あらすじ
互いに愛人がいながら離婚にふみきれない中年夫婦の、一見おだやかな日常を古典への愛をとりまぜて描いた傑作。小出楢重の挿絵八十余点を完全収載。
〈解説〉千葉俊二〈註解〉明里千章
愛することは出来ない
までも慰(なぐさ)み物には
しなかつたつもりだ
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
夫婦仲が冷え切っている斯波要と美佐子を主人公にした小説。ベタベタな恋愛小説や、あるいは逆につねにケンカするなど険悪すぎる恋愛関係を描いた小説はよくあるが、この「離婚しそうでしない宙ブラリンな状態」を描いた作品は個人的に記憶になく、なかなか新鮮に感じた。なにせ、物語の冒頭から夫婦仲が冷め切っており離婚に向かっている様子が描かれているにもかかわらず、終盤になってもなかなか具体的に進展せず、けっきょく作中では離婚せずに終わってしまうのである。ぶじに離婚が成立して大団円を迎えると思っていたため、そうはならずに虚を衝かれたような思いがしたが、しかしあるいはコレもまた「恋愛小説」なのかもしれない。そして、なかなか進まない離婚のいっぽうで、繰り返し登場して印象的であるのが人形浄瑠璃。むしろ人形浄瑠璃のほうがメインであるとすらいえる。「物言わぬ」人形、「役割を演じている」人形など、いろいろな示唆的な意図も多分に含まれているとは思うが、しかし文学関係者ならともかく、ただのいち読者がそのように「文学的」に読むのも野暮であろう。全体的に物語としては進展に乏しいともいえるのであるが、だからといって本作が退屈かといえばさにあらず。むしろこのようなフワフワした不思議な状態を的確に描いているからこそ、物語はたんなる離婚話よりも何倍も厚みをもって心に響いてくるし、このような作品に仕立て上げられることこそが、のちにノーベル文学賞候補にもなった谷崎の大作家たる所以である。人生は小説ではない。結婚しているから仲が良い、離婚するからいまにも殴り合いのケンカを始めそう、そのようなことはぜったいにない。こういう、離婚するのかしないのかわからない状態のほうが、かえって「人間」らしいのである。
Posted by ブクログ
小出楢重展でつい購入。100年くらい前の本だし、読むのに時間がかかりそうと思ったけど、スラスラ読めた。セックスレスの夫婦が別れる前の物語で、全然古さを感じない。