あらすじ
都の路上でバクチにカツアゲ、大乱闘!
殺人事件が起きても、お上はスルー。
500年前の日本社会は、いまとまったく違っていた!
しかし一方では……、
ホームパーティーの費用はワリカン。
新興宗教の教祖さまは有料でお悩み解決。
人間、500年経っても、あまり変わっていなかった!
ホームレスから豪商への大出世もあるような、ダイナミックな社会に生きる人々は、何を考え、どんな暮らしをしていたのか。
室町から戦国時代までの中世社会を専門に研究している著者が、身近な題材を手がかりに、やさしい語り口で解説。
また、足利義満の意外な素顔、家康が隠しておきたかったルーツ、伊達政宗「ずんだ餅伝説」の虚実など、読めばビックリ、目からウロコの日本史エッセイ。
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Posted by ブクログ
室町将軍も、戦国武将も、戦うときはタイマン勝負で殴り合ったわけではなく、多くの配下を引き連れ、軍勢を作り、軍勢対軍勢で戦った。
その軍勢を支える兵站部隊もあり、その兵站とて作る人、運ぶ人がいたのは、現代と同じなのだろう。
だとすれば、教科書には載らず、小説の登場人物として取り上げられなくとも、泣き笑い食べ排泄し、恋し愛され、嫌われ憎んだ人たちがいたはずだ。
彼らの影響力は、室町将軍や管領や武将のように、多くの人や多くの場所まで及ばす、身の回りの人たちと影響し合って生きていただろう。
いわゆるどこにでもいる平凡な人たち。
でも、彼らなくして将軍の栄華も武将の活躍もない。しかし、彼らがどんな生活をして、どうして愛を育み、どうやって人生を謳歌したのかは教科書からはわからない。
自分と同じように、泣いて笑って調子にのって挫折した人たちの、温もりや熱量が伝わってこない。
でも、この本を開くと知りたかった人たちがいる。
裁判に敗れてヤケになって他人の畑の稲を勝手に刈り取ってしまう武士。相撲に熱中して殴り合いの喧嘩をする観衆。自分の意見を息子に軽んじられて家出する母親。悪意ある二次創作にさらされる美女。弟子や同業者から恩を仇で返され怒る芸術の大家。お国自慢をしたいあまりにほかの国をサゲまくる執筆者。
面白い。
暴力(物理)が物を言う時代でありながら、屁理屈理屈言い放ち、大暴れをする平凡な人たちの暮らしがこんなに面白いとは!
もちろん名のある人たちも、この本には出てくるけれど、英雄や偉人というよりこの時代に「生きた人」として見れて、人肌の温度を感じることができた。
流れの行く先を指し示した人は、歴史の偉人だけれども、その流れは凡人たちの集合体で出来ている。彼らの生活をもっともっと知りたい!
室町時代というアナーキーな時代を、もっと知りたくなった。
Posted by ブクログ
歴史ネタ本と言う位置付けでも、日本を外側から眺め直してみる本としても面白かった。
———
「内」でも「外」でもない縁側の空間はとても便利なものだった。プライバシーが脆弱なように見えて、そこには、むしろプライバシーが巧妙に二段階設定されている。
Posted by ブクログ
室町時代の研究者である筆者が、多くの文献から他国や現代の事象に繋がるであろう内容を面白おかしく4ページずつまとめている。
筆者は大学教員でありながら(失礼ながら)、ドラマや漫画などのサブカルチャーにも詳しく、また研究者から高野秀行氏まで多くの人達と交流し、その些細なやり取りがつまびらかに載せられている。
宗教と習俗について書かれている2~4章は、全く知らないことだらけで興味深く読めた。ワリカンや不都合な真実や、将軍の影武者など。筆者の本は二冊目だが、もっと手に取ってみたい。
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週刊文春に連載していた記事を本にしたもの。連載が面白かったので、あらためて読む。
大河ドラマに取り上げられないスキマ時代、テレビは一休さんくらいしか知らないけど、それだけに面白さ一層。
Posted by ブクログ
室町時代の日本の荒さが伝わる歴史コラム集。平明な文章で分かりやすく伝えてくれる。面白いのは現在の外国の治安の悪いと所と一致している箇所が多い事。そう考えると穏やかとされる日本人像も先祖の方々が修正していったことが伺える。
それにしても強かというか、しぶといというか人間の本質が現れやすい時代だったのだろう。
Posted by ブクログ
荒ぶる混沌な室町時代について語る、日本史エッセイ。
・はじめに―室町と現代―
第一章 中世は本日も荒れ模様 第二章 ある中世人の肖像
第三章 ルーツはここにあり? 第四章 室町は遠くなりにけり
第五章 歴史家の頭の中
参考文献有り。
以前読んだ「室町は今日もハードボイルド」が面白かったので、
最新作を読書。「週刊文春」連載だから4~5ページの短文で、
室町時代のあれやこれやをさっくりと語る、エッセイです。
裁判よりも実力行使、琵琶湖には海賊、荒ぶる宗教と、
アナーキー。くせ者揃いの足利将軍に宗教家、庶民に農民、
公家に、果ては乞食までも。鎌倉時代末期から戦国時代へ
向かう混沌の中で、当時の人々が存在感を示しています。
あちこちで戦乱はあるし、まだ秩序が整備されないけれども、
時代は少しずつ変化し、歩みを進めていく。
そんな様子もエピソードに盛り込まれています。
また、現代に結び付く、五島列島の感染症対策や、
災害の記録や記憶を伝える伝承石碑の話は興味深いものでした。
そして現代にも繋がるワリカンの話も面白い。
九相図の話は「呪術廻戦」がなんだか頭を過ったし。
徳川家のご先祖様については、家康が隠したい黒歴史だった
のかと、興味津々。足利氏の家臣のまた家臣とはね。
その話を含め、偏諱などにより、ぐだぐだな室町幕府でも長らく
権威を保って存続されていたと考えると、なんか不思議。
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歴史の本当のところは、素人にはなかなかわからないが、こういう本を読むと目から鱗体験ができて面白い。
特に個人的に興味がある室町時代なので尚更。
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室町時代をテーマにしたエッセイ。著者は立教•早稲田で学んだ明治大学教授。週刊文春の連載から58本を再編集したもの。内容は玉石混交だけど、気楽に読めて楽しい。
…ちなみに現役研究者の著者も言っている事だが、日本人の暮らしはこの30年くらいで劇的に変わった。室町時代から継続してきた文物も、どんどん失われている。
例えば、小学6年生の歴史学習では室町文化の学習で「書院造」の写真を示して自宅との類似性に気付かせる活動がある。でも2024年の今、自宅に畳も障子もない家に住んでいる児童が半数以上を占めるようになった。"畳や障子は祖父母の家や和風旅館にある昔のもの"と認識する児童の方が多い。"書院造は自分たちに身近な室町由来のもの"という感覚を共有できない人の方が多数派になったのだ。時代だなぁ…。
Posted by ブクログ
2024年14作品目
室町時代についてあまり知らない
教科書に載っている事柄を受験のために覚えただけで、自分から深く知るつもりもなかった
この本を読んだのは書店で帯が目に入ったから
読んでみると自分の知らないことばかりだし、室町時代に確立した文化が今の現代日本を形成しているという事実自体が興味深く面白かった
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 中世は今日も荒れ模様
第2章 ある中世人の肖像
第3章 ルーツはここにあり?
第4章 室町は遠くになりにけり
第5章 歴史家の頭の中
<内容>
室町時代史の普及活動に貢献している清水先生。今回は「週刊文春」連載の記事から歴史エッセイ。室町時代のコアなお話(ちゃんと古文書などで証明済み)を現代と結びつけて軽妙にまとめていく。そこから教科書などでは見えない、室町時代人の感覚や考え方などが見えてくる。こういう話は大好物です。
Posted by ブクログ
500年前の日本社会は、いまとまったく違っていた!しかし一方では・・・、ホームパーティーの費用はワリカン。新興宗教の教祖さまは有料でお悩み解決。人間、500年経っても、あまり変わっていなかった!ホームレスから豪商への大出世もあるような、ダイナミックな社会に生きる人々は、何を考え、どんな暮らしをしていたのか。
表紙とタイトル買いでした。室町時代がテーマなんだけど、江戸などに比べるとマイナーで私も学生ぶりのジャンル。でも全然硬くなくて全体的に読みやすい。結構今につながるシステムそのものがあったりして面白い。あとこれは学者さんあるあるなのかもしれないけど、事実と異なることをTV向けにねじまげて発言するように言ってくる奴っているんだなーー。そんなくだらないことして恥ずかしくないんですかね。メディアは反省してほしい。
Posted by ブクログ
文春の連載コラムのまとめか。
一つ一つのエピソードは短くて分かりやすい。のだが、それだけやなあ。
特段、室町がどれだけワンダーランドだったかってのが見えてくる内容でない。実際、何も残ってない。
歴史エピソードを、昔とは通説が違って来てるところもあるよって視点で軽く読めばいい本だと思う。
日本文化、伝統ってのが実は室町以降の近代までに出来上がって来てて、このところはむしろそれが失われているので、「近代までが室町時代」でそれを記録しないと的な一文には惹かれたが、そこはあまり効いてない。
最後の方にあった、歴史学者の分類、情熱と、史料と、研究の文脈にどう関わるかで、優れた歴史学者、歴史ファン、業界通、職人、学者バカ、バカ学者、エセ学者と呼称するところが実は一番面白かったかも。
最近のSNSで見るセンセイ方の顔を思い浮かべながら。別に歴史学者だけではないような気がするし、その辺で一冊書いていただいてもいいように思った。