのは、アイヌの人々の歴史であったり、
東北の蝦夷、江戸時代の大飢饉の記憶、悪所と呼ばれた色街、
明治時代に海を渡った日本人の娼婦からゆきさん、
歴史的に弾圧されてきたキリシタンなど、どちらかというと、
由緒正しきものではなく、悲劇や血に彩られた哀しい歴史であった。
(はじめにより)
本書では、ノンフィクション作家であり、カメラマンでもある八木澤高明氏が、さまざまな理由で「日本史」において忘れられてしまった場所や遺構を訪れ、写真と文章によってその土地に眠る記憶を甦らせていきます。
北海道から九州まで、消えつつある風習や歴史を辿って旅した本作は、日本史好きはもちろん、ここ最近再び盛り上がりを見せている民俗学の視点でも楽しめる一冊です。
【目次】
●独自の呪術信仰“いざなぎ流”/拝み屋が暮らす集落(高知県香美市)
●パンデミックの悲劇/面谷村(福井県大野市)
●インドから帰ってきた女性/からゆきさんがいた村(山口県岩国市)
●蝦夷に流れ着いた和人たちの城/志海苔館(北海道函館市)
●かつて栄えた風待ちの港/大崎下島(広島県呉市)
●『遠野物語』に記された“デンデラ野”/姥捨山(岩手県遠野市)
●海外への出稼ぎ者が多かった土地/北米大陸に繋がっていた村(静岡県沼津市)
●本州にあったアイヌの集落/夏泊半島(青森県東津軽郡平内町)
●朝廷に屈しなかった蝦夷の英雄/人首丸の墓(岩手県奥州市)
●国家に背を向けた人々の“聖域”/無戸籍者たちの谷(埼玉県秩父市ほか)
●飢饉に襲われた弘前の地/菅江真澄が通った村(青森県つがる市)
●800年前から続く伝説/平家の落人集落と殺人事件(山口県周南市)
●潜伏キリシタンが建てた教会/中通島(長崎県南松浦郡新上五島町)
●飢饉で全滅した三つの村/秋山郷(長野県下水内郡栄村ほか)
●難破船と“波切騒動”/大王崎(三重県志摩市)
●本土決戦における重要拠点/館山湾(千葉県館山市ほか)
●古より遊女が集まる場所/青墓宿(岐阜県大垣市)
●江戸時代の大阪にあった墓地群/大阪七墓(大阪府大阪市)
●自由に立ち入れない場所/津島村(福島県双葉郡浪江町)
【著者プロフィール】
八木澤高明(やぎさわ・たかあき)
1972年神奈川県横浜市生まれ。ノンフィクション作家。写真週刊誌カメラマンを経てフリーランスとして執筆活動に入る。世間が目を向けない人間を対象に国内はもとより世界各地を取材し、『マオキッズ 毛沢東のこどもたちを巡る旅』で第19回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。著書に『黄金町マリア』(亜紀書房)『花電車芸人』『娼婦たちは見た』(角川新書)『日本殺人巡礼』『青線 売春の記憶を刻む旅』(集英社文庫)『裏横浜 グレーな世界とその痕跡』(ちくま新書)などがある。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
どこにでもありそうな日本の風景。そこに潜んだ実は悲しい歴史。
飢饉、キリシタン弾圧、パンデミックからフクシマまで、土地に込められた強い霊力を探訪する異色のルポルタージュ。
Posted by ブクログ
公的な資料に残りにくい歴史をもつ各地を巡る旅。
残りにくいだけならば、例えば「一世風靡した」土地は、もっと取り上げられてもよいのではなかろうか。
ダークツーリズムのような負の側面が強いのは、そのマイナスの魅力に著者が惹かれているように思える。もちろん、読むことを想定されているであろう、読者である我々も。
Posted by ブクログ
見慣れた景色だと思ったけど実は、忘れられた歴史があった。
昔から今に続く風習が残っている所もあるだろうが、誰も住んでおらずに土地だけがひっそりとあるところも。
これは消えつつある風習や歴史の記憶を辿った旅の記録である。
平家の落人伝説のあるところや、拝み屋がある集落。
からゆきさんがいた村。
遠野物語に記されたデンデラ野、姥捨山。
アイヌの集落、夏泊半島。
秩父にある無戸籍者たちの谷。
まだまだあるが、どちらかというと、由緒正しきものではなく、悲劇や血に彩られた哀しい歴史のある場所。
知らないところも多く、とても興味深く感じた。
特に山口県周南市にある郷集落。
ここは、平家の落人集落であり、2013年に殺人事件が起こったところである。
伝説の影響があるはずも…と思うが、実際に起こったこの事件は、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』で髙橋ユキさんが詳しく書いてある。
実際に歩いて、人と話して何を感じたのか…とても生々しく書いてあった事を思いだした。
これだけではなく、他のところも詳しい文献や本などもあるだろう。
上っ面の浅い事しか知らないが、ひとつひとつに悲惨な哀しい歴史があったことを少し感じられた。
Posted by ブクログ
ネットで見つけて気になって購入しました、読書には様々な楽しみ方があると思いますが、その一つに、自分では体験することができない、やろうとしても多くの時間と費用がかかるものを体験してくれたものを読むことにあります。この本はまさにそれを体現してくれているもので、日本の各地において廃墟となってしまった場所、現在栄えている「かつての姿」を伝えています。
人々が自由に移動できる権利が得られたのは、明治になってから、本当に動き出したのは戦後からでしょうか、従って、日本の各地の集落には長い歴史が刻まれています、それを実際に現地に行って写真付きでレポートしてくれているこの本は大変興味深かったです。
以下は気になったポイントです。
・墓石を見ていくと、多くが同じ相川姓であった、明治時代になって平民も姓を名乗るようになった際、相川姓を地主からもらった小作の人々が多かったからである(p27)
・既存の権威が失墜すると、人々はその一つ前の時代の権威にすがるというのは、どの時代でも見られることである(p32)
・飢饉の発生する原因は、東北地方という寒冷地における稲作も原因の一つであるが、江戸を中心に貨幣経済が確立され、日本国内における経済のグローバル化が進んだことにも原因がある、商業資本が発達し、商人が地主化することにより、多くの自作農が小作に転落し、農村が疲弊した(p45)
・キリシタンには2つのグループがあり、カトリック本来の教義が迫害を受けているうちに忘れられていき、仏教は神道と融合した独特の信仰を持つようになった「隱れキリシタン」、カトリックの教義を護り続け、明治になって禁教が解かれた時、その信仰を公にした者たちを「潜伏キリシタン」という(p84)
・畑にしても田んぼにしても、元々林や荒地だったのを人々が何世代にもわたって、木を伐し、石ころをどかして、作り上げた人工物である。人の手が入らないと、いつの間にか「柳、ススキ、セイタカアワダチソウ」に覆われて全くの荒地となってしまう(p124)
・江戸時代には、幕府の政策により天領以外の移民は禁止されていたが、浄土真宗の門徒たちは、親鸞の旧蹟を尋ねるといった名目で通行手形をもらい、故郷を離れた(p125)
2025年4月15日読破
2025年4月15日作成
Posted by ブクログ
歴史を振り返りその遺跡などを旅するのは新たな史実を発見することにもつながる。特に社会的に悪行行為、人権的な事件事故など、庶民を犠牲に革命した独裁者の史実では知ることができない。この書で知ったことは多くの地域で昔の女性へ人権は「モノ」扱いが多く悲惨な歴史があったことで、現代では秘話として実在していることだ。