あらすじ
五代十国時代、五王朝、十一人の皇帝に仕え、二十年余りも宰相をつとめた馮道。破廉恥・無節操と非難されたが、それは「事はまさに実を務むべし」「国に忠たり」を体現した生き方だった。その生の軌跡を鮮やかに描きあげる。
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Posted by ブクログ
唐が滅んだ後の五代という乱世において、その篤実さによって目まぐるしく入れ替わる皇帝たちの信頼を勝ち得、宰相職を歴任し続けるという未曽有の功績を残した馮道の生涯。王朝とはいっても地方軍閥に外ならず、その興亡による闘争が収まらない状況下で、馮道は高位の政治家として「国に忠」であること、その国とは王朝とその皇帝一族ではなくそこに生きる民衆のことであり、そんな人々を保護しようとする姿勢が一貫していたということがよくわかる評伝である。
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唐末から五代の乱世の時代。黄巣の乱や、後粱ー後唐ー後晋ー後漢ー後周そして宋による統一といった大まかな流れは知っていたものの、あまり良く知らない時代。
そんな戦乱の時代に、5つの王朝(後唐、後晋、遼、後漢、後周)八姓(後唐の荘宗・明宗・末帝がおのおの一姓。後晋の石氏。遼の耶律氏。後漢の劉氏。後周の太祖・世祖がおのおの一姓)、11人の天子に高位高官として歴事すること30年、宰相を20余年務めた人物、それが本書の主人公、馮道。
一人の天子に対して忠義に仕えること、それが「忠」であるとする君臣名分論者からは、馮道の生き方は批判されてきた。しかし、馮道は「国に忠なり」とは言ったが、「君に忠なり」とは言わなかった。あくまで一般民衆のためを考え、良く政治を行ったのだと、著者の馮道に対する評価は高い。
本書は、評伝ではあるが、彼の生きた時代の社会背景についても丁寧に記述がされていて、この時代を理解するのに大変参考になる。
例えば、安史の乱による影響としての塩の専売法や両税法の導入、唐中央からの自立勢力となった河北三鎮(魏博、成徳、盧龍)の動向、五代時代の首都となる開封(汴州)や晋陽(太原)の経済力、燕雲十六州の契丹への割譲、その後の契丹の開封入城と後晋の滅亡。こういったところを理解することができて勉強になった。